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奈良女子大学管弦楽団 第35回定期演奏会

清新で纏まりの良さ、隔世の感あり戻る


奈良女子大学管弦楽団 第35回定期演奏会
2004年12月5日(日) 13:30  奈良県文化会館 国際ホール

メンデルスゾーン: 序曲「フィンガルの洞窟」作品26
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64
ドヴォルザーク: 交響曲第7番 作品70

(アンコール)J.シュトラウス: ポルカ「狩」

独奏:山本光太(vn)

指揮:柴田 謙


若い指揮者(1974年生なので30才)と学生オケのフレッシュな演奏を楽しみました。 きちっと締まった演奏はとても清新。 気持ちのいい演奏会でした。
しかも、勢いだけで乗り切ったのではなく、抑えがよく効いています。 各パートの技量向上を強く感じますけれど、何よりオケ全体としての纏まりの良さが見事でした。
フィンガルの洞窟から、端正でとてもよく纏まった演奏。 句読点をしっかりつけた折り目正しい音楽といった感じ。 前半はちょっと堅さも感じたけれど、後半は伸びやかになってストレートに盛り上げました。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。 ソリストは京都芸大の3年在学中の山本さん。 冒頭こそ緊張からでしょうか、押さえがビビって不安定に感じた部分がありましたけど、すぐに挽回。 艶やかな音色で繊細に歌い、清潔な歌に酔いました。 フィナーレは伸びやかで高揚感もあり、今後を十分に期待させる才能を感じました。 またオケもしっかりした伴奏で見事なサポート。 リズム感よく盛り上げて聴き応えのある演奏に仕上げていました。 とてもいい演奏でした。
メインのドヴォルザークの交響曲第7番。 2000年のスプリングコンサートでも聴いていますけれど、全く異なる演奏内容に隔世の感を抱きました。 感激しました。 とにかく技量向上がすさまじい。 各パートともそうですけれど、何よりオケとしての纏まりを良さを強く感じました。 今回の演奏で個人的に特筆したいのはトロンボーンとホルンの響きかな。 パワーもあって響きをタイトによく抑えていますけれど、女性らしい(といってはいけないのかもしれませんけど)強い響きの中に柔らかな色香のようなものが感じられました。 これはちょっとない響きだったかもしれません。 充実感がありました。 もちろん木管楽器も清楚に纏めていて立派でしたし、弦楽器も中低弦が芯になった分奏も見事。 ティムパニも的確で全体の筋を通してました。 そして何より、先にも書いたとおりオケとしての纏まりの良さが演奏を引き締めていて、見事な演奏でした。
長く聴かせていただいていることもあるせいでしょう。 今回の充実した演奏には我が事のような嬉しい気分になってホールを後にしました。 お疲れさまでした。


ただし、ここまで巧く感じると、もうちょっと抑揚つけたり感情をこめて・・・なんていう欲求も出てきます。 だから音楽は難しいし楽しい。 そしてこの難しい部分は、指揮者の柴田さんへの要求になるように思います。

柴田さん、アンコールでは楽しそうに指揮台の上で踊って指揮されていましたけれど、本プロでは大きく足を開いて立って微動たりともしませんでした。 
あの足の開き方、弓道で弓を射る立ち位置での下半身にそっくりです。 高校時代に弓道をやっていたので分かるのですけど、あの立ち方で、太ももの筋肉を内側にぎゅっと絞ると下半身がぐっと安定します。 腰が据わった演奏はあの立ち方(下半身)からきているのだと思いました。

しかしその半面、どの曲もとにかくインテンポでぐいぐいと進めていったようです。 音量の変化も乏しかったように思います。 若い学生オケですから、変な小細工をせず、きちっと纏めることを最優先したとは思いますけれど、もうちょっと豊かな情感を込め、旋律を流して歌うような場面も欲しなぁと感じたこともありました。

とにかくオケは柴田さんの忠実に指揮に応えて充実した演奏でした。 若い指揮者と若いオーケストラのコンビによるフレッシュな演奏。 そのような意味でとても気持ちのいい演奏を楽しみましたけれど、今後更に期待したいと思い、あえて書いてみました。

さて前置きが長くなりました。 簡単に演奏会を振り返ってみます。

長男が朝からグズグズしていてスカウト活動に行きたくないと言い出し、長女も県立図書館に本を返却したいし奈良女の演奏も聴きたいからスカウト活動を休むと言い出しました。 結局、奥さんも含めて一家4人で演奏会にお出かけです。 

ホールには20分前に到着。 スプリング・コンサートを聴いた長女の話のとおり2階席は締め切られてました。 人数が少ないからでしょうか。 2階席最前列がお気に入りなんですけど仕方ありません。 久しぶりに1階席に入りますが、席をどこにしようか、ちょっと戸惑いました。 このホール、席によって音響的にムラがあるように感じています。 前のほうに歩いて行こうとしたら、長男が後ろがいいと言いうので、2階席の庇がかかるあたりに席を確保。 右側ブロックですけど、中央通路寄りに4人が並んで座ります。 S-30〜34。

最近オケ・メンバーの入場方法に注目しています。 定刻になって揃ってメンバーが出てくる整列入場か、そうではなく、三々五々ステージに集まり、思い思いに練習をするタイプかどうか。 奈良女オケは後者でした。 ステージ上にどんどん人が集まってきて期待感が高まってゆくのを感じながらパンフレットを読んで開演時間を待ちます。 
だいたい7割くらい入ったでしょうか。 コンミスが登場してチューニング。 指揮者の柴田さんが登場。 茶髪でやけに若い感じがします。 ジャニーズ系のイケメンかな。

フィンガルの洞窟。 端正でとてもよく纏まった真摯な演奏。 句読点をしっかりつけた折り目正しい音楽といった感じ。 前半はちょっと堅さも感じたけれど、後半は伸びやかになってストレートに盛り上げました。

明るめの音色で始まりました。 ちょっと音量大きめだったかな。 最初はヴァイオリンがやや手探りみたいな感じにも思えましたけど、割合淡々とした感じで曲を進めてゆきます。 木管楽器、トランペットも密やかに鳴ります。 豊かなチェロの合奏から、しっとりとしたヴァイオリンに移ったあたり、よかったです。 トランペットとホルンが艶を感じさせる響きに抑えを効かせてクライマックスへ。 タイトでよく締まった盛り上がりからすっと退いて、木管と金管が呼応します。 句読点をしっかりつけた折り目正しい音楽といった感じ。 クラリネットのソロ、しっとりとして巧かった。 そして裏でつけているホルンもまた素適でした。 フィナーレも端正に盛り上げてゆきます。 もうちょっと巻き込むような粘り気が欲しい気もしましたけど、艶ののったホルン、トランペット、重い響きのティムパニで高揚させ、最後はすっと音を放しました。

ヴァイオリンのメンバーが退場。 席をちょっと後ろにズラし、ソリストの場所を確保します。 オケは先ほどと同じ12型ですけど、コンミスが交代。 チューニングを終えると、ソリストの山本さんと、指揮者の柴田さんが登場します。 お二人とも若くてカッコイイ。 なんか世代が違うなぁという感じがまざまざと・・・
ところで山本さん、京都芸大の3年生在学中とのこと。  その山本さん、ちょっと緊張気味かしら。 オーボエに合わせてチューニングをしても、どことなく落ち着かない感じも見受けられました。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。 冒頭こそ緊張からでしょうか、押さえがビビって不安定に感じた部分がありましたけど、すぐに挽回。 艶やかな音色で繊細に歌い、清潔な歌に酔いました。 フィナーレは伸びやかで高揚感もあり、今後を十分に期待させる才能を感じました。 またオケもしっかりした伴奏で見事なサポート。 リズム感よく盛り上げて聴き応えのある演奏に仕上げていました。 とてもいい演奏でした。

第1楽章、豊かな響きでオケが走りだし、ヴァイオリンも艶のある響きで歌いますけど、フレーズの最後がちょっと決まらない。 緊張されているのでしょうか。 オケは堅い響きのティムパニが芯になって盛り上がります。 山本さん、ちょっと調子悪いなぁ、って感じでヴァイオリンを確かめていました。 これで改善されたのでしょうか、だんたんと調子が出てきて、繊細ながら若さを感じさせて、溌剌とした音楽に。 柔らかい木管楽器とヴァイオリンのソロが絡むあたり、余裕も出てきたようです。 とてもいい感じ。 主題のメロディを伸びやかに再現します。 オケも快調で、メリハリをきちんつけた音楽でサポート。 チェロとコントラバス、ティムパニがしっかりと曲を支えています。 カデンツァでは、艶やかな音色で繊細に奏でて、清潔な歌に酔いました。  これからが楽しみです。 最後はヴァイオリンとオケが呼応しあい、だんだんと速度を上げ、力の篭ったエンディングを形成しました。

第2楽章、優しい響きのファゴットを始めとする木管楽器の響きが持続。 素敵な始まり方でした。 ヴァイオリンのソロがこれを受けて繊細に入ってきます。 微妙にビブラートをかけて歌い上げているようで、しかもそのビブラートがとても爽やかな感じ。 清潔な美感を漂わせた演奏を堪能しました。 チェロとコントラバスのピチカートを芯にし、オケが力を増します。 ちょっとストレートではっきりした音楽つくりみたい。 オケにはもうちょっと歌って欲しいのですけど、これはちょっと欲張りすぎでしょうか。 さて、しっとりとした響きのヴァイオリンのソロに、クラリネット、ファゴット、フルートなどが柔らかく絡み、最後は弦楽器も加わってそっとこの楽章を終えます。

第3楽章、ヴァイオリンのソロが憂いを秘めたようにも感じる柔らかな響きで奏でます。 オケもそれに応えてしっとりとしたあと、抑えのよく効いた金管ファンファーレにタイトなティムパニ。 巧い。 ヴァイオリンのソロが艶やかに駆け出します。 リズム感もよくて、綺麗な響きです。 オケもそれに負けじとフルートやクラリネットが裏で綺麗に吹いて曲を盛り立てています。 めくるめくような華麗なヴァイオリンのソロが続き、音楽はどんどんと高揚してゆきます。 オケのヴァイオリンもよく揃っていますし、艶を感じさせる合奏。 全体として生気ある明るい響きでしっかりとしたサポートぶりが見事です。 フィナーレも艶やかなヴァイオリンとよく締まったオケが絡み合っての堂々の終結でした。 

15分間の休憩。 パンフレットを読み、中に入ったチラシを眺めてながら時間を過ごしました。 
来年の演奏会、京大オケ、阪大オケですか・・・これらの大学は僕が受験生だった頃、国立1期校と呼ばれていた国立大学です。 奈良女もそうだったはずです。 旧帝国大学を含め、いわゆる一流どころの大学がエントリされているのが1期校で、受験日は毎年3月3〜4日。
それに比して新制大学を集めたのが2期校。 受験は毎年3月23〜4日と、いずれも決まっていました。
懐かしいことではあるのですけど、何というのかな・・・ 国立1期校のオケの演奏会に伺うたびに、ホロ苦さ(劣等感みたいなもの)を未だに感じるのは我ながらなんとかならないかのかと思います。 18歳の魂は100までなのか。

さてメインのドヴォルザークの交響曲第7番。 2000年5月20日のスプリングコンサートでも聴いていますけれど、全く異なる演奏内容に隔世の感を抱きました。 感激しました。 とにかく技量向上がすさまじい。 各パートともそうですけれど、何よりオケとしての纏まりを良さを強く感じました。 今回の演奏で個人的に特筆したいのはトロンボーンとホルンの響きかな。 パワーもあって響きをタイトによく抑えていますけれど、女性らしい(といってはいけないのかもしれませんけど)強い響きの中に柔らかな色香のようなものが感じられました。 これはちょっとない響きだったかもしれません。 充実感がありました。 もちろん木管楽器も清楚に纏めていて立派でしたし、弦楽器も中低弦が芯になった分奏も見事。 ティムパニも的確で全体の筋を通してました。 そして何より、先にも書いたとおりオケとしての纏まりの良さが演奏を引き締めていて、見事な演奏でした。

第1楽章、明快な音楽の開始。 柴田さんの指揮、出だしがいずれもハッキリとした感じに思えます。 てらいのないというか、ストレートに明るい音で始まりました。 チェロとヴィオラが力を増し、ヴァイオリンが歌い上げます。 弦の分奏も決まっています。 もうちょっと巻き込むような粘りが欲しい感じもしますけど、そこは若さ、ストレートに盛り上がります。 この盛り上がり、トロンボーンとホルンの斉奏が素晴らしかった。 ここから先にも何度も出てきますけど、このトロンボーンとホルンが組み合わさった響き、またここに渋い響きのトランペットを加えても同じなのですけど、力強さの中にまろやかさが感じられて素適。 女性らしい(といってはいけないのかもしれませんけど)強い響きの中に柔らかな色香のようなものが感じられるのです。 ちょっとない響きのように感じました。 全体としては、柴田さんのリードによりインテンポで上手く纏めているといった感じでしょうか。 音量も十分にありますけど、きちっとした音楽でぐいぐいと進めていったようです。 フィナーレは力が篭り、トロンボーンとホルンを朗々と響かせ、ティムパニが重い響きでリードして頂点を築いたあと、そっと着地。

第2楽章、ゆったりと始まりました。 しっとりとしたピチカートに、優しく木管楽器が響きます。 湧きあがってくるような弦のアンサンブル。 ホルンの斉奏が柔らかく美しいのが魅力的。 自然な感じで盛り上がって熱く、すっと退いて優しいアダージョです。 ヴィオラとチェロがアンサンブルの芯になって歌い、音楽を豊かなものにしています。 今度はじっくりとした感じから句読点をはっきりつけた感じで盛り上げ、トロンボーンが響きます。 オーボエの可憐なソロのあと、甘いクラリネット、木管楽器も素晴らしい。 この楽章はじわっとした感じで終了。

第3楽章、弦の分奏がバッチリと決まっていました。 力強い中低弦にヴァイオリンの流れるような旋律が乗っています。 抑えが効いてシャープなトランペット。 音楽がぐいぐいと進められていったゆきます。 木管のしっとりとしたアンサンブルは元気な弦楽器にちょっと埋もれ気味だったかしら。 速度もちょっと上がってもいるようです。 このあたり単調な感じもちょっと受けましたけど、音量が上がると生気が漲ります。 中低弦が芯になってぐいぐいと。 ヴァイオリンも一所懸命に弾いていますけど、もうちょっとコクやタメが欲しい気も。 でも皆さん素晴らしく頑張っています。 力をこめてフィナーレを突き進み、最後はすっと音を放しました。

第4楽章、弾けるように入って、じっくりと力を溜め込みます。 音楽を絞り、音量を段々と増してリニアに盛り上がってゆきました。 感動的に盛り上げてゆくのですけど、どこか端正で冷静な感じもします。 ちょっとテンポは落としているでしょうか。 ティムパニが的確に要所を抑え、力をこめながら曲を端正に進めてゆきます。 テンポをズラす部分もすっと通り抜けました。 しっとりとさせてから、またじわじわっと盛り上がってゆきます。 インテンポでずんずん進めてゆくせいかしら、ここでもちょっと単調にも思える部分もありましたけど、トロンボーンとホルンがとてもいい響きで吹きますとワクワクします。 ホントちょっとないような感じの響きで、力強く端正な音楽に色香を添えています。 そして更にぐっと盛り上がって感動的なフィナーレ。 ここでは全員が一丸となっていました。 力強さで突っ走るのではなく、清楚さも失っていません。 そして最後は大きく音楽を歌わせ、スパっと全曲を締めくくりました。
ほんと、巧い演奏でした。 大きな拍手を惜しみませんでした。

アンコールは、ヨハン・シュトラウスのポルカ「狩」。 
休憩時間のときに、ドヴォルザークの交響曲では使わないスネア・ドラムなどを並べていたので、スラヴ舞曲でも演るのかな、と思っていましたけど。 いい意味で、裏切られました。 
演奏もまた、これまでのきちっとした端正な演奏からよく歌う演奏。 柴田さんも指揮台の上で踊っています。 こんな指揮もするんや・・・なんて思いつつ楽しませていただきました。
長く聴かせていただいていることもあるせいでしょう。 今回の充実した演奏には我が事のような嬉しい気分になってホールを後にしました。 いい演奏会でした。

蛇足ながら、一緒に来ていた我が奥さんも、以前聞いたときはヌルい感じがしたけど、今日は全然違ってよかったね、と言っていたことを付け加えておきます。