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グリーン交響楽団 第16回定期演奏会

ストレート、重厚でウェット、端正、そして最後は楽しい戻る


グリーン交響楽団 第16回定期演奏会
2004年11月7日(日) 14:00  尼崎アルカイックホール

シューベルト: 野ばら、セレナーデ、楽に寄せて

独唱: 畑 儀文(T)

ショスタコーヴィチ: 祝典序曲 作品96
エルガー: エニグマ変奏曲 作品36
シベリウス: 交響曲第1番ホ短調 作品39

(アンコール)ショスタコーヴィチ: タヒチ・トロット(二人でお茶を)作品16

指揮:藏野雅彦


みどり会メセナのグリーン交響楽団の演奏会の招待券を頂いたので尼崎へ行ってきました。
まずはオーケストラ演奏に先立ち、賛助出演のテノール歌手の畑儀文さんがシューベルトの歌曲を3曲披露。 丹波の森国際音楽祭にみどり会のブラスアンサンブルが出演されたことへの返礼でしょうか。 音楽祭で使われているという小型アップライト・ピアノを使い、ご自身の伴奏で歌われて演奏会は始まりました。 2階席で離れていたせいか、やや声の響きがホール内を回ってきているようで、声の輪郭がちょっとはっきりしない部分も感じましたけど、それでも凛として端正な歌唱は充分に聞き取れました。 しかもドラマティック、久しぶりに畑さんの歌唱を堪能した感じです。 そしてまたピアノの音がタントンと響いて、ベートーヴェンが使っていたピアノを弾いたCDを持っていますけど、それにも似た朴訥とした響き。 可愛らしく、畑さんの歌にもよくマッチしていたことも印象的でした。
さてオケの演奏ですけれど、舞台袖に並んだブラスも加わったショスタコーヴィチの祝典序曲は祝賀ムード満載みたいで絢爛たるもの。 華やかで真っ直ぐに走った感じ。 しかし、エルガーのエニグマ変奏曲は重厚でかつウェットな響き。 ぐいぐいっと進んでいったのは聴き応え充分で、素晴らしい演奏でした。 そしてメインのシベリウスの交響曲第1番。 各パートがとてもしっかりとしていて、力は篭っていても端正な感じのする演奏でした。 北欧調を醸し出した演奏だったでしょうか、よく纏まった巧い演奏なのですけど、個人的にはもっと燃える演奏が好きなのです。 個人的には終楽章はちょっと欲求不満でしたけど、外れているとか合っていないとかではなく、趣味の問題なので許してください。 失礼な言い方かもしれませんけど、下手でもいいからハッチャキに燃えても良かったのでは、なんて生意気にも思ってしまいました(すみません)。 でも、演奏終了後の長い沈黙を破って真っ先に拍手したのは僕です。 たぶん。 とにかく難しい曲なのにとてもよく纏めた演奏は立派でした。
そしてアンコールのショスタコーヴィチのタヒチ・トロット(二人でお茶を)。 これを聴けたのも収穫でした。 終演後、トイレに行ったら、どこかの叔父さんが口笛でメロディを吹いてました。 ホールを出たときにも誰かが口ずさんでいたような気もします。 アンコールが良かった、というのは褒め言葉ではないのですけれれども、やはり、終わりよければ全て良し。 明るい気分で家路につきました。 ありがとうございました。


簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。

1970年の万国博覧会。 大阪市内にあった我が小学校の屋上からも遠くソ連館を望むことが出来ました。 この博覧会で「みどり館」というパビリオンを出展した旧三和銀行(現UFJ銀行)系列の会社が母体になって発足したのが「みどり会」だそうです。 グループ会社の親睦組織として、グリーン交響楽団やグリーン・ブラス・オルケスタなどがあるようです。
系列とは関係のない会社に勤めていますけど、団員の方から招待券を頂きましたので演奏会に行ってきました(ありがとうございます)。

さて会場の尼崎アルカイックホール。 グループ会社のメセナ活動ですから当日券売場も閉まっていて、招待券を持っている人のみが入場できます。 う〜ん、これほどのプログラムを演るのですから、せめて空席分は一般の方へもメセナとして開放してもいいのに・・・なんて思いつつ入場しました。
そして入場すると、いつもどおり2階席に直行。 パラパラとしか人が居ませんけど、中央通路の後ろ側にはまだ誰も居ません。 決まり。 中央通路後ろの最前列中央に陣取ることにしました。 ここは足もとが広いので楽なのです。

腰を落ち着けてステージを見ると、指揮者が藏野さんなのでコントラバスが左にある対向配置。 これは予想通りですけど、指揮者のあたりにアップライトのピアノがあります。 それも茶色の小型のアップライト。 そうそう、賛助出演として畑儀文さんの名前がありました。 さっそくプログラムを確認したら「シューベルト: 楽に寄せて 他」と書かれてます。 「他」って何だろう・・・って思いつつ(歌曲も無知なんで想像がつきません)開演を待ちます。 1階席はよく見えませんけど、だいたい7割位入ったでしょうか。 

定刻となって照明が落ちますと、黒の詰襟のジャケットでしょうか、畑さんがマイクを持って登場されました。 柔らかく温かみのある声でのスピーチ。 この声だけでうっとりとします。 そのスピーチによると、畑さんが主催されている丹波の森国際音楽祭(シューベルティアーゼ)にみどり会のグリーン・ブラス・オルケストラが出演されたことへの返礼のようです。 そして中央のピアノは音楽祭のシンボルとも言われる楽器だそうで、野外演奏、時には田圃の畦でも使われているというピアノとのこと(ちなみにカワイ楽器のカワイイ楽器だそうです)。

そのピアノを使ってのご自身の伴奏で、「野ばら」「セレナーデ」「楽に寄せて」の3曲を歌われました。 2階席でちょっと離れていたためでしょう、畑さんの声の響きがホール内を回ってきているようです。 なんとなく声の輪郭がはっきりしない部分も感じましたけど、それでも凛として端正な歌唱は感じ取れました。 しかも「楽に寄せて」では充分にドラマティック。 久しぶりに畑さんの歌唱を堪能した感じです。
またピアノの音がタントンと響いていたのも印象的でした。 この響き、ベートーヴェンが使っていたピアノを弾いたCDを持っていますけど、それにも似た朴訥とした響きです。 残響が少ないぶん可愛らしくもあって、何よりも端正な畑さんの歌によくマッチしていたようでした。 いいものを聴かせていただきました。

暗転。 ピアノは大人二人でヨイショって持ち上げて台車に乗せて運ばれてゆきます。 替わっ指揮台が運び込まれました。 オケメンバーも出てきて、気づいたら舞台の両袖には譜面台が置いてあり、ここにも左側にはホルン2名、右側にトロンボーン3名とトランペット3名が登場。 オケは14型でしょうか。 全員が揃ってチューニングして準備完了。 いつものように大きな歩幅でゆったりと藏野さんが登場。 ちょっとお疲れな感じにも見えたのは気のせいでしょうか。

祝典序曲。 よく揃って絢爛たる演奏でした。 特に舞台袖に並んだブラスも加わるとホール全体が祝賀ムードに包まれた感じになりました。
冒頭の輝かしいファンファーレに中低弦が芯になったアンサンブルが絡みます。 きちっとした感じで少々堅さも感じた始まりです。 クラリネットが滑るような艶やかな響き、フルートも巧かった。 音楽はスピードを増し、トロンボーンを勇壮に響かせたあと藏野さんも半身に構えて音楽を大きく盛り上げてゆきます。 左右のブラス別働隊も加わると、ホールは祝賀ムード一色のよう。 煌びやかな響きがホールの中を舞っているみたいに感じます。 さらにオケはスピードを上げ、ティムパニが激しい連打で更に盛り上げて全曲を纏めました。 
華やかで絢爛たる演奏で全体的にストレートにぐんぐんと突き進んだ感じを受けた演奏でした。

舞台袖の別働隊は退場。 代わってファゴットが入場してきてエルガーのエニグマ変奏曲。 こちらはよく練りこまれた重厚でかつウェットな響き。 ぐいぐいっと進んでいって聴き応えも充分でした。 英国音楽って勝手にウェット感が大切、なんて思っているのですけど、それがよく出ていて満足しました。 素晴らしい演奏でした。

主題、しっとりとした感じで始まります。 先ほどまでのストレートさは影もありません。 ゆったりと進みます。 とてもいい感じ。 第1変奏、フルートの響きで明るくなります。 チェロを中心にした充実した弦の響き。 ホルンも遥かな感じがよく出ていました。 第2変奏、藏野さんは淡々と振っていますけどとても緻密な音楽が押し寄せてきた感じ。 第3変奏、木管と弦がよく合っていて音楽が息づいていました。 しかも深み感じさせる力強さが素晴らしい。 タメのある弦楽器の合奏も見事でした。 第4変奏、ティムパニの響きが深く強靭な響き、ブラスもよく揃っていて、ここでも残響を響かせて切り落とし。 第5変奏はゆったりと高らかに歌う木管楽器が見事でした。 第6変奏、ヴィオラのソロもしとやかでロマンティック。 チャーミングで暖かい音楽が素晴らしい。 この第5・6変奏が中盤でとても充実した部分ではなかったかな。 第7変奏、よく揃ったスピード感のある演奏。 第8変奏、チェロのソロが甘く切ない。 第9変奏は、オケ全体がしっとりとした音楽でしみじみとさせます。 第10変奏、木管の響きがチャーミングですけどしっとりとしてしみじみとした感じ。 トランペットも柔らかくて素敵です。 第11変奏、音楽が徐々に大きくなり、力強くなりますけど響きに粘りがあります。 ウェット感のある合奏。 第12変奏、チェロのソロは端正に纏めましたけど、オケの響きはここでもウェットな感じがよく出て、粘りのあるものでした。 第13変奏、クラリネットで明るくなりますけどここでは端正な曲づくりで音楽をまとめながら徐々に音楽を大きくしたあとしっとりとまとめます。 第14変奏、スピード感をあげてゆきますけど、底鳴りのするような音楽は湧き上がってくるみたい。 曲はだんだんと高潮してきて、最後は大きく歌い上げて堂々のエンディングを形成しました。
どこの場面をとってもとても聴き応えのある演奏で、大いに満足しました。 とても素晴らしい演奏でした。

20分の休憩のあとメインのシベリウスの交響曲第1番。 
各パートがとてもしっかりとしていて、力は篭っていても端正な感じのする演奏でした。 北欧調を醸し出した演奏だったでしょうか。 よく纏まった巧い演奏なのですけど、個人的にはもっと燃える演奏が好きなのです。 終楽章は個人的にはちょっと欲求不満でしたけど、外れているとか合っていないとかではなく、趣味の問題なので許してください。 失礼な言い方かもしれませんけど、下手でもいいからハッチャキに燃えても良かったのでは、なんて生意気にも思ってしまいました(すみません)。 でも、演奏終了後の長い沈黙を破って真っ先に拍手したのは僕です。 たぶん。 とにかく難しい曲なのにとてもよく纏まった演奏は立派でした。

第1楽章、低いティムパニのトレモロのしみじみと感じ入るクラリネット。 じっくりと聴き込ませるような素晴らしい開始でした。 第2ヴァイオリンがます透明感を持ち、第1ヴァイオリンがうねり、対向配置ならではの響きを味わいつつ曲は主題をゆっくりと進んでゆきます。 ブラスが入ると、綺麗に揃ったトランペットが右、タイトなホルンが左、太いトロンボーンが右奥と、いずれもピンポイント攻撃でダイナミック。 ブラスも対向しながら鋭く盛り上がったあと、さっと退いて木管楽器にバトンタッチ。 ピチカートも端正で全体がよく整っています。 ただ弦楽器がリタルダンドをかけるような場面、すっと過ぎていった感じ。 ここはもうちょっと粘りが欲しい気もしましたけど、これは欲張りでしょう。 緊張感は途切れることなく曲を進め、主題を力強く再現したあと最後はよく締まったピチカートで閉じました。

第2楽章、ゆったりとした開始。 ハープがしとやかに鳴っています。 幻想的で優しいヴァイオリン、木管の響きが素適でした。 ここでも弦楽器の対向配置の効果を楽しみました。 木管のアンサンブルが入って歌ったあと金管が入り曲が活気づいてきます。 この後の弦楽器の各パートがよく揃っていました。 叙情的に歌ったあと藏野さんは音楽にメリハリをつけながらクライマックスへと導きます。 頂点のシンバルはちょっと控えめに決め、端正なのですけど充分に力強さも感じる音楽で盛り上げていました。 そしてすっと退いて、またゆったりと叙情的に弦楽器を歌わせたあと、両手を横に開いてそっと音楽を終えました。

第3楽章、暖かさを感じるピチカートに、太く大きな響きのティムパニ、柔らかい木管とよく揃ったブラス、いずれもが有機的に絡み合って見事。 各パートが呼応しながら曲が進んでゆきます。 巧い。 また藏野さんも場面場面をハッキリと切るようにして曲を進めてゆきます。 主題が戻って、オケも一段と活気を増します。 ここまで来ると慣れてきたせいでしょうか、上手に纏めているのですけど少々物足りなくも感じてきました。 きちっと揃いすぎているせいでしょうか。 もうちょっとアレ球・クセ球で撹乱されるのを好むなんてのは聴き手のエゴなんでしょうけれど。

アタッカで入った終楽章。 弦楽器の悲しい旋律が湧き上がります。 一度そう思ってしまったせいでしょうか、ちょっと綺麗に纏めすぎのようにも思えるますけど、ゆったりと進んだあと中低弦に気合が入ります。 すると音楽が俄然活気づいてきます。 よく揃ったブラスが響き渡り、弦楽器全体に熱気を孕み、パーカッションも力強く纏めました。 いい感じです。 ヴァイオリンがゆったりと歌いはじめます。 ちょっとサラサラっとした感じかな。 ちょっと上品に歌っている、綺麗に纏めているのかも。 個人的にはもっと粘って欲しいところです。 音楽はまた熱くなりますけど、すっと退くとやはり上品な感じ。 ここまで来たらわき目も振ふらずにガンガン燃えて欲しいのが希望なのですけど、北欧調の爽やかさなのでしょう。 ガサツな人間なんでちょっとこのようなタイプは苦手(すみません)。 フィナーレはゆっくりと区切るようにし、残響をたっぷりと響かせたあと(よく揃っていて見事)、ぐっと盛り上げてから密やかなピチカートでそっと締めました。

藏野さんの手が下りても長い沈黙が続いたので、ちょっと耐え切れなくなり、パタパタと最初に拍手を贈りますと、1階席から大きな拍手が沸き起こって熱狂的なブラボーも飛び出していました。 個人的にはもうちょっと燃えて欲しかったように感じた部分もありましたけど、難しいこの曲をきちっと演奏した巧さは光っていました。

マリンバ奏者も加わってのアンコールはショスタコーヴィチの タヒチ・トロット。 「二人でお茶を」をショスタコーヴィチが40分でアレンジしたのだとか。 最初は、えっこんな曲だったかな、と思うようなアレンジからお馴染みのメロディが顔を出し、最後は頬が緩みっぱなしでした。 素適な演奏で、終演後のトイレの中でも誰かが口笛でメロディを口ずさんでいるほど。 アンコールが素適だった、というのは褒め言葉にはならないと思いますけど、やはり、終わりよければ全て良し。 明るい気分で家路につくことが出来ました。 ありがとうございました。