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Merzのシューマン交響曲全集 |
若さあふれるシューマンの交響曲 (戻る)
バークシャで3枚組 $5.97 で出ていたので捕獲しました。
値段に釣られて予備知識もなく捕獲したシューマンの交響曲全集ですが、もともとシューマンの交響曲は好物なので、このようについつい手が出てしまうのですが、期待もせずに購入したこのCDは大当たりでした。ライナーによると、ここで指揮をしている Florian Merz は、1967年デュッセルドルフ生まれの新鋭。 この全集の録音は1991-2年とあり当時まだ 24,5才です。 トランペット奏者として、1984-8年にはウィーンフィルのアドルフ・ホラー教授に師事し、オーストリア放送交響楽団にも参加していた(若干20才ですね)ようですが、1987-91年まで Ljubomir Romansky, Neil Varon, Hans Wallat に指揮を習い、指揮者に転向したとのこと。
またオーケストラは、デュッセルドルフ在住の音楽大学の学生や卒業生が主体になって結成された古楽器(historical instruments)のオーケストラとのこと。 1991年から Florian Merz が芸術監督なのだそうです。
なおライナーにはメンバー表が付いていて、定常的な活動をやっているようです。 編成は2管で、オリジナルの弦楽器メンバの構成は 8/6/5/5/4 人であると書いています(ただし録音メンバ表には 11/8/9/9/7 人がクレジットされています)。さて演奏。 非常にメリハリが効いたもので、若々しい青年の情熱(青臭さ?)が溢れるような演奏です。
この全集を聴きとおした感想のポイントは、なんと言ってもティムパニの強打でしょう。
要所要所をこのティムパニが見事に締め上げている、と言っても過言ではありません。 また全体的に弦楽器の響きが薄いためか、 金管楽器もやけに目立っています。 とくにホルンとトロンボーン、チューバの強奏(クレッシェンドします)など、古楽器オケとしての曲の解釈うんぬんを考えるよりも前に、まずこれらの演奏の迫力に耳を奪われてしまいます。もっとも先入観なく、解説も読まずにこのCDを聴き始めたのですが、最初は(そして今でも)これが古楽器の演奏とは思いもしません。 ことに一番最初に聴いた第1番の交響曲。 冒頭のトランペットのファンファーレは通常の音程です。 最近はマーラー版を含め、シューマンが当初考えていたであろう3度低い録音なのかなと思ったのですが、この演奏では採用していないようです。
しかし演奏を聴く限り、この1番の冒頭から淀みなく曲が進み、ちょっとやりすぎでは・・・なんて思うものの、どんどんと耳が奪われてしまいます。 全体的に速いテンポの演奏で、場面転換もまた実に鮮やかに決めてゆきます。
しかしオケが単に息咳きって走っているのなら、アキもきて、おいおい・・・って思うのですが、この指揮者とオケ、なかなかの手腕の持ち主だな... と期待が膨らんでゆきますし、その期待が裏切られることなく、最後まで聴かせてくれます。どの曲でもダレたような演奏はなく、すべて同じ色調で統一されているのも(好き嫌いはあるでしょうが、これはこれでとても)見事だと思います。 古楽器としての演奏方法(ノンビブラート)とか、使用する版の問題もあるのでしょうが、そんなことはここでは気になりませんね。 もっとも僕のような知識では、版のうんぬんを論じること自体が無謀と言うべきなですけれど。 とにかくこの4つの交響曲を通して聴くと、楽器や版の差よりも、解釈の問題ということは明白でしょう。
ヴィルトーゾ的な演奏を好まれる人向きではないと思いますが(弦楽器奏者がもう少し多くいて深みのある音色だったらなぁ、とこの僕ですら思うこともありましたが)、シューマンの交響曲が好きな人にとっては、持っていたら面白いCDだと思います。
最後に、版のことを書くのは無謀だといいながらついでに書くと、第4番には Dusseldorfer Fassung と書いてあるのが気になります。 しかし、これは何のことはなく、通常よく演奏される 1853年にデュッセルドルフで再演されたもののようですね。 聴いていて他の指揮者の演奏とも違和感がありません。 表記からしても1841年のライプチヒでの初演版とは違いますし。
レコード番号 | 作曲家 | 曲名 | ソリスト | 指揮者 | オーケストラ | 備考 |
eds6088 | シューマン | 交響曲第1番 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD1 | |
eds6088 | シューマン | 交響曲第2番 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD1 | |
eds6088 | シューマン | 交響曲第3番 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD2 | |
eds6088 | シューマン | Overture zur Braut von Messiba,op.100 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD2 | |
eds6088 | シューマン | Overture zu Julius Caser fur groses Orchestra,op.128 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD2 | |
eds6088 | シューマン | 交響曲第4番 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD3 | |
eds6088 | シューマン | Festouverture mit Gesang uber das Rheinweinlied fur Orchester und Chor ,op.123 | Csikka Zentai(S) 他 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD3:世界初録音 |
eds6088 | シューマン | マンフレッド序曲 | Frorian Merz | Klassische Philharmonie Dusseldorf | CD3 |
更新日 '00/04/02 改訂 04/08、'06/05/04
名前 安田裕隆