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トムシック&ナヌートのブラームス/ピアノ協奏曲 |
コンビ出色の名演奏(戻る)
このところCDをまったく聴かないわけではないのですけど、落ち着いて音楽を聴こうと思うときに手が伸びるのはLPばかりです。 いきおい購入するCDも激減、手持ちのCDを繰返し聴いているのが現状です。 しかもこのところCDは、いったんパソコンに取り込み、WindowsMediaの形式(WMAファイル)にしてCD-RWに焼いてから、それをポータブルCDプレーヤで聴くのが最近の方法です。 これだと1枚のCD-RWに沢山の曲が収録されるので、媒体交換の手間が省けます。 またプレーヤの電池の持ちも長くなります。 CDをそのままかけるよりも電池の持ちが長くなるのはとても魅力的です。 とにかくCDパッケージにはLPジャケットのような感情を持てませんし、少々音質が落ちても音楽を手軽に聴ければ充分でしょう・・・巷でiPODが流行っているのも分かるような感じがしています。
さて前置きが長くなりました。 このような状況ですから、CDに収録された音楽を聴く範囲がぐっと狭まっていました(パソコンに録音してCD-RWに焼くのは手間ですし)。
だからこの廉価CDコーナーに登場させたい録音もなかなか出てこなかったのですけど、でもようやくヒット、いや大当たりが出ました。 最近こればかり聴いているって感じです。 それは・・・、ダブラフカ・トムシックのピアノとアントン・ナヌート指揮リュブリャナ放送交響楽団によるブラームスのピアノ協奏曲。
またバッタもんかい、そんな風に思われてしまいますけど、いいと思ったものはいいんですから仕方ありません。 ピアノ協奏曲の第1番と第2番ともに基本的に同じ感じの演奏で、息をぴったりと合せながら高揚してゆく音楽、いずれもこのコンビ出色の名演奏だと思います。ところでブラームスのピアノ協奏曲。
2曲とも大曲でかつ難曲なのは皆さんは既にご存知のことでしょう。 あえてその理由を書かせてもらうなら、まず演奏時間が長いことと、ピアノとオケが常に一体になることが要求されていることではないでしょうか。
長時間であるうえに、ピアニストが主要旋律をヴィルトージョ的に弾く見せ場が少ないのに、逆にオケと渡り合ってエネルギッシュに弾かないといけない。 ピアニストとってはあまり美味しい作品ではないかもしれませんね。 名演といわれるものの多くは男性ピアニストが演奏しているように思います。 それだけパワーが必要な曲みたいです。で、このトムシックとナヌートの演奏。 この演奏に出会うまで、正直言ってブラームスのピアノ協奏曲なんて退屈でたまらなかったんです。 長くて、暗くて、重い・・・で、この演奏に出会って、ボロボロと目からウロコが落ちるようだったのを思い出します。 今こうして何度聴き返してみても実に素晴らしい。
第1番の第1楽章の凄まじいまでの高揚感、第2楽章での重厚なオケと充実感あるピアノ、第3楽章のスケールの大きさ。
第2番でも、第1楽章のホルンから始まる雄大な風景、第2楽章でのピアノとオケが張り合って両者が畳掛けるような緊迫感、第3楽章の萎びた田舎の風情を感じさせる独奏チェロ、第4楽章の凛とした清潔なピアノの響き。
いずれも一発録りしたような演奏には飽きることがありません。トムシックさんのピアノは煌びやかな響きですけどパワーもあってよくピアノを鳴らしています。 いつもトムシックさんのイメージだと、こじんまりと綺麗に纏めるような感じにも思えますけど、この演奏では丁丁発止とオケと張り合って実に力強くもあります。
またオケも少々荒っぽさを感じるところもありますけど、やけにナヌートさんがグイグイと引っ張ってゆく場面が多く、中低弦をゴウゴウと唸らせて駆け上がってゆき気合充分。
そしてトムシックさんとの息がよく合っているのは同じスロヴェニア出身の信頼関係でしょうか。 重厚さだけでなく、雄大さや清々しさを感じさせるブラームスの2曲のピアノ協奏曲。 これら大きな曲の中にスジを一本ピンと通したようにも思えます。 トムシック&ナヌートのコンビによる出色の名演奏だと思います。なお、このCDはディアゴスティーニのThe Classic Collection(通称:バッタもんCD付き雑誌)にあり、ピアノ協奏曲第1番は第22巻、第2番は第60巻です。 古本屋や中古CD店で超安価なのを探すか、ディアゴスティーニには在庫としてまだ残っているようです(在庫取り寄せ可能商品)。 定価を出しても惜しくない演奏ではないでしょうか。
蛇足ですけど、第1番はあるサイトで録音が悪すぎると書かれていましたけど、そんなに気にするほどではありません。 多少キレはよくありませんけど、そもそもPILZや初期NAXOSもそうですけど、大規模なオーケストラ録音ではこんなものでしょう。 PILZにはモゴモゴしたもっと悪い録音もあります。 とにかく、彼らの演奏からいやというほどの気迫が伝わってくる録音・演奏を味わうことは充分に可能です。