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奈良女子大学管弦楽団 ’01サマーコンサート |
しなやかで叙情性も感じた(戻る)
奈良女子大学管弦楽団 ’01サマーコンサート
2001年6月30日(土) 18:30 奈良県文化会館国際ホール
エルガー:行進曲「威風堂々」第1番
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
カリンニコフ:交響曲第1番 ト短調
指揮:河崎 聡
これまで井村さんのもとで常に前向きな熱演を聴かせてくれた奈良女オケだったが、今回は河崎聡さんの指揮のもとでしなやかで叙情性も感じさせる熱演を聴かせてくれた。 ことにカリンニコフでは、河崎さんの指揮のもとで突っ走ったりせず纏まりのある充実した音造りをしていたのが印象に残った。 特に第1楽章では曲自身が持っている甘さが少々鼻につく場面においても叙情に流されることなく常に真摯な演奏態度によって爽やかさに転換していたし、また第4楽章では管弦ともに抑制を効かせての熱演となって、単に音の大きさ・強さよりも纏まり・しなやかさを感じさせた熱い演奏で幕を閉じた。 しなやかなオケに変身するのかな、次回もまた楽しみである。
冒頭のエルガーは全力で立ち向ったような元気いっぱいの演奏であった。 しかし勢いはあるのだが、弦楽器はなんかザラつき気味であり、パーカッションも少々ヤケ気味に聞こえる。 中間部ではちょっと遅めのテンポ設定のようだったが低弦も響かずまたフィナーレでドンチャンと鳴っていた。 これは席のせいかな... とも思ったが、後から考えるとこれは練習量の差なのかオケ全体があがっていたではないだろうか。 とにかく一丸となっての演奏であった。
ブラームスのハイドン・ヴァリエーションは、爽やかでしなやかさも感じた演奏であり、特に力まずにゆったりと纏めあげられたフィナーレが印象に残った。 主題のオーボエとその裏でそっと寄り添うホルンが穏やかで実に見事。 チェロとコントラバスのピチカートもよく聞こえていた。 第1変奏では抑制のよく効いた金管が見事、ややヴァイオリンがザラつき気味だったのが惜しい。 しかし第2変奏あたりから低弦の支えもあって弦楽器全体に艶が乗ってきたようである。 第3変奏では爽やかなヴァイリンとオーボエソロが印象に残った。 第4・5変奏では疲れが出てきたのかオケが少々ざわつき気味で残念だったが、そんななかでも低弦がしっかりと演奏を支えているのでゆるぎもしない。 第6変奏でのホルンの抑えた表現が見事、オケ全体もこれで息をふきかえしたようで強弱の対比も決まっていた。 第7変奏ではさわやかによく纏められた弦楽器の分奏が見事に決まっていた。 第8変奏は少々息切れしたのか纏まりに欠ける面があったが終曲のアンダンテではコントラバスの優しいうねりに支えられて次第に熱がこもってきてのフィナーレとなった。 河崎さんに従ってゆっくりと力まず、しかし情熱を失わず美しく纏めあげられていたフィナーレは女子大オケらしい特質を出していたようで見事だった。
カリンニコフの交響曲第1番は初めて聞いたこともあって少々的外れな面もあるかもしれないが、先のブラームスで聴かせてくれた特質に情熱をプラスしたような真摯な演奏であった。 管弦ともに充分に抑制が効いていて、単に音の大きさ・強さよりも纏まり・しなやかさをよく感じさせてくれた熱い演奏であった。 特にフィナーレは開放されてもしなやかさを失わず感動的でもあった。 さて第1楽章は出だしが少々揃わなかったのがじつに残念だったが、ロシア的な哀愁のある語り口を随所に見せての熱演だった。 チェロによる主題も叙情的でよく纏まっていたし、また曲本来が持っている少々甘さが鼻につくような場面もあったのだが、常に真摯なオケの態度に救われて、甘さを爽やかさに転換していたようだ。 また力が漲るような場面であってもしなやかさを失わず力まない。 そしてこの楽章のフィナーレでは弦楽器の分奏もよく決まり充分に練り上げられた印象を持った。 第2楽章では冷え冷えとしたハープとヴァイオリンによる開始だった。 オーボエのソロが見事に決まっていたが、やや全体的には少々まとまりに欠けたような印象を持った。 やはりゆったりと歌うような場面はアマオケにとって至難なのであろうが、常に真剣に曲に立ってたのがびんびんとこちらがわに届いていた。 第3楽章は湧きあがるような開始で先の楽章を挽回。 楽しさをよく感じさせた楽章であった。 なかでもオーボエ、フルートが哀愁を感じさせて巧い。 また弦楽器の分奏も見事に決まっていたが、何より管楽器との会話がきちんとしていたのが印象的に残った。 この第3楽章の後半から熱を帯びてきた演奏は、終楽章の冒頭からパワーアップし、フィナーレまで熱い演奏が続いて幕を閉じた。 この楽章でも弦楽器と管楽器の会話がきちんときまっていたことに加えて、金管楽器のファンファーレに抑制がよく効いていたのが印象に残った。 そして思い切りの良いティムパニがリズム感をよく出して曲をきちんと支えていたのも印象的。 最高潮に達したフィナーレでは、指揮者によってオケが開放されたが、オケが一丸となったままで無防備になることなどなく、女子大オケらしく力で抑え込まずしなやかで常に含みを持たせた演奏に終始して感動的なエンディングを形成していた。 素晴らしかった。
河崎さんは終始優しくにこやかにオケをコントロールされていたが、オケはそんな河崎さんの指揮によく応えて、集中力を高めていたようだ。 さすがにゆったりした場面では厳しい面もあったが、女子大オケらしく丁寧でしなやかな音造りで拡散したり突っ走ったりせず、常に前向きであったことも好感が持てた。 次回の定期演奏会はチャイコフスキーの「冬の日の幻想」とのこと。 こちらでも真摯でしなやかな演奏となるだろうか、期待したい。