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関西大学交響楽団 The 27th Summer Concert |
安易に流れることのない新世界(戻る)
関西大学交響楽団 The 27th Summer Concert
2004年6月29日(火) 19:00 吹田市文化会館 メイシアター大ホールヴェルディ: 歌劇「ナブッコ」より序曲(*1)
ベートーヴェン: レオノーレ序曲第3番(*2)
ドヴォルザーク: 交響曲第9番ホ短調「新世界より」(アンコール)黒人霊歌、井村誠貴編曲: ゆれる幌馬車
指揮:織田映子(*1,学生),中山智左希(*2,学生)、井村誠貴
素晴らしい新世界交響曲の演奏を堪能しました。 このプログラムを知ったとき、正直なところ、えっ〜新世界かよ、なんて思ったことを告白します。 しかし、この耳慣れた曲から、躍動感や歌などの要素を導き出し、勿論、締めるべきところはきちんと抑えられた演奏で、どこをとっても安易に流れることはない音楽に酔いました。 そして新鮮な感動を覚えました。
井村さんの指揮は、いつも以上に気合に満ちていたようです。 全身を使った大きな動きはいつもどおりなのですけれど、今回はかなり気合が入っていたようです。 デュナーミクや響きのバランス、音楽の運びなどにも充分に配慮されていました。 事前に譜面をかなり読み込み、よく練られた結果であると感じました。 非常に満足感の高い演奏でした。
またオケの方々も熱演で井村さんの指揮に応えていました。 常に前向きで果敢に挑戦する姿勢、素晴らしいですね。 もちろん姿勢だけではなく、演奏結果もとても見事でした。 なお第4楽章では、ヴァイオリンの後ろのプルトにいた人たちが、演奏の合間に肩当に使っていた布で汗を拭っていた姿が印象的でした。 熱演ご苦労さまでした。
このような例を出すのは間違っているように思いますけれど、イシュトヴァン・ケルテスがウィーンフィルを振って録音した新世界交響曲のCDを聴いたときに覚えたのと同じ躍動感やフレッシュな印象が頭をよぎりました。
なお1曲目、学生指揮による「ナブッコ」序曲では、井村さんも関大オケの一員となって、コントラバス奏者の末席で演奏に参加されていましたね。 このような一体感が今回の演奏に見事に結実したのではないでしょうか。
久しぶりに音楽を聴くことで元気が湧いてきた演奏会でした。
簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。
蒸し暑いなかの外回り仕事を終えてオフィスに戻ってきました。 ちょっとした残務をこなし、緊急な用件も無さそうなので、18時にオフィスを退けて吹田での演奏会に向いました。
しっかし最近歳なんでしょうね、ちょっと外回りしただけで疲れ果ててます。 息はぜぃぜぃとあがってくるし、目はショボショボ、久しぶりの井村さんの指揮される演奏なのに、いまいち気合が入らないままメイシアターに到着。 開演20分くらい前だったでしょうか。 礼儀正しい学生さんたちと会う度に声をかられ、こんなに疲れてたらあかんな、とちょっとだけ元気を取り戻してホール2階席へと向いました。
いつもの・・・と思って、通路後ろ側の足もとの広い楽ちんな席へ行こうとしたらカメラが陣取ってました。 仕方ないので、ぐるっと見渡し、最前列に降りてゆき、どかっと腰をおろし、隣の席にカバンを置き、上着を脱いでYシャツも腕をまくり、腕時計も外したあと、カバンから扇子を出してパタパタと・・・、なんだかオッサン全開でしたねぇ。さて、1階席はほぼ9割近く入っていたのではないでしょうか。 2階席も4割くらいかな。 やはり学生さんが多いようです。 若い人たちの多い演奏会って、熱気が感じられていいですね。 相変わらず、扇子をパタパタしながらプログラムを読んでました。 プログラム1番は今回指揮デビューされる学生さんかぁ・・・と、そしてオケのプルト表を見たら、コントラバス奏者の末席に井村の名前が!? 慌ててメンバー表を確認しても井村という学生さんはいない。 ほほぅ、井村さんも演奏に参加されるのだな、と楽しみにしていたら案の定、燕尾服を来た井村さんが出てこられました。 隣の学生さんと楽しそうに一言二言かわしながら準備開始。 いいですね、若い学生さん達に混じって演奏にも参加するなんて。 そしてチューニングも終え、静寂のなか今回デビューする指揮者が登場。 しゅっとした感じの女性。 立ち姿も綺麗ですね。
ナブッコ序曲、慎重に始まりました。 トロンボーン、チューバは厳かに、オケの全奏もよく揃ってストレートな盛り上がり。 オケも指揮者を盛り立てるべく、コントールを充分に効かせ、メリハリや対比をきちんとつけて指揮に応えていました。 だんだんと緊張もほぐれてきたのでしょうね、音楽に円やかさが滲んできて、チェロやコントラバスのピチカートは柔らかく、フルートやトランペットも優美に応えていました。 そしてフィナーレ、ここではまた元気よく、やや抑揚をつけたりもしていましたけど基本的にはインテンポでぐいぐい盛り上げた音楽で全曲を締めました。 よく纏まった演奏は、初指揮とは思えないバランス感覚に優れたものでした。 ちょっとストレートでインテンポすぎるきらいはありましたけど、それは欲というものでしょう。 演奏終了後に見せた爽快な笑顔もまた印象的でした。
舞台は暗転、オケメンバーもいったん退場したあと仕切り直しをし、2曲目のレオノーレ序曲第3番です。 こちらも女性指揮者。 余裕を感じさせる登場から、意欲的な音楽を展開していました。
太い響き、じっくりと落ち着いた感じのする音楽が始まりました。 重たいティムパニの響きなど先程とはうってかわった重量感を感じます。 テンポを保つだけではなく、やや感興に任せようといった意図も見え隠れしながら曲が進んでいきました。 徐々に音楽を盛り上げていったあと、バンダのトランペットがいい感じに入ってきました。 2回目のラッパはやや音量を上げて明確に主張、このたりはよかったですね。 ただやっぱりベートーヴェンは纏めようとすると難しいのでしょうね。 指揮者として色々とやりたいことがあったことは、指揮者のちょっとした左手の動き、身体の動かし方をよく見ていると意思が見えてくるのですけどね、今一歩踏み込みが足りないみたい。 そんなちょっともどかしい感じで聴いていました。 もっと思い切ってオーバーアクションで・・・な〜んて外野が言うのは失礼ですね(自分は何も出来ないくせにね)。 さてフィナーレは、音楽をぐいぐいと乗せてゆきました。 ホルンが見事ででしたね。 そしてティムパニが轟音を響かせた豪快なエンディング。 ここがよかっただけに、オーバーアクションで・・・なんて思ったということを許してください。15分間の休憩をはさみ、いよいよ井村さんの登場。 先の2名の学生指揮者が女性だったこともあって、単純に(身体が)デカイなぁと思ってしまいますね。
そしてその大きな身体をフルに使った巧みな表現で、この聴きなれた新世界交響曲から躍動感や歌などの要素を導き出していました。 勿論、締めるべきところはきちんと抑えられた演奏は、どこをとっても安易に流れることはない音楽。 酔いました。 そして新鮮な感動を覚えました。
井村さんの指揮は、いつも以上に気合に満ちていたようです。 全身を使った大きな動きはいつもどおりなのですけれど、全曲を通じたデュナーミクやバランス、音楽の運びにも充分な配慮がされていたようです。 事前に譜面をかなり読み込まれ、練りあげられた結果であると感じました。 非常に満足感の高い演奏でした。
またオケの方々も熱演で井村さんの指揮に応えていました。 常に前向きで果敢に挑戦する姿勢、素晴らしいですね。 もちろんきちんと結果も出していました。 久しぶりに音楽を聴くことで元気が湧いてくる演奏でした。 熱演、本当にご苦労さまでした。第1楽章、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの響きが絶妙にブレンドされた響きに惹き付けられました。 ホルンの強奏も抑制の効いたタイトな響き、木管楽器の歌もまたしっとりとしていい感じです。 それが不意に打ち切られるような感じで止めたあと、ちょっと間合いをとって一気に盛り上げました。 迫力満点。 メリハリの効いた躍動感、よく歌わせる旋律、ただ走るだけじゃなく溜めもあって聴き応えのある音楽です。 聞きなれた音楽ですけど、新鮮に響いてきます。 オケは常に中低弦が基調になっていて、大きな振幅をもって曲を進めているのですけど、地にしっかりと足が着いています。 またチェロのピチカートのなんと瑞々しい響き。 フルート・ソロは逆に渋くまとめていたようですね。 フィナーレに近づくとコントラバスに気合を入れ、ブラスに指示を出し、全体的に大きく盛り上げていったあと速度をぐんぐん増して、おおっ、速い速いっ。 そしてエンディングをタイトに決めたあと、残響が消えるまで暫く動きを止めていた井村さん。 その腕が降りると、ふっぅと息をつきたくなった熱い楽章でした。
第2楽章、先の楽章の熱気をちょっとまだ感じさせた厳かな開始からコールアングレによるお馴染みの旋律が始まります。 コールアングレの朴訥した響きにクラリネットや中低弦が絡み、じっくりと音楽が進み、穏やかだけど内心には熱い感情を秘めているようでした。 ミュートを付けたホルン、しみじみとした感じで良かったですね。 フルートの旋律から、熱い思いが表面に出てきたみたい。 コントラバスのピチカートもいい感じでした。 さらに井村さんはヴァイオリンに向かって入念に表情を付けをし、そのあとゆったりと大きな山場を形成。 そしてすっと退きます。 コールアングレが入って弦の1プルトによる演奏、そして休符。 ここはちょっと長めに切って、また切り、雰囲気を沈めたあと、トロンボーン、チューバ、ホルンをコラール風に吹かせてからティムパニの厳かな打音による終結でした。
第3楽章、気合の入った開始。 響きはよく締まっていてここでも熱気を内包した感じですね。 ティムパニの強打も決まりました。 集中力の高い演奏が続きましたけど、フルートやオーボエ、クラリネットなどよく歌わせていましたし、弦楽器もゆったりと滑るようでした。 ぐんぐん盛り上げたスケルツォですけど、軽く弾むような井村さんの動き(ダンス)にオケもぴったりと併せています。 熱い音楽なのですけど、けっして気張ったような感じがしないのが素晴らしい。 抑揚、対比など自在に操っています。 フィナーレは気合を入れてホルンの斉奏をタイトに決めて大きく盛り上げたあと、打ちつけるようなエンディング。
アタッカで入った終楽章。 井村さんの鼻息が聴こえてからホルンの斉奏が飛び出します。 この最後ほんの少しだけ乱れたかしら。 ぐんぐんと音楽が進みますが、コントラバスがよく響いてきて安定感抜群。 全員一丸で凝縮した響きによる音楽、気合はこもっていますが、勢いだけの演奏とは明らかに違います。 フレーズを力を込めて切る。 爽快でいいですね。 さて音楽が静かになり、クラリネットのソロが見事。 そしてここにきちんとチェロがサポートしていました。 ヴァイオリンの後ろのプルトでは、演奏の合間に何人かが肩当に添えていた布などで汗をぬぐう姿も。 正真正銘の熱演です。 そして音楽がまた勢いついてきましたけど、決して焦らず、ゆったりと中低弦が基調になった曲進行でじわじわと盛り上げていきました。 ホルンの斉奏、ここでも格好良く決まり、音楽にメリハリをつけ、ヴァイオリンにも力をこめるようにと指示。 そして大きなクライマックスを築いたあと、すっと潮を退かせて最後のトランペット。 艶がのった響きをストレートに響かせてケレン味なくさっと纏めて全曲を締めました。
個人的には、この最後のフェルマータ、もっと長く伸ばすのはどうかな? なんて思っています。 小澤征爾さんがサンフランシスコ響時代に録音した演奏がそうですけどね。 まぁそんな冒険はせず、さっと纏めたあたりの見識も含め、全体のデュナーミクやバランス、音楽の運びに充分に配慮された演奏でした。 まだまだ早いとは思いますけど円熟という言葉もちょっと浮かびました。 とにかく、事前に譜面をかなり読み込まれたようですね。 実によく練られた演奏でした。 そして常に前向きで果敢に挑戦したオケもとても素晴らしかった。
イシュトヴァン・ケルテスがウィーンフィルを振って録音した新世界を聴いたときに覚えたのと同じ躍動感やフレッシュな感覚も頭をよぎっていました。
そんなことはともかく、久しぶりに音楽を聴くことで元気になれた演奏でした。 この演奏を聴けて幸せになれました。 皆さんありがとうございました。 そしてお疲れさまでした。