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紫苑交響楽団 第7回定期演奏会 |
緻密なアンサンブルが印象的(戻る)
紫苑交響楽団 第7回定期演奏会
2005年9月18日(日) 14:00 長岡京記念文化会館ボロディン: 交響詩「中央アジアの草原にて」
ブラームス: セレナーデ第2番イ長調op.16
シベリウス: 交響曲第5番変ホ長調(アンコール)シベリウス: 悲しきワルツ
指揮: 井村誠貴
緻密なアンサンブルが印象的な演奏会でした。
冒頭のボロディンの「中央アジアの草原にて」から、情感あふれる木管、抑制の効いた金管、そして透明感の高い弦楽器による見事なアンサンブルに心奪われました。 指揮者の井村さんも、いつもなら大きな動きでオケをリードするように思うのですけれど、オケに全幅の信頼を寄せているのでしょうね、出を指示する程度で淡々と曲を進めてゆきました。 それによって、かえって中央アジアの草原を渡る風を強く感じた演奏になっていたのではないでしょうか。 とても綺麗で素適な演奏でした。
ブラームスのセレナーデ第2番、こちらも柔らかな響きによる爽やかな演奏でした。 本当にアンサンブルが巧いですね。 でもここでは井村さん、動きを大きくして、押して引いて、とオケを動かして演出していたようです。 陰影の強い楽章、例えば第3楽章でも沈鬱で重苦しい感じではなく、明るさをも感じさせたのは井村さんの資質よるところでしょう。 若きブラームスの青春の曲、そんな印象を持ちました。
メインのシベリウスの交響曲第5番、緻密に構成された演奏でした。 井村さんの指揮は、より動きを増していましたが、ダイナミックに曲を動かすというよりも細かな指示を多く繰り出していたようです。 第1楽章で最初に盛り上げたあたり、斜めに構えた体を止めて右手だけを波打たせるような表情付け、オケもそれを見事に表現していました。 真摯なシベリウスとでも言えばいいかしら。 気迫も感じさせた演奏でもありました。 そして緻密なアンサンブルは最後まで崩れることなく、タイトで精密度の高いラストをバシっと決めて見事。 もうちょっと馬力が欲しい感じもしましたけど、緻密なアンサンブルが印象的でした。
簡単に演奏会をふりかえってみたいと思います。
紫苑交響楽団、いつも綺麗なチラシの入っているオケとして、これまでも興味を惹かれてはいたのですが、他の演奏会とブッキングして見送ってばかりでした。 今回、井村さんが指揮されるとあっては聴き逃すわけにはいきません。 長岡京へと向かいました。
しっかし暑かったですねぇ〜。 残暑というよりも夏、真っ盛りといった感じもします。 これで体調も思わしくなくなったのかな、なんとなく身体が熱っぽく、だらだらと汗をいっぱいかきながら最寄駅をスタート。 約1時間、大阪梅田に到着したころには電車の冷房で汗も引いて落ち着いたようです。 ここから阪急の特急で長岡天神まで更に30分。 ちょっとした旅行気分ですね。
長岡天神駅前にある銀行に寄り道し、ホールには開場約10分後くらいに到着。 2階席への階段を登りましたけど、1階の後方に出るのでした。 後ろから4列目の25列23番を確保して落着きます。 微熱感はもうありませんが、ゆっくりと他の演奏会のチラシをチェックしたり、プログラムを読みながら開演を待っていますと・・・楽器の音が・・・自由入場のようです。 5分前のブザーとアナウンスの声も練習の音で少々かき消され気味。 この時、オケが対抗配置なのに気付きました。 全員が揃い、コンミスが登場して入念なチューニングを実施したあと、足音がして指揮者の井村さんがゆっくりと登場。 いよいよ始まります。
ボロディンの「中央アジアの草原にて」、情感あふれる木管、抑制の効いた金管、そして透明感の高い弦楽器による見事なアンサンブルに心奪われました。 井村さんも、いつもなら大きな動きでオケをリードするように思うのですけれど、オケに全幅の信頼を寄せているのでしょうね、出を指示する程度で淡々と曲を進めてゆきました。 それによって、かえって中央アジアの草原を渡る風を強く感じた演奏になっていたのではないでしょうか。 実に綺麗な素適な演奏でした。
両手を前にして小さく振るというか、祈るような感じにも見えた開始。 オケから繊細な響きを導き出します。 透明感の高いヴァイオリンの響きに続き、クラリネットの素適な音色がホールに流れました。 素晴らしい開始ですね。 裏で吹くホルンも柔らかくて実に巧い。 演奏に何より安定感があります。 そして呼応しあう管弦楽となると、今度はコールアングレの甘くエキゾチックな響きに魅了されました。 各奏者の方も巧いけれど、アンサンブルとしても実によく纏まっています。 いつもならば大きな動きの井村さんですが、ここでは出を指示する程度、ゆっくりと、実にゆっくりと、そして淡々と曲を進めてゆきます。 全奏となっても、井村さんの手は上下に動く程度。 しっとりとしたヴィオラの響き、落着いて柔らかな低弦、透明感の高いヴァイオリンと、アンサンブルに変な色をつけず、オケの本来の響きの特質に全幅の信頼を寄せて進めているようです。 こちらはその音楽のゆったりとした流れに乗せられるのみ。 ただただ聴き進んでゆきました。 オーボエ、最後のフルートも密やかに吹いて彼方に消えてゆくような見事なエンディング。 中央アジアの平原を渡る風を感じた演奏でした。
いったん全員が退場。 お兄さんが一人だけ出てきて、イスや譜面台を並べて準備を整えます。 左右より団員の方が出てこられて着席。 ヴァイオリンは元から居ませんから、8-5-4 の編成が対抗配置で並びます。 これに2管の木管とホルン2本。 井村さんが出てきてチェロ・トップの方を握手して始まります。
ブラームスのセレナーデ第2番、こちらも柔らかな響きによる爽やかな演奏でした。 本当にアンサンブルが巧いですね。 でもここでは井村さん、動きを大きくして、押して引いて、とオケを動かして演出していたようです。 陰影の強い楽章、例えば第3楽章でも沈鬱で重苦しい感じではなく、明るさをも感じさせたのは井村さんの資質よるところでしょう。 若きブラームスの青春の曲、そんな印象を持ちました。
第1楽章、ゆっくりとなでるように振り、木管の柔らかなアンサンブルを導き出しました。 腕をやや大きく動かし、音楽を押して引いて、と井村さんらしく音楽を波に乗せてゆきます。 オケもそれによく応え、柔らかな音楽のまま推移します。 瑞々しいピチカート、明るく爽やかな音楽です。 どんどんと波に乗せていったみたい。 ファゴットの響きが素適でした。 最後はやや熱気を孕ませ、小さなバンザイをするように力を込めて終わりました。
第2楽章、やや力をこめてスタート、快活な音楽とします。 低弦のリズムが心地よく響くのですが、やわらかな音楽です。 華やいでもいるけど、しっとりとした落ち着きを忘れていません。 上質な音楽ですね。 またも柔らかなホルンの響きのあと、右下から左上に放り上げるように曲を閉じました。
第3楽章、ゆっくりとして沈鬱な感じを持たせた開始。 じっくりと曲を進めてゆきます。 低音弦が芯になっていますけど、押し出しが強くなくまろやかな感じ。 ホールの特性かしら、どの曲もコントラバスの人数が多いのに、グィグィと押してくるような感じがしませんね。 芯はあるけども実にまろやかな感じです。 井村さん、チェロに向って力を要求し、管楽器をしっとりと歌わせますが、心底暗い感じを受けません。 丁寧なアンサンブルで歌う感じかな。 なだらかに曲を進めて響きを纏めるようにして終えました。
第4楽章、軽く弾むような開始。 ここでも柔らかなクラリネットが素適に響きます。 中低弦の柔らかな響きを主体に、丁寧に音楽を歌わせながら進めてゆきます。 木管楽器が物憂げな響きを途切れがちに進めるトリオの部分、ここも柔らかく流れてゆきました。 やや単調に推移したように感じたのは気のせいかも。
第5楽章、ほとんど間をおかず、明るい音楽が始まります。 緻密な響きを集め、快活に盛り上げてゆき、すっと止めて、また徐々に力を込めてゆきますけど、上質なアンサンブルがよく決まっていますね。 軽くジャンプして華やいだ音楽に。 速度は上がった感じはしませんけど、上下に弾むようなリズム感を曲に与えます。 フルートとピッコロの響きが綺麗ですね。 要所を決め、また軽くジャンプ。 今度はすっと退かせて、落着いたホルンの響き、ピッコロを歌わせて最後は弾力を持ってふわっと着地して全曲を締めました。
気持ちのよい演奏でした。20分間の休憩。 またお兄さんが一人で後片付けを始めます。 ちょっと退屈になってきたのでロビーに出ましたけど、階段のガラス窓のあたり、陽が射し込んでいて、むわっと暑いですね。 やっぱり夏みたい。 持ってきたお茶を飲み、一息ついて座席に戻ります。 しばらくすると、木管の女性奏者の方が4〜5人出てこられて練習開始。 予鈴のブザーが鳴り、アナウンスのあたりから続々と自由入場されて、10-10-8-8-6 の編成として準備完了。 お客さんは約6割ってところでしょうか。 シベリウスの交響曲第5番がメインだからお客さん少ないのかな・・・
そのメインのシベリウスの交響曲第5番、緻密に構成された演奏でした。 井村さんの指揮は、より動きを増していましたが、ダイナミックに曲を動かすというよりも細かな指示を多く繰り出していたようです。 第1楽章で最初に盛り上げたあたり、斜めに構えた体を止めて右手だけを波打たせるような表情付け、オケもそれを見事に表現していました。 真摯なシベリウスとでも言えばいいかしら。 気迫も感じさせた演奏でもありました。 そして緻密なアンサンブルは最後まで崩れることなく、タイトで精密度の高いラストをバシっと決めて見事。 もうちょっと馬力が欲しい感じもしましたけど、緻密なアンサンブルが印象的でした。
第1楽章、ホルンの響きがすっと入ってくる上々の滑り出し。 ティムパニもそっと打ち、木管が絡んで素適です。 大きな腕の動きで抑揚をつけて進めます。 透明感の高い弦楽器の響きを導き入れ、ぐっと力を込め、ゆっくりと盛り上げて艶のあるトランペットもいい感じ。 緊張感は高いまま、なだらかに下がってゆきますが、斜めに構えた井村さん、右手の手の甲の部分を波打たせるようにして表情をつけていました。 緻密に曲を構築しながら進めてゆきます。 次第にまた高めてゆき、なだらかに下がってと、細心の注意を払いつつ進めますが、これにしっかりと応えるオケがまた見事ですね。
解決されないピークを何度か登ったあと、トランペットの輝かしい響きからぐっと溜め込んだ響きが軽やかに音楽となって流れ始めます。 チェロのピチカートもいい感じ。 軽やかで控え目な木管がとても爽やかです。 そしてまたも混沌とした感じに戻りますが、コントラバスのピチカートがズンズンと響き、緻密に曲を進めながら次第にリズム感を持たせ、走り始めました。 トロンボーンのタイトな響きもまろやかさを失わずにピークを形成、これをスパッと止めました。第2楽章、柔らかいのですけど芯のある締まったホルンの響き、ヴィオラのピチカートがしっとりとなった開始。 フルートを始めとする木管、弦楽器が呼応するようにゆっくりと進みました。 ホルンが力を漲らせて吹き、大きな音楽へと徐々に登りつめてから、息づいたピチカートで音楽を歌わせます。 軽いリズム感を持たせつつ曲を進めて、大きく抑揚つけて歌わせもします。 自在というよりも、よく考えて進めているといった印象です。 混沌とした響きからまたピチカートで息づかせたあと、オーボエの柔らかな音色で耳を洗わせ、最後はすっと潮が退くようにして終了。
第3楽章、ヴィオラの方を向いて軽く力を込めて振り始めると、柔らかなティムパニの打音とともに覇気を持ってヴィオラが走り始めます。 弦アンサンブル全体にこれが伝播、しっかりと纏まった弦楽アンサンブル、コントロールが行き渡っていますね。 今度は低弦に指示、しっかりした響きをベースに、ホルンの斉奏が雄大に響きます。 ゆったりと木管楽器を歌わせ、大きくゆっくりとうねるようにして曲を進めます。 これをすっと退いてまた緻密なアンサンブルとなります。 やや低弦は控え気味で、ヴィオラが芯になっているような感じかしら。 左右に振り分けられたヴァイオリンが効果的に鳴っていましたね。 柔らかなコントラバスのピチカート、ゆったりとした木管、弦楽アンサンブルを大きくうねらせ、徐々に力を溜め込んでゆきます。 柔らかく響かせたトランペットとトロンボーンが入りますが、じっくりと腰を据えながら曲を進めます。 ホルンも加わって徐々に力を漲らせてきたみたい。 まだゆっくりと粘りに粘って響きを溜め込むようにし、ティムパニのロールが入ってピークを形成。 ここ、もうちょっと馬力が欲しいような気もしましたけど、真摯に盛り上げ、タイトに締まった響きで集中力高く、気迫の篭もったタイトで精密度の高いラスト。 これをバシっと決めて見事でした。 全曲を閉じたのち、やや静寂のあと拍手に包まれました。
シベリウスのこの曲、実はあまり得意ではないのですけれど、充分に解決しないクライマックスといい、このラストの地味な勝利といい、どこかスッキリしない感じがぬぐえませんが、これがシベリウスらしいといえばそうなのでしょう・・・ね。 とにかくこの難しい曲を、見事なアンサンブルで真摯に聴かせた演奏に大きな拍手を贈りました。
なおアンコールもシベリウスの悲しきワルツ。
こちらはオケ持ち前の上質なサウンドを存分に動かした井村さんらしいダイナミックな演奏に心が晴れました。 たっぷりと抑揚つけて、聴かせる演奏でした。 この後のカーテンコールでようやく井村さんに笑顔が見えてなぜか安心。
それにしても巧いオケでしたね。 いずれも素晴らしい演奏に、気持ち良く家路につくことができました。 ありがとうございました。