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ソレイユオーケストラ 結成記念演奏会 |
清潔な響きが力を持って迫ってくる(戻る)
ソレイユオーケストラ 結成記念演奏会
2006年4月8日(土) 19:00 京都府立長岡京記念文化会館ショスタコーヴィッチ: 祝典序曲
J.シュトラウスII世: 「千夜一夜物語」より「間奏曲」
リムスキー=コルサコフ: 交響組曲「シェヘラザード」(アンコール)チャイコフキー: バレエ「くるみ割り人形」より「トレパーク」
指揮: 井村誠貴
同志社女子大学音楽学科卒業生による女性だけのオーケストラ、女性らしい柔らかでしなやかな演奏かと思いきや、集中力の高いキレの良い響きでぎゅっと締まった演奏に驚きました。
いわゆる同門の人たちが集まっているからでしょうね、纏まりの良さが目立っていました。 特に弦楽器では、弓の上げ下げが綺麗に揃っています。 しかも素早い切り返しでサクサクと曲を進めてゆくのが圧巻でした。 結成記念演奏会ということで気合も入っていたと思いますが、清潔な響きが力を持って迫ってくる、そんな感じがしました。
幕開けのショスタコーヴィッチの祝典序曲の冒頭から気合が漲っていましたね。 ぎゅっと引き締まった演奏にはキレがあり、最高潮の達しても響きの透明感が全く損なわれません。 オケとしてのポテンシャルの高さをよく示した演奏でした。 ただし座った位置が後方だったので、左右に振り分けられた別働隊の演奏によるステレオ効果を十分に楽しめなかったのは残念でした(自分のせいですけど)。
続いて演奏されたシュトラウスの千夜一夜物語から間奏曲。 この演奏も綺麗によく揃った弦のアンサンブルが特徴的でした。 一点一画を疎かにしない演奏姿勢に、中間部のゆったりとしたワルツの部分など、かえって伸び伸びと演ってもいいんじゃないか、などと感じたりもしましたけれど(生意気ですみません)。 とにかく気合の入った整った演奏に聞き入りました。
そしてシェヘラザード、この演奏もこれまでの演奏から十分に予想されたとおり、集中力の高い見事な演奏でした。 コンミスの野村朋子さんの独奏は、凛として輝きのある響きが魅力的。 綺麗な音色に魅了されました。 前半はインテンポで確実に進め、後半ではメリハリをつけて進めていたように思いましたが、いずれも常に縦の線を綺麗に揃えて進んでゆくオケの演奏には舌を巻きました。
ソレイユとはフランス語で太陽とのこと。 春の暖かな陽射しを想像していましたけど、北海道の真夏の太陽のように透き通った熱さを感じた演奏会でした。
簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。
休日とはいえ朝からドタバタと・・・しかも先週の演奏会の感想文を出かける直前まで書いていて、慌てて家を飛び出しました。 なんだか自転車操業みたいな感じですね。
それはともかく梅田で発車寸前の特急に乗ることが出来たので、開演30分前に長岡天神に到着。 暮れかかった長岡京の街を早足でホールへと向かいました。事前の情報では、お客さんが少ない、とのことでしたけれど、ホールに入ると既に6割位入っていたように思います。 両サイドの客席には入場禁止のロープが張られていましたが、最終的には8割位の席が埋まっていたのではないでしょうか。 よく入っていましたよ。
いつもどおり後ろから5列目ですが、中央右側の24列-23の席を陣取りました。 パンフレットを読んで開演を待ちますが、やはり学生や卒業生の方が多いようです。 あちらこちらで「先生に挨拶しないと」なんていう声が聞こえてきたりもしました。
定刻、左右からオケのメンバーが整列入場します。 最近はどこのオケでも女性が多いのですが、ステージいっぱいに女性だけのオーケストラは壮観ですね。 思わずのけぞりそうになりました。 なお弦楽器は 14-10-9-6-6 でしょうか、通常配置です。 あと祝典序曲の別働隊が両サイドの席の前方に出てきました。 ステージに向かって左側に Tb,Hr*2,Tp*2 右側には Tb*2,Hr*2,Tp という布陣です。 準備完了。 コツコツという足音を響かせ、ゆっくりと歩いて井村さんが登場して始まります。
ショスタコーヴィッチの「祝典序曲」、結成記念の祝典のためにピッタリの曲ですね。 しかもこの演奏、冒頭より気合が漲っていました。 ぎゅっと引き締まった演奏にはキレがあり、最高潮の達しても響きの透明感が全く損なわれません。 オケとしてのポテンシャルの高さをよく示した演奏でした。 ただし座った位置が後方だったので、左右に振り分けられた別働隊の演奏によるステレオ効果を十分に楽しめなかったのは残念でした(自分のせいですけど)。
うつむいていた井村さんが顔を上げ、両手を広げてさっと振ると、透き通るような綺麗な響きのファンファーレが流れます。 ティムパニが張りのある打音、続いて弦楽器も透明感の高い響きで曲を進めます。 輝かしい幕開けにピッタリ、そんな感じですね。
軽快なマーチを、爽やかな弦楽器、軽やかな金管と、井村さんはいつもよりも大きく身体を動かして纏めています。 そして、軽くジャンプなどしてリズムに乗せます。 テンポが速くなり、音量が上がってゆきますが、オケの響きの透明感が損なわれることはありません。 巧いオケですねぇ。
井村さんが客席を向き、別働隊が演奏に加わりました。 雄大な響きというのでしょうか、座っている位置が後方なんで、響きに囲まれて、という感じにならないのが惜しい感じ(これは自分の問題ですけどね)。 そして力のこもった熱い演奏としてエンディングを形成しました。
演奏後にかかったブラボー、掛け値無しですね。管楽器のメンバーの多くが退場(一部入れ替わった人もいたようですが)、ステージの後ろが広くなった感じですね。 次はシュトラウスの「千夜一夜物語」から「間奏曲」なんですが、パンフレットにこの曲だけ解説が無いことに改めて気付きました。
そのシュトラウスの「千夜一夜物語」の「間奏曲」。 この演奏も綺麗によく揃った弦のアンサンブルが特徴的でした。 一点一画を疎かにしない演奏姿勢に、中間部のゆったりとしたワルツの部分など、かえって伸び伸びと演ってもいいんじゃないか、などと感じたりもしましたけれど(生意気ですみません)。 とにかく気合の入った整った演奏に聞き入りました。
井村さんが大きく振って始め、大きな響きがオケから出てくるのですけど、これが実に爽やかな響きでした。 この後のホルンも軽やかに吹いて、気持ちが軽くなりますね。 弦のアンサンブルがとても綺麗です。 よく揃った弓の動き、見ていても綺麗に上下し清々しい感じ。
シュトラウスらしい中間部のゆったりとしたワルツ、マリンバの響きも加わって、ちょっと幻想的な響きを感じました。 棒を持たない井村さん、しっかりとリードしているようで、オケもまたそれに見事に応えているんですが、ここはもうちょっと緩めでもいいのでは、なんて(生意気にも)思えていまうほどでした。 皆さんとても気合入っているって感じですね。
金管やティムパニが入って、音量が上がりますけど、透明感の高い弦楽器を中心にしなやかな演奏、というか、ピンと張り詰めた強靭さも感じます。 一点一画をおろそかにしないぞ、そんな風にも思える集中力の高い演奏ですね。 曲が進み、ピークを形成したあと、最後は抑えて吹く金管の響きがちょっと乱れたような気もしましたけれど、最後まで張り詰めた感じのした演奏でした。20分間の休憩。 いつもは席でじっとしているのですけど、ロビーに出て、持ってきたお茶とドラ焼きで腹ごしらえ。 慌てて出てきたのでね。
さて定刻、メンバーが整列入場。 全員が揃ってチューニングが始まるのと同時に照明が落ちます。 準備が完了し、やはり足音を響かせながら井村さんが登場。 いよいよメインプロが始まります。交響組曲「シェヘラザード」、この演奏もこれまでの演奏から十分に予想されたとおり、集中力の高い見事な演奏でした。 コンミスの野村朋子さんの独奏は、凛として輝きのある響きが魅力的。 綺麗な音色に魅了されました。 前半はインテンポで確実に進め、後半ではメリハリをつけて進めていたように思いましたが、いずれも常に縦の線を綺麗に揃えて進んでゆくオケの演奏には舌を巻きました。
第1楽章「海とシンドバットの船」、トロンボーンとチューバの締まった響き、そっと木管を絡ませた綺麗な響きによる開始。 コンミスの野村朋子さんの独奏は、凛として輝きのある響きが魅力的です。 冒頭こそやや線が細いかな、なんて思いましたけど、清楚で綺麗な音色がよく響いてきました。 オケによる船出、ゆったりと進め、しだいに音量を上げてゆきますが、透明感の高い響きです。 チェロの独奏やホルンも端正な感じ。 可憐に響くヴァイオリンの独奏もあいまって、清潔な響きに満たされていますね。 座っている場所のせいでしょうか、オケのコントラバスの響きがあまり聞こえてこず、ヴァイオリンが強調されたように思えるからかもしれません。 でもオケとしての纏まり、一体感はほんと見事ですね。 最後はしっとりと響かせて終わりました。
第2楽章「カランダール王子の物語」、アタッカでヴァイオリンの独奏、もの哀しくも美しい響きに釘付けになります。 ファゴットは控えめな響きでしっとりと吹き、コントラバスの響きがそっと重なります。 オーボエは艶やかで豊かな響きです。 ハープ、フルートそして弦も重なり、しっとりとしたアンサンブルになりました。 ティムパニが入って力が篭りますけど、まろやかさに弾力を感じさせつつ演奏を進めます。
チェロの独奏も柔らかな響き。 トロンボーンとトラペットが甘い響きを聞かせたあと、弦楽アンサンブルがキレよく入ってきました。 スピードを上げても透明感は崩れません。 行進曲風のところも実によく揃っている感じです。 そしてまたタイトに力を込めても纏まりが良く、機動力の高さを感じさせます。 最後は、制動のよくかかった金管、引き締まったオケの響きでタイトに盛り上がたのをスパっと切り落としました。第3楽章「若い王子と若い王女」、これまでとはちょっと違って柔らかな弦のアンサンブルによって始まりました。 ゆったりと、柔らかな響きで曲を進めてゆきます。 クラリネットの甘い響きも素適。 チェロのアンサンブルもまろやかな響きで魅了させます。 ヴィオラと第2ヴァイオリンによるピチカートがしっとりと響き、これまでの機能的な演奏から叙情性を感じさせる演奏になったようです。
スネアが入り、クラリネットが甘く響いて惹きこまれます。 弦楽アンサンブルは円やかさを更に増し、ゆったりと慈しむよう。 トランペットが甘く響く柔らかな盛り上がり。 井村さん、ここでは抑揚をつけてゆっくりとオケを引っ張ってゆきますが、オケはそれにも生真面目な感じで丁寧につけてくるって感じでしょうか。 井村さん、大きく右手を上げてゆったりと盛り上げてゆきます。 端正なホルンの響きといい、とても清潔で綺麗な響きに満たされています。 最後は井村さんの左手がそっと掃うように動いて終わりました。第4楽章「バグダッドの祭り、海、船は青銅の騎士のある岩で難破、終曲」、井村さんが構えた動作をちょっと止め、オケの集中力を高めてから、タイトに締まった響きで始めました。 凛として深い響きのヴァイオリンの独奏。 井村さんのハナ息とともにすぐさまタイトに盛がります。 メリハリをつけた指揮に機動力のあるオケ、きちんと抑制のかかった弾力ある響きで応えていました。 井村さん、歌わせる部分などここでもゆっくりと引っ張ってゆくのですが、オケはやはり清潔で生真面目な感じですね。 しかし柔らかな響きの木管、素適でしたよ。 そして大詰め、すっと止めて力を込めて盛り上げてゆきます。 大太鼓の重量感のある響き、シンバルはタイトに響いてきます。 力を込めつつもゆっくりとした盛り上がりかた。 銅鑼の一撃はオケ全体の響きの中に綺麗に収って曲を収束させます。 凛とした弦のアンサンブル、柔らかな木管が加わり、しっとりさせた雰囲気のなかで、しなやかで艶のある可憐なヴァイオリンの独奏。 釘つけですね。 オケの柔らかな響きがすぅーと小さくなり、そっと全曲を締めました。
とにかくとても綺麗な演奏でした。 勿論迫力もありましたけどね、常に縦の線を綺麗に揃えて進んでゆくのが印象的でした。 各ソロも巧いですしね、見事なオケの演奏には舌を巻きました。
女性だけのオーケストラ、女性らしく柔らかでしなやかな、なんていうイメージに逆らうかのような芯の強い演奏ばかりだったと思います。 結成記念ということで、皆さん相当に気合が入っていたのではないでしょうか。 今後はもっと自由度の高い演奏も期待したいなぁ、なんて思ってみたのも束の間、会場を後に駅まで駆けて帰りました。 長女の塾のお迎えがあったんです。 奈良の最寄駅に10時までに着きたかったのですね。 僕のほうこそ、もっと余裕を持たないとダメみたいですねぇ。 いやはや。