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HOVHANESS TREASURES |
アラン・ホヴァネスの私的な選集(戻る)
2000年に亡くなったアルメニア系アメリカ人作曲家アラン・ホヴァネス(1911-2000)は生涯に交響曲を60曲ほど書き、400曲を超える曲を作った多作の人。 現代音楽の部類に属するが、実験的な要素はなく、懐かしい響きがすべてを支配している。 総てを聴いたことはないが、お気に入りの作曲家である。 一般にはザトウクジラの鳴き声をフューチャーした「And God Created Great Whales (神は偉大なクジラを創りたもうた)」の作曲家として有名だろうか。
ホヴァネスは、陳腐で金太郎飴のようにどこをとっても同じ音楽だ、などと言われたりもするが、この懐かしさは何だろう。 1950-60年代に東洋を旅行し、日本にも興味を持ったことが大きいのだろうか(交響曲第2番「Mysterious Mountain」は富士山がモチーフらしい)。 また、何となくだが、バロックよりも古いモノフォニー音楽にも通じるものがあるようにもそう感じたりする。 とにかく神秘的な要素を持った音楽で、聴いていると自然とその世界に引き込まれてしまう。
さてこのCDのこと。 英文のライナーには、ホヴァネスが私的に選んだお気に入りだそうである(Alan Hovaness' personal favorites)。 指揮者として一時期精力的に交響曲を録音していた Gerard Schwarz 、夫人でソプラノ歌手でもある Fujiwara Hinako、そしてホヴァネス自身が指揮する演奏も入っていて、交響曲、声楽、室内楽が含まれたオムニバス形式のアルバムである。 ただし Premiere recordings と書いてあるので、過去の寄せ集めではないようだ。
このCDでの個人的なお気に入りは、フルート、ハープとシロフォンによる「Starry Night, opus 384」という小品(5:48)。 いつもは交響曲を聴くことが多いのだが、とてもチャーミングな作品に、いつもにも増して心休まるような曲に身を任せてしまう。
なお交響曲は、Gerard Schwarz指揮ノースウェスト・シンフォニアによる演奏で2曲入っている。 第31番,opus 294 と 第49番,opus 356 CHRISMAS SYMPHONY 。 どちらも弦楽のみの曲である。 やはりどちらを聴いても同じような曲なのだが、前者のほうが明るくアグレッシブな感じがする。 これはフーガが入っているからだろうか(フーガを聞くと熱くなってしまうのは人間の習性なのかな)。 とにかく、静かな部分では朗々と歌うメロディライン、それに対するピチカートで延々弾きつづけ、これらが交互に現れるのに見事にハマってしまう。 心地良い。 ヒーリング・ミュージック、簡単に言えばとそう言えなくもないのだけれど。
さて夫人である Fujiwara Hinako の歌の入った曲が2曲(指揮はホヴァネス自身)。 彼女はコロラトゥーラと書いてあるのだが、個人的にはちょっと堅い声質が(声域が狭いのかな)あまり好きな声質けれど、小品「O, Joy at the Dawn of Spring」、組曲「Celestial Canticle, opus 305, No.2」、いずれもフルート(Starry Night と同じく Scott Goff の演奏)が柔らかくて素敵な音色で絡むのが救いである。
初めてホヴァネスを聴いたとき、これが現代アメリカ音楽とは思えなかった。 絶対にイギリス音楽だと思って聴いていた。 このCDでもそのような感じのする曲が収録されている。 イギリス音楽好きの方には気に入ってもらえるのではないか。 手軽にホヴァネスを体験するのに手ごろなCDだと思う。
バークシャ・アウトレット#79:CRYSTAL RECORDS CD811 (61788), $6.99