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同志社女子大学オペラクラス 第17回公演「フィガロの結婚」

モーツァルトを堪能戻る


同志社女子大学オペラクラス第17回公演「フィガロの結婚」
2004年2月21日(土) 14:00 同志社女子大学・新島記念講堂

モーツァルト: 歌劇「フィガロの結婚」全4幕(日本語上演)

演出・音楽指導: 坂口茉里
音楽指導: 中村利男
衣装: 岸井克己
   
アルマヴィーア伯爵: 三原 剛
フィガロ: 伊藤 正
バルトロ: 井原秀人
バジリオ: 松岡重親
ドン・クルツィオ: 平松実留
アントニオ: 雁木 悟
   
<4回生オペラクラス配役>
伯爵夫人: 伊藤裕美(2幕)
  草津小百合(3・4幕)
スザンナ: 川勝 亜希(1幕)
  柳 留見子(2幕)
  志賀真奈(3幕前半)
  松本直子(3幕後半)
  田中八千代(4幕)
ケルビーノ: 齋藤江里(1・4幕)
  木戸美菜子(2・3幕)
マルチェリーナ: 福田浩子(1・2幕)
  橋本尚子(3・4幕)
バルバリーナ: 筧 智也子
   
花娘・村の娘:3回生オペラクラス(17名)
村の若者:大阪音楽大学有志(8名)
   
管弦楽: 同志社女子大学有志
チェンバロ: 福田真里
  宮崎玲子
   
指揮: 井村誠貴

同志社女子大学オペラクラスの卒業公演ですが、男性陣には三原剛さん、伊藤正さん、井原秀人さんという一流の歌手がラインナップされ、井村さん指揮による学生オケの伴奏もとても見事なものでした。 もっとも女声の配役が幕毎に代わるなど、卒業公演のため仕方ない面もありましたけれど、そこは演出がしっかりしているからでしょうね。 それに、フィガロの結婚、モーツァルトの音楽があたりまえながら「てんこもり」でしょ、これを歌う4回生オペラクラスの皆さんの歌唱がとてもしっかりしていました。 一流の男声陣と対等に渡り合って歌っていたのは本当に見事でした。 とても得難い経験になるのではないでしょうか。 あまり無理を感じずに展開された本格的なオペラ公演で、来年もまた来て観てみたいな、と思えた素適な公演でした。 とにかく、モーツァルトを堪能できました。
なお、無理やり連れていった小学4年の長男、いつもならふてくされて寝ちゃうんですけどね、この公演は最後までしっかり観てました。 そして、話の流れが分かった、なんて言ってたのには驚きましたね。 もっとも初夜権のことまでは分らないでしょうけど・・・、とにかく、しっかりとした演出・演技・音楽だったということではないでしょうか。 けっこう彼なりに楽しんでいたことを付け加えておきます。


簡単に公演をふりかえってみたいと思います。

いい天気でしたね、長男のためにマーケットでサンドイッチとカルピス・ウォータを買ってから電車に乗りました。 ちょっとしたハイキング気分なんですけどね、長男は浮かない顔でついてきました。 だって嫁はんは外出し、長女は友達のところに行ってしまったので、一人では家に置いていけない(逃げ遅れた)小学4年の長男が無理やり付き合わされたというわけですから。 
13時32分に興戸駅に到着。 もう1本早い電車にしたかったのですけどね、丘の上の女子大に向けて歩く長男の足は遅れ気味です。 10分ほど歩いて到着した大学正門で新島記念講堂の場所を尋ねると「こっちなんですけど、よろしかったらこちらのエスカレータを使って学内を見学していってください。 案内も出ていますから」と親切に教えていただきました。 長男にも大学というところを見せてあげようと思い、エスカレータに乗ることにしました。 そして、お父さんの行っていた大学にはエスカレータなんてなかったし2キロくらいずっと平地で何もなかった、なんて言ってみても興味ないようでしたけどね。 
そうこうするうちに開演10分前に新島記念講堂に到着。 ホールに入るとほぼ満員、熱気もこもってました。 長男を連れているし、オペラ公演なんで、音響よりも舞台が近くで見えるほうがいいかなと思って降りていったら最前列の隅にはまだ空きがあったのでそこにしました。 ちょうどチェンバロの前。 しかしその後も続々とお客さんが入り、通路にも座って欲しい旨のアナウンスもあったりして、結局15分ほど遅れての開演となりました。

井村さんがスポットライトを浴びて登場。 指揮台に向う途中、危うくファゴットに顔をぶつけられそうになってました。 第3幕の前には躓いてましたし、足元に譜面を照らす電源コードがはっている急造オケピットも客席同様満杯状態みたいです。 さて、序曲の開始。 いつ聴いてもうきうきする音楽です。 軽快で爽やかなんですけどね、場所的なこともあると思いますが、重心を低く取った響きがまろやかでとても心地良いものでした。 この曲だけでなく、全体的に伴奏音楽の響きはコントラバスの響きが芯になり、ヴァイオリンや金管楽器の響きが抑えられた感じに聞こえました。 ヴァイオリンは後ろから聴くような位置でしたしね。 でも、音楽が場面場面によって変化するのを間近で聞けて、おもしろいな、と思える位置でした。 この響きの具合、けっして嫌いではなかったですし。

第1幕が開くとフィガロとスザンナの場面。 フィガロの伊藤さん、なんだかベームの指揮するレコードの表紙になっているヘルマン・プライみたい。 もちろん歌も演技も僕が言うのもおこがましいほどの手馴れた巧さが光っていましたね。 それに対するスザンナは清潔な声で、これまた堂々とフィガロと渡り合っての二重唱。 いやぁ〜巧いもんです。 これから出てきた皆さん、きっと一生懸命なんでしょうけれど、そんな感じにはまったく見えないところがこのオペラの素晴らしいところでした。 話を戻して、堂々としているといえば、マルチェリーナ。 貫禄のある演技でしたね、見事でしたね。 そして逆に初々しいのはケルビーナ。 容姿も可愛い少年みたいですけど、歌もまた誠実な感じで、特にフィナーレのフィガロの「もはや飛べまい」では好感を持てる小僧といった感じが本当によく出ていた演技でした。 愛らしかったな。

暗転し暫くそのままの状態が続いたあと第2幕の幕が上がりました。 伯爵夫人が透明感を感じさせるソプラノで、声もよく伸びていて愁いが感じられました。 ケルビーノの配役が代って、容姿はよく似ているんですけどちょっと宝塚っぽくなったみたいで、恋とはどんなものかしら、は感情のよくこもった歌が素敵でした。 この場面では、舞台の上の他のメンバーの演技もよかったですね。 スザンナも配役が代り、とても器用な感じがしましたね。 そして声もよく透ってました。 さて、この第2幕の最大の聴きどころはフィナーレですね。とても充実した音楽が圧巻でした。 正直なところ、この手前では疲れてきたのか、ちょっと眠くなってきたんですが、ここにきてまた覚醒しました。 ここの音楽、色々な配役の性格付けがきちんと音楽で表現されていました。 オペラは総合芸術と言われますけど、まさしくそれを感じさせてもらったアンサンブルでした。

ここで20分間の休憩をとってから第3幕。 伯爵夫人の配役が代り、落着いた感じのする澄んだ声が特徴的でした。 スザンナも配役が代り、明るくてチャーミングな感じになりました。 こちらは柔らかい声の響きが魅力的です。 そして伯爵はさすが三原さん。 気品も感じさせる存在感は圧倒的ともいえるんですが、伯爵夫人もスザンナもよく渡り合ってましたね。 そしてマルチェリーナもまた配役が代ってましたが、暖かさを感じさせる歌唱はとても立派。 そして、このあとの6重唱もまた各人の思いが見事に描き分けられてて、とても面白い場面でした。 そして、このあとまたもスザンナの配役が代りました。 ここは結婚式だからでしょうかね、ちょっと華やかな感じのするスザンナです。 響きの柔らかい伸びやかな声が特徴的でした。 この結婚式の場面の演出、笑いながら村娘たちが客席から走ってきて舞台に上がる演出はとても楽しいものでした。 それに3回生の皆さんも本当に嬉しそうだし、きちんとした演技をしてて素適で、舞台でとても盛り上げていました。

第4幕の前にも20分間の休憩が入りました。 幕が上がり、バルバリーナがピンを探している場面。 ここの短調のアリアは可憐な声で美しく歌っていましたね。 そして、この後のマルチェリーナのアリアは柔らかい響きが素晴らしく、続くバジーリオはストレートによく伸びる声でアリアを歌ってました。 あとで調べてみると、この2つのアリアはカットされることがよくあるようですね。 さて、フィガロをじらすスザンナはまたも配役が代りました。 今度は貞淑な若妻といった感じです。 清楚な響きの声がとても素適でした。 いやぁ〜ころころと配役が代ってしまうのですけれど、その場面場面に合わせた配役をしているのでしょうか。 もちろん役作りもきちんとしているのでしょうけど、確かに最初だけ違和感は感じても、すぐに場面に馴染んでしまいます。 本当に巧く進めていますね。 そしていよいよフィナーレに向って人も増えてきました。 ドラマは盛り上がって、荘厳な感じさえするフィナーレは大団円。 華やかでとても盛り上がりました。 カーテンコールでは、感極まった方もいたようですが(3回生の中にもいたようですけど)確かに見事な舞台でした。

白状すると、フィガロの結婚って、ベーム/ベルリン・ドイツ・オペラの4枚組のレコードは持っていますが(抜粋版のCD1枚も持っていますが)、資料用みたいになっています。 最後まで通して聴いたことがなかったんですが、今回始めて通しで最後まで聴いた(観た)のですが、楽しめる内容にとても満足しました。 とにかくモーツァルトの音楽が「てんこもり」ですしね、モーツァルトを堪能したって感じです。 だいいち歌っている皆さんの歌唱がとてもしっかりしていましたしね。 オペラクラスの皆さんも一流の男声陣と対等に渡り合って歌っていたのは本当に見事でした。 来年もまた来て観てみたいな、と思えた素適な公演でした。 
なお、無理やり連れていった小学4年の長男もまたこの公演を最後までしっかり観ていました。 そして終演後には、話の流れが分かった、なんて言ってたのには驚きました。 とにかく、それだけしっかりとした演出・演技・音楽だったということではないでしょうか。 このことを付け加えておきたいと思います。