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内田光子のモーツァルト/ピアノ協奏曲第5番

朝の通勤時の必須アイテム(戻る


このところ通勤時のお気に入りがこれ。 ギャラントスタイルというのでしょうね、瑞々しい楽想が心地よく響いてきて、気持ちが軽くなってくる音楽です。 内田光子さんの演奏は、ここでも決して悦楽に富んでキラキラ輝くというものではありませんけど、かえって落着きが感じられる演奏が、この曲を一回り大きく、そしてしっかりとしたものとして聴かせてくれます。 とにかくサービス精神に富んだこの音楽は、けだるい朝の通勤時の必須アイテムになっています。

ピアノ協奏曲第5番は、モーツァルト17歳にしてオリジナルのピアノ協奏曲として最初に書いた作品ですね。 第1〜4番の協奏曲は、1767年、11歳の時に他の作曲家のピアノソナタを編曲したもので、ウィーンへの演奏旅行のためのレパートリーとするために、父親のレオポルドが書かせたようです。 ご存知のようにモーツァルトには27曲のピアノ協奏曲がありますけど、17歳にして初めてオリジナルのピアノ協奏曲を書いたというのは、早熟の天才モーツァルトにしては遅いスタートかもしれませんね。 それだけザルツブルグでの生活には縁のなかったジャンルだったのでしょうけれど。

さてこの第5番、冒頭からオーケストラが Allegro でかっ飛ばすのが壮快です。 まるでオペラの序曲のようなオーケストラ部分が終わると、主役のピアノが待ってましたとばかり、勢いよく弾き始めて爽快感満点。 そしてピアノとオーケストラの旋律を追いかけて聴かせるあたり、モーツァルトのサービス精神が光ってますね。 気持ちが軽やかになってゆきます。 内田さんのピアノ、少々生真面目すぎる感じもしないではありませんけど、かえってここでは曲に一種の落着きのようなものというか、冷静な目で曲を見させるような、大人の感覚が素適です。

第2楽章、滋味のある響きでしっとりと歌わせたあと、終楽章はまたオーケストラが大きく跳ねる旋律で(言葉は悪いですけど)ぶちかまし。 聴き手をぐぃっと曲に惹き込ませますが、テイト指揮のイギリス室内管に勢いがありますね。 内田さんのピアノはここではかなり情熱的に弾いているのではないでしょうか。 オケとピアノの掛け合いなど、ここでもモーツァルトのサービス精神が強く感じられる楽章ですね。 あぁ聴いて楽しいなぁ、と素直に思える旋律とリズム。 カデンツァは内田さんのですけど、これがまた技巧的にかつ喜遊曲っぽく纏めてて素敵。 そして音楽が勢い込んで、なんとなくぶっきらぼうに終わるのもモーツァルトらしいところでしょう。

週の始まり、そして週の終わりの朝の通勤時のテーマ曲のような感じで聴いています。 これはいいですよ。