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ナヌートの運命・未完成

ナヌートさんが正当に評価されることを願ってやまない(戻る


アントン・ナヌートの「運命/未完成」のCDを買ったが本物か? なんていう問合せがあったので、久しぶりにディアゴスティーニ(当時は同朋舎出版)から出ていた同曲のCDをそれぞれ探し出して、録音時間を通知してあげた。 せっかく取り出してきたCDなので、通勤(痛勤とも書く)のお供に聴くことにした。

まずは「運命」。 スッキリとした解釈の演奏だけれども、そこいらの若者が勢いだけで演っているのとは違う風格をも感じさせるような演奏である。 さすがに優れたベートーヴェンの演奏によって旧ユーゴスラヴィア時代に賞をもらっているだけのことはあるなぁ・・・と納得させるような演奏でひとまず安心。

つぎにシューベルトの「未完成」を聴いて吃驚した。 ここでのナヌートさん、ベートーヴェンで聴かせたように常に冷静沈着にして曲に対峙する姿勢ではないようにも感じた。 時折気色ばんだように曲を展開させてゆくように思えた。 しかしよくよく聴きこむとフレーズの切り方など割合と短くスパスパと切っていて媚びるようなところのない演奏である。 ただホルンなどを開放的に鳴らせているせいか、感覚的に音楽をぐいぐいと進めているように感じさせる。 特に第2楽章など、流麗さに恰幅の良さが合わさってとても素晴らしい未完成の演奏ではないだろうか。 けっして見栄を張ることなく、また小細工を駆使することもなく聞き手をシューベルトの世界にぐいぐいとのめりこませていく演奏だ。 しかしベートーヴェンを聞いたあとではこれ本当にナヌートさんの演奏? なーんて思ってしまうのがちょっとツライところである。 ナヌートさんが正当に評価されることを願ってやまない。

ディアゴスティーニ(当時は同朋舎出版)The Classic Collection No.4(運命)、No7(未完成)