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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第8回定期演奏会

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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第8回定期演奏会
2001年3月4日(日) 13:30 奈良県文化会館国際ホール

プロコフィエフ:交響曲第1番 ニ長調「古典交響曲」
モーツァルト:フルート協奏曲第1番 ト長調 K.313
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調「田園」

(アンコール:岡野貞一作曲、北川文雄編曲:故郷)

原 祐子(fl)
指揮:井村誠貴

井村さん指揮による奈良フィル定期もこれで4回目。 前回同様2階に直行して席を確保し、プログラムで次回定期のプログラムを確認(いつもながら気が早い)。 なーんだ、井村さんは次回の指揮をされないのか、これで一区切りかな... と、ふっと舞台上を見てびっくり。 コントラバスが左奥に並んでいる。 ついに井村さんも奈良フィルで弦楽器を対抗配置するまでになったのか、とちょっと感慨深いものを感じたのであった。
さて演奏であるが、対抗配置という意欲的な取り組みはあったのだが、総じて可も無く不可も無く... 奈良フィルの誠実で清冽な演奏を十分に感じ取りはしたが、練り込み不足というか踏み込み不足という感じを持った演奏会であった。 そんななかでもプロフィエフの古典交響曲は非常に面白く聴け、井村さんのリズム感の良さがとてもよく出ていたように思った。

古典交響曲は不思議な曲である。 拍が1つ多かったり少なかったり、音が間違っているようなところもあるらしいが、そんなことを感じさせずに曲が軽快に進行する。 聴く以上に演奏する方は大変なのではないだろうか。 さて第1楽章の冒頭、十分に気合の乗った開始、生き生きとした音楽が溢れ出してきた。 ここを聴いただけで、おっこれはいい音楽になるな、と直感したのだがまさにそのとおりとなった。 弦楽器を主体にした音を丁寧に重ねた曲つくりであって音楽がとても安定しているのだが、堅さを感じることがなく、リズム感の良さなのだろう。 第2楽章では弦楽器を対抗配置にしている効果でチェロとコントラバスが一本になって合奏に芯がくっきり出ていて気持ちがいい。 第3楽章のガボットと第4楽章のフィナーレはアタッカで進んだが、ともに自在に音を操つる爽快感・快速で飛ばす疾走感で気持ちの良い音楽であった。 曲の終わりのホルンが強調されていたのがなかなか面白かった。 あとティムパニがいつもの田中さんから茶屋さんに替わったため、轟音とも言えるような重い響きが曲のアクセントとなっていた。
フルート協奏曲は、主席奏者の原さんがソロ。 オケを小編成に(1stVn:7,2ndVn:6,Va:6,Vc:5,Cb:2)してのスタート。 ソロは冒頭こそやや堅さを感じたが、全体的にロココ趣味に落ちない落ちついた上品な演奏であった。 終演後、会場と舞台の同僚から温かい拍手が送られていた。 ソロは第1楽章のカデンツァの前あたりから固さがとれてきたようだ。 カデンツァでは感情のこもった響きで会場を魅了していた。 第2楽章もとても丁寧で落ちついた音色でしっとりと歌いあげていた。 しかし第3楽章のロンドもこの丁寧さが先にたてて、ロンド特有の目まぐるしさはなく、華やかさよりも落着きをとったような演奏になっていた。 個人的にはもうちょっと冒険的と言っては語弊があるかもしれないが、華やかさ欲しかった。 これは伴奏も同じであって、生ぬるく穏当に流していったという印象である。 とくに第1楽章の第1主題はヴァイオリンが付点音符で演奏するところなのだが、まるで力強さがなく、すぐに弱音で繰り返す同じ主題との対比が明確にならなかった。 ここはこの曲全体の勘所と個人的に思っていただけに残念であった。
メインの田園交響曲は、非常にオーソドックスな演奏であったように思う。 ただ前半はオーソドックさの中にもどこか挑戦的な意欲を感じたのだが、後半は若々しく清冽でストレートではあるだが、粘りに欠けるような感じがして残念であった。 第1楽章はとても落着いた始まりで第1ヴァイオリンが非常に綺麗で上々の滑りだしであった。 冒頭のオーボエを始め各管楽器のソロも見事であるし、総奏になったときにはチェロとコントラバスが芯になって響く。 おおこれは... と期待が膨らんだ。 第2楽章の冒頭も中弦楽器の豊かな響き、ピチカートの息づいた感じ、カッコウの場面のフルート、オーボエ、クラリネットと受け渡していく場面など素晴らしかった。 木管楽器と弦楽器の受け渡しなど奈良フィルらしい丁寧で上品な感じも存分に味わったが、中盤にやや間延びするようにも感じた場面があった。 第3楽章は各ソリストの名人芸を堪能したが、これを際立たせることなく、全員プレーとしてよく纏まっていたように思う。 第4楽章はティムパニの轟音が響いていたが、強弱はあっても、ストレートすぎるのか、うねるような感じが乏しかったのが残念。 第5楽章もまたあっさりとしていたようだ。 ここまでもそうだったのだが、この楽章ではより顕著に対抗配置の弱点が出てきたように思う。 第2ヴァイオリンが総奏になると薄くなり、やけに第1ヴァイオリンが響いてくるようなのだ。 これは第2ヴァイオリンの楽器自体が客席に向かっていないこともあるのだろうが、ピチカートもあまり響いてこない。 この楽章、全体としてゆっくりとした演奏ではあったのだが、このようなこともあって、音楽、とくに弦楽器がめくるめくような感じで層となって音楽が展開されていくような感じではなく、どこか淡々と流してしまっているようだ。 踏み込み不足というのだろうか、もっと秘めた熱さのようものが欲しかった。 上品すぎたのだろうか。 舞台の上では精一杯なのはわかるのだが... 前半に聴かせていたような意欲があまり感じなかったのは?? 井村さんというと後半の燃え方を期待しているせいもあるのだろうが、ちょっと燃焼不足だったのではないだろうか。