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奈良フィルハーモニー管弦楽団 第12回定期演奏会 |
岩谷さんの美音とテクニックを駆使した協奏曲(戻る)
奈良フィルハーモニー管弦楽団 第12回定期演奏会
2003年3月9日(日) 13:30 奈良県文化会館 国際ホール
ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ブラームス: 交響曲第2番 ニ長調 作品73独奏: 岩谷祐之(vn)
指揮: 井村誠貴
前回の定期演奏会に続き井村さんの登場。 ソリストは 2001年1月13日の宝くじコンサートでメンデルスゾーンの協奏曲を情感たっぷりに弾ききった岩谷さん。 岩谷さんは1977年生まれだからまだ25才だろうか、まだ若いが日本音楽コンクール1位の実力の持ち主である。 演奏は、そんな岩谷さんの美音とテクニックを駆使した協奏曲が素晴らしかった。
特に第1楽章のカデンツァから終結部にかけて上昇感があってぐいぐいと会場を引き込んでいった。 終わってから思わず拍手も飛び出たがこれには納得するものがあった。 第2楽章は清涼感があり、終楽章はまたぐんぐんとのっていった感じであった。 これからもまた聴きたいヴァイオリニストである。
メインのブラームスの交響曲は、テンペラメントに燃える演奏を期待していたのだが、ちょっと上品に過ぎたかな、という印象。 弦楽器(特にヴァイオリン)の人数がもうちょっといたら変わっていたかもしれない。 そつなく纏まってこのまま終わるのかな…と思っていたが、終楽章それもフィナーレになって一気に燃え上がったのにちょっと吃驚した。 この効果もあって会場からさかんに拍手を受けていたが、ちょっと消化不良気味だったことは否めない。
恒例のアンコール曲「故郷」のふくよかな弦の響きを目の当たりすると、大曲の2曲プログラムということもあってちょっと安全運転に走ったのかもしれないけれど、ミスしてもいいからこのように思い切って演ってほしかったなぁ…というのが偽らざるところだった。 次回に期待したい。
簡単に演奏会をふりかってみたい。
今回始めの試みとして、ホルンの東谷さんが一人で出てこられてトークが始まった。
ブラームスが北ドイツ出身であること、今回取り上げた曲はともに1877年(日本では明治維新のころ)に作曲されて近代化が始まった頃であることなどを解説された。 もちろん喋りのプロではないが、なかなか分かり易くて良かったと思う。 次回以降もこの企画を続けて欲しいと思う。 あと付け加えるなら、折角ホルンを小脇にかかえて登場されたので、交響曲第2番の冒頭の一節など紹介して欲しかったところだが、これはちょっと贅沢なお願いであろう。
さて、団員が出てきたあと、岩谷さんと井村さんの登場。 おや、いつもは髪をオールバックでガッチリと固めている井村さんの髪がサラサラのセンター分けになって(ゴジラ松井のような髪型?)ちょっと若々しい感じ。 これもまた新機軸かな。
さて本題に戻って、ヴァイオリン協奏曲。 第1楽章は導入部から荘重というよりもすがすがしいといったほうが良い感じ。 もうちょっとオケのヴァイオリンの数があればいいなぁ…というのは無いものねだりだろうが、そう思ってしまった。 独奏もやや緊張しているのか淡々と弾いているような感じもうけたが、展開部あたりから余裕が出てきたのかよく歌うようになったと思う。 中低音に響きの厚さがあり高音の艶も素晴らしい。 技巧を凝らしたパッセージも難なくこなしたカデンツァ。 オケが入ったところの静かな表現も優しくまた可憐で素晴らしかった。 そしてぐいぐいと音楽が昇りつめるように燃え上がっていったあたりは会場を虜にしていたようだ。 オケも充分に熱くサポートしていて、この楽章を閉じたときには思わず拍手が飛び出したほど。 楽章間の拍手を非難するつもりは毛頭なく、かえって熱演に対して自然とでてきたこのような拍手は大いに歓迎である(ただしチャイコフスキーの悲愴交響曲は除く・・・ちょっと我ままかな)。
第2楽章は清涼感のある音楽だった。 冒頭の前橋さんのオーボエはいつもながら可憐である(いつもはバロック・オーボエを吹いていらっしゃるらしいがこのオケではモダン楽器である)。 岩谷さんの独奏もまたしっとりとした美しさをたたえた演奏で、この楽章は細かなことは考えず、しばし聞き惚れていた。
アタッカで入った第3楽章は一転して熱い演奏になった。 これまでよりもオケの響きに厚みが感じられもする。 岩谷さんも美音と技巧を駆使した熱い演奏を繰り広げてくれた。 とくに楽章の後半では、オケも強弱などのメリハリをつけていたようだ。 ここでもぐいぐいと客席を引き込んでいった集中力の高いエンディングを形成し、会場から盛んな拍手を受けていた。 若さ・情熱といったものを感じさせてくれたブラームスのヴァイオリン協奏曲であった。
休憩をはさんで、ブラームスの交響曲第2番。 ブラームスの田園交響曲とも呼ばれる曲であるが、ちょっと上品に過ぎたかな、という印象。 ただし終楽章それもフィナーレになって一気に燃え上がったのにちょっと驚いたけれども。
第1楽章は、ちょっと硬い感じの主題呈示だったけれど続くホルン、オーボエのパッセージは明るくまろやかだった。 ただここでももうちょっとヴァイオリンの数が欲しいなぁ…という無いものねだりを感じてしまった。 弦楽器に響きの幅というか、ふくみが欲しいのだが、サラサラと流れていってしまうのが惜しい。 井村さんはやや速めのテンポで抑揚をつけているようなのだが。 再現部では音楽が高揚してきて低弦も地に足をつけてしっかりとふんばっているのだけれどな。 イマイチぐっとのめり込むところまで来なかった。
第2楽章は、ゆったりとした開始で、チェロによる主題の呈示、これを受け継いだヴァイオリンもじっくりと音楽を進めていった。 クライマックスを築いたあたりこそ強い音楽となっていたが、またゆったり感にもどってしまった。 弦楽器が綺麗に揃っているんだけど、ちょっと眠気も襲ってきた。 中だるみ感だろうか。
第3楽章は期待していた前橋さんのオーボエ・ソロが期待通りの愛らしさ。 弦楽器が軽やかに入ってきてまさしく田園交響曲といった感じだった。 しかし、ここでも全体的に綺麗に纏めようとしているのか、安全運転を決め込んでいるのかな。 イマイチのめり込めず、やはり眠気も襲ってきたりして・・・うん、確かに綺麗に揃っていい気分には違いないのですけれど。
でも終楽章は一転して緊密な音で始まった。 ホルン軍団の音もタイトでカッコ良かったし、縦ノリのリズムで音楽がぐいぐいと推進していく。 井村さんの音楽ってこうでなくてはつまらない。 第2主題はちょっとテンポを落としていたようだ。 このあとのクライマックスでまたぐっと盛り上がったけれど、これまでも気になっていたのだが、トランペットの音が少々甲高い感じなのでちょっとうすっぺらくも感じてしまった。 そして展開部に入いるとやはりまたちょっと全体的に大人しくなったみたい。 低弦こそ芯になってグイグイと鳴らしているのだが中高音弦が何度も言うが綺麗にまとまりすぎているみたい。 再現部になって時折入るパンチもあるが、雄大さがもっと欲しいなぁ…なんて思っていたらフォナーレになっていきなり燃え上がり始めたのには吃驚した。 えっ、今まで力を温存していたの、っていう感じ。 ぐんぐん盛り上がっていってあれよあれよという間に終わってしまいました。 吃驚しました。
ということで、なんか文句ばかり書いたような気もしますが、決してこねくりまわしたような変な演奏ではなかったことは確かです。 オケも指揮者もそれぞれに懸命だったように見えました。 音楽って難しいですね。 えっ、わざと難しく聴いているんじゃないかって? もっとリラックスしたらいいんじゃないのって言われそうですね。 気分を悪くされた方がいらしたらごめんなさい。 でもね、奈良フィルも井村さんも好きだし期待しているので許してください。