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ならチェンバーアンサンブル 第55回定期演奏会 |
ドイツ3大B、上質なアンサンブル(戻る)
ならチェンバーアンサンブル 第55回定期演奏会
2000年9月22日 14:00 なら100年会館中ホール
バッハ:トリオ・ソナタ ト長調 BWV.1039
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番 ヘ長調 op.18-1
ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 op.34(vn) 五十嵐由紀子、池川章子
(va) 植田延江
(vc) 斎藤建寛
(p) 大橋邦康
奈良市が主催する室内楽団のならチェンバーの今回の定期演奏会は「ドイツ3大B」と題しての室内楽であった。 そのどれもが上質なアンサンブルを堪能できたが、ことにチェロの音は作曲家によって響きを違えるなど上質な演奏会であった。
今回もまた直前まで生憎の雨模様。 それでも開演前にはあがって、前回よりも多く入っていたのではないだろうか、ギャラリー席を除いて約7割の入りだったろうか。 今回気付いたのだが、高齢者や障害者は入場無料らしい。 道理で上品そうなお年寄りが多いわけである。 しかし普通に当日券を入手しても1,000円なのだから、本当に素晴らしいことである。
さて演奏会の最初はバッハのトリオ・ソナタ。 非常に穏やかで温かい感じのバッハであった。 チェロが柔らかいヴィオラ・ダ・ガンバのような音色であり、ピアノも裏方に徹したような深く甘い響きであった。 ヴァイオリンも声高にならずリードし家庭人バッハといった趣である。 個人的にストイックなバッハを好むのが多分にカール・リヒターの影響であろうが、このようなゆったとりとしたバッハも悪くない。
2曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第1番。 チェロがうってかわって芯のある力強い響きになったのに吃驚した。 第1ヴァイオリンも輝きを増し、 終始この二人が曲を引っ張っていたようであった。 第2ヴァイオリンとヴィオラは控えめに曲を支えており、繊細で緊密なアンサンブルとなっていたように思う。 上品な輝きのあるベートーヴェンになっていたように思う。
休憩を挟んでのブラームスのピアノ五重奏曲は熱の入った演奏となった。 ピアノの粒立ちはバッハよりもはっきりと明るくなったが滋味のこもった響き、チェロは深く甘い響きになった。 これにヴァイオリンが華やかさのなかにも誠実さのこもった響きで、演奏は冒頭から熱気あふれるものであった。 終始底流をながれる熱気はとぎれることなく、ケレン味のない演奏がくりひろげられた。 惜しむらくは第2ヴァイオリンとヴィオラの響きが若干薄く感じられたことだろうか。 それにつけても各曲ともに上質で素敵な演奏となっていた。次回はオーケストラ編成で今村能さん指揮とのこと。 メインはモーツァルトのシュピター交響曲。 僕が行くようなこの近辺のコンサートでのモーツァルトは満足したためしはないが、ならチェンバーなら期待できるかな... と、そんなことを思いながら会場をあとにした。