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京都府立大学交響楽団 第25回定期演奏会

オケの中に一緒に入って楽しんでいるようなブラームス戻る


京都府立大学交響楽団 第25回定期演奏会
2001年5月19日(土) 19:00 長岡京記念文化会館

ロッシーニ:歌劇「セミラーミデ」序曲
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
ブラームス:交響曲第2番ニ長調 作品73

指揮:井村 誠貴

若いエネルギーが満たされた演奏会だった。 どの曲もメリハリがきちんとついていて、躍動感があって、楽しくなるような演奏だったが、決して野放図に鳴り響いたりしない。 きちんと統率がとれているのが何より素晴らしかった。 特にリストの狂詩曲がうねりも感じて井村さんらしさもあって良かったが、ブラームスの交響曲第2番をこれほどまでにわくわくするように聴いたのもまた面白かった。 まるでオケの中に一緒に入って楽しんでいるような感じになった。 これも若さのエネルギーのせいだろうか。 とにかく楽しい気分になった演奏会であった。

オケは弦楽器を対抗配置にしている。 まずはロッシーニの序曲。 井村さんは学生オケをよくドライブし、場面転換の切り返しも見事に決めていて曖昧さがなくて気持ちがいいロッシーニであった。 はずむような開始、ホルンは4人とも女性だったが、なかなか巧くて決めて上々の滑りだし。 学生オケらしくきちんとしていて聴き応えのある演奏だったが、クレッシェンドもなんとなく機械的にも感じるなど少々生真面目な感じもした。 やや弦楽器も薄く感じたがメリハリがよく効いていて聴き応えは十分。 少々長い序曲だがとても楽しくて気持ち良い演奏だった。
リストの狂詩曲は、弦楽器に厚みが増し、重いけれどハリや艶がある。 クラリネットのソロもとても巧くて実に素晴らしい。 思わず身を乗り出した。 ラッサンでは対抗配置の効果が出ていたように思う。 チェロとコントラバスの響きが全体の芯となり、これにヴァイオリンの響きが左右から包み込むような感じ。 そしてフリスカでは井村さんらしく振幅の大きな音楽であったが、ここでも軽妙で洒脱な音楽の中にもきちんと一本筋が通っている。 場面転換がきちんと決まっているのはロッシーニと同じで素晴らしい。 何よりも思いっきり演っていても決して野放図に鳴り響かないところが立派。 このように情熱的な振幅の大きな音楽は井村さんとこのオケにはよく合っていたと思う。
メインのブラームスの交響曲第2番。 色々な録音で聴いているためハードルの高い曲である。 この演奏を聴き始めたときには、早いパッセージでの曖昧さを感じていたのだが、だんだんと聴き進んでいくうちに何だかオケの中に一緒にいるような気分になってきた不思議な演奏だった。 一生懸命さはもちろんであるが、この曲を演奏することの楽しさ・面白さを強く感じた演奏だった。 第1楽章は弦楽器がやや明るく、ちょっと練り込み不足かな、学生オケだからもう少し滋味さを求めるのは可哀想かな... という感じで聴いた。 主題の展開部あたりでの早いパッセージでは急き立てられているようにも感じ、再現部では早いパッセージでの弦楽器の乱れも少々気になる。 第2楽章では井村さんは棒を持たずゆったりとしたアダージョ。 チェロによる第1主題呈示からホルン、オーボエ、フルートなどなど主題をフーガ風に展開するところが素晴らしい。 このあとも弦楽器が層をなしているように響いてて素敵。 ただこの楽章進むにつれて響きに芯はあるのだがちょっと粘りが感じられず少々散漫な印象も持った。 第3楽章は、木管楽器とチェロのピチカートによる爽やかな開始が印象的。 この楽章は学生オケらしい若々しさが感じられてよかったように思う。 そしてその気分のままアタッカで歓喜のフィナーレに突入。 チェロとコントラバスが明瞭に聞き分けられるのも対抗配置のせいだろうか、若さいっぱいに盛り上がる。 第2主題も充分に感動的であった。 そしてぎゅっと絞り込んだような感じで曲が展開する、少々堅いかなぁ... と思いつつも勢いに飲みこまれたような感じ。 しかし終始低音弦が音楽を支えているし、ティムパニも大ぶりせずに要所を決めている。 コーダに入る部分の第2主題を吹くトロンボーンなども充分に締まった音で野放図さはなく立派。 そして壮大でわくわくするような感じを持ったフィナーレだった。
最初はちょっと不満も感じたブラームスだが、このようにわくわくするような若々しいブラームスもまた面白いなぁ、というのが率直な印象。 まるでオケの中に一緒に入って楽しんでいるような感じになった。 アンコールではそれがまた再演され、演奏はかなり飛ばし気味であったが、溢れんばかりの若さと情熱に包まれた演奏で、オケ・会場ともに一緒に楽しむということをより強く感じ、楽しい気分で会場をあとにした。