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大阪大学交響楽団 第87回定期演奏会 |
ドライヴ感、真摯で熱い演奏(戻る)
大阪大学交響楽団 第87回定期演奏会
2006年7月17日(月・祝) 14:00 吹田市文化会館メイシアター・大ホールシューベルト: 劇音楽「ロザムンデ」序曲op.26
ベートーヴェン: 交響曲第1番ハ長調op.21
トヴォルザーク: 交響曲第8番ト長調op.88(アンコール)トヴォルザーク: 交響曲第8番第4楽章終結部の再演
指揮: 井村誠貴
奮闘する井村さんの指揮、いつもよりもよく動いた熱い演奏会でした。
ドヴォルザークの交響曲第8番、精度の高いオケがカチッと纏まった感じの演奏なんですが、気合の入った井村さんがオケをぐいぐいとドライヴしていったのが印象的でした。
いつもながら、しっかりとした低弦をベースにし、響きを重ねながら曲を進めてゆくのですが、色々な楽器の響きがきちんと聴こえてきて、かなり技量の高いオケだということが分かります。 しかし井村さん、このオケに対峙して、最後まで手綱を緩めることなく、緩急をつけ、メリハリを効かせ、オケをドライヴ。 これにより、ドヴォルザークを真摯で熱い音楽として展開、フィナーレを高らかに歌い上げて全曲を締めました。 熱い演奏でした。
この前に演奏されたロザムンデ序曲、ベートーヴェンの交響曲第1番もまた同傾向の演奏でしたが、ロザムンデ序曲では、やや強引に進めた感がありました。 重厚な響きと軽やかな歌の対比、メリハリが少々効き過ぎだったかもしれませんね。 またベートーヴェンの交響曲第1番は、要所に力を込めた恰幅のよい音楽となっており、軽やかさも失わず、歌わせもするのですけれど、流れを断ち切られるように感じた場面もありました。
これらの曲については、個人的に、軽やかな流れを期待していたことからそう感じたのですけれど、いずれもオケは抑制がよく効き、よく揃っていて巧かったですね。 ただし、少々律儀で真面目といった感じもしましたけれど。
それでも井村さんの手馴れたドヴォルザークでは、オケも井村さんの気迫に乗せられてしまったようです。 とても熱い演奏会でした。 堪能しました。
簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。
この日もまた午前中に仕事してからホールに向かいました。 が、いったん本町駅までもどって、地下鉄のホームで家族と待ち合わせ。 待ち合わせ時間を少々過ぎたころ子供達だけやってきて、奥さんは遅れてくるとのこと。 子連れで梅田に出てから、阪急電車で吹田に移動しました。
ホールには開演15分ほど前に到着。 奥さんの分のチケット1枚を取り置いてもらい、いつもの2階席への階段を上りました。 そ-33の席を確保。 中央通路後ろの足元の広い席ですが、中央は埋まっていたので、ステージに向かって右よりの一列を家族用として確保しちゃいました。 生憎の雨なのですけど、1階席は結構入ってますね。 最終的には全体で8割近く入っていたように思います。
開演予告のアナウンスのあと、オケのメンバーの方がパラパラと出てきて、適当に練習を始めます。 自由入場って感じですね。 弦楽器が 10-11-7-7-5 の通常配置で、全員が揃ったのちコンミスが出てこられ、チューニングをして準備完了。 井村さんがにこやかな表情でゆっくりと歩いて登場され、いよいよ始まります。
ロザムンデ序曲、メリハリをよく効かせた演奏でした。 ただし、重厚な響きと軽やかな歌の対比など、少々メリハリが少々効き過ぎだったかもしれません。 やや強引に進めた感じもしました。
ハナ息とともに、大きくぐいっとすくいあげるようにし、よく締まって重厚な響きをオケから引き出しました。 この開始、かなり気合入ってました。 オーボエがロマンティックな響きを奏でると、一転してゆったりと、撫でるように曲を進めたあと、また要所を鋭く決め、重厚さを戻します。 硬軟をはっきりと分かるような感じで切り分けた演奏ですね。 そんなメリハリを効かせながら曲を進めてゆきました。
軽やかな弦の旋律となりました。 木管楽器を明るくなだらかに歌わせ、軽快に走り始めますけれど、まだ少々硬い感じがするのはオケの体質でしょうね。 井村さん、また少々強引に引っ張って重厚な響きでメリハリをつけます。 そして終結に向かって曲を進めます。 軽快な部分では、井村さんがいつもどおりの軽いジャンプをするのですけれど、そのジャプ姿が少々型にはまった感じに見えたりもするのは、オケがなかなか乗ってこないからでしょうね。 とにかくフィナーレ、力強く熱く振って曲を閉じました。いっそのことルバートとポルタメントをたっぷりと効かせた演奏にしたならばメンゲルベルク/ACOの演奏に近くなるのかな〜 なんて、なんとなく思って聴いていました(長く聴いていませんけれど)。
いったん全員が退場したあと再入場。 今度は、弦楽器が 10-10-6-6-5 の編成となりました。 リーダもコンミスよりコンマスに交代。 チューニングを終えて、準備完了。 今度はベートーヴェンですね。
ベートーヴェンの交響曲第1番、恰幅のよい音楽でした。 要所に力を込めていますが、軽やかさも失わずに歌わせることも忘れません。 こちらもメリハリのよく効いた音楽でしたけれど、やはり少々ぎこちなくも感じました。 音楽の流れを断ち切られてしまったように感じた場面もありましたし。 個々のパートは本当に巧いし、合奏も緻密でいいなぁ、なんて思うのですけどね。 全体を通して聴いた感想としては、そんな感じを持ちました。
第1楽章、やわらかく弾けるような響きでの開始。 この横に広がった響きを徐々に集中力を高めて集約してゆくような感じで曲を進めます。 そして要所をキリっと引き締めました。 オーボエとフルートの響きが綺麗でしたね。 メリハリをつけながらも、各楽器を歌わせ、重厚さも醸し出したりと、どことなくロマン派の香りがする音楽じゃないかと思ってみたり、面白かったですよ。 ただし、少々強引にオケを引っ張っているせいなのか、音楽の流れが時に断ち切れるような印象を持った場面もあったのが残念でしたけれど。 とにかく弾むように歌ったあと恰幅の良くこの楽章を終えました。
第2楽章、第2ヴァイオリンのしっとりとした響き、これが他の楽器にも引き継がれ、とても艶やかな音楽になりました。 相変わらずオケは統制がよくとれています。 巧いオケですね。 緻密に響きを組み合わせた音楽が、チャーミングでもあります。 でも少々律儀な感じかな。 言葉は悪いですがクソ真面目というのかもしれません。 演奏は巧いけど、だから何なの・・・な〜んて思えたりもするんですね。 あとティムパニの音が少々大きくてハリのある響きだったのがちょっと異質にも感じた楽章でした。
第3楽章、徐々に音量を上げてぐぃっと力を籠めます。 ここでもティムパニが目立ってました。 井村さんは踊るように曲進めます。 弦楽アンサンブルが実によくまとまった響きで応えてきたのが印象的。 各要所は重厚な感じで決めて、最後はそっと止めました。
第4楽章、ハナ息とともにティムパニの一撃。 このあとヴァイオリンの方を向いて軽やかな旋律を導き出しました。 歌うように曲を進め、金管楽器の抑制をよく効かせつつ、音楽を走らせます。 低音弦がよく纏まっている音楽は、耳にしていると落ち着いて心地よいですね。 井村さん、更にそんな低音弦に指示を出してまた力を要求、リズムもつけます。 中音弦もまた充実してましたよ。 だからこそ高音弦が軽やかに歌えます。 フィナーレをぐっと引っ張り、ホルンが控えめながらもタイトに吹いて決めてカッコ良かったな。 凝縮した響きによるエンディング、この最後の音をふわっと抜くようにして着地。 全曲を閉じました。
この曲については、個人的にはオケが巧くても恰幅よかったり、ぎゅっと締まった演奏は敬遠気味なのでして(コンビチュニー/LGOやショルティ/CSOなどがダメなのです)、流れるような演奏(例えばブロムシュテッド/ドレスデンあたりの演奏)が好きなんですね。 皆さん一所懸命なのは分かるのですけど、そんなことからイマイチしっくりくるような感じにはなれませんでした(すみません)。
20分間の休憩。 休憩時間もコントラバスの方たちがステージで練習されてました。 予鈴ブザーの前にはいったん退出されましたが、その後また皆さん三々五々集まってこられ、弦楽器の編成が 11-12-9-9-8 に。 コンマスがチューニングを行って準備完了。 ちょうどそのとき、我が奥さんが遅れて到着しました。 席に招き入れた直後、井村さんが登場されて始まりました(滑り込みセーフ)。
ドヴォルザークの交響曲第8番、精度の高いオケがカチッと纏まった感じの演奏でしたが、これまでの演奏と少々違った熱い演奏でした。 気迫の篭った井村さんがオケをぐいぐいとドライヴし、オケも真摯で熱い演奏として応え、曲を展開していったようです。 しっかりとした低弦をベースにし、響きをきちんと重ねながら曲を進めてゆくのですが、井村さんがオケの前に立ちはだかるかのように対峙。 いつもよりも、より大きく動いていたのが印象的でした。 そして最後まで手綱を緩めることなく、緩急をつけ、メリハリを効かせ、オケをドライヴ。 フィナーレでは高らかに歌い上げ、集中力の高い素晴らしい演奏として締めくくって熱い演奏としていました。
第1楽章、大きくすくいあげるように、大きなうねりをもった音楽として開始。 テンポをやや遅めにとっているでしょうか。 フルートが爽やかに吹き、しっとり、ゆったりとした感じ。 井村さん、徐々に活気をつけますが、最初のクライマックスでは唐突な感じで盛り上げ(ちょっと吃驚)、そしてピークを形成したあとはすっと退きます。 身体を前後に大きく動かし、ヴァイオリンの旋律をうねらせ、雄大で力強い音楽としました。 素敵ですね。 金管も抑制効いていい感じです。
テンポを落とし、曲をうねらせるようにゆったりと進めたあと、またタイトなクライマックス。 ヴァイオリンにもっと力を入れるようにと要求します。 コントラバスがしっかりと曲を支えているため、熱い音楽ながら、とてもしっかりとした感じです。 締まった響きの演奏で一気に盛り上げ、最後の音は力をすっと抜くようにして着地しました。第2楽章、気合のこもった演奏だったせいかちょっと長めのインターヴァルをとってから、柔らかく構えて始まりました。 大きくゆったりと振り、ふわりとした音楽がスタート。 ここでもフルートとクラリネットなど木管楽器が美しく、しっとりと奏でていましたね。 ティムパニが入り、ヴァイオリンが力強く張りのある響きで入ってきました。 オーボエの響きはボヘミヤの風景でしょうか。 萎びた感じで歌わせます。 軽やかなながら、張りと艶のある弦楽器の響き。 低音弦にホルンが裏打ちする響きもよく聴こえてきます。 ホント、精度の高いオケですね。 色々な楽器がとてもよく聴こえてきますものね。 独奏ヴァイオリンも凛としてますが艶やかな感じでした。 井村さんが大きな息遣いによる恰幅のいい音楽として曲をうねらせながら進行させます。 やりすぎるとクサくなりそうな感じなんですが、オケが巧いのせいでしょうね、真摯な感じで伝わってくるから不思議です。 そっとトランペットが吹き、静かにこの楽章を止めました。
第3楽章、井村さん、さっと身を翻すようにしてヴァイオリンの旋律を歌わせます。 そして大きな身体を動かして抑揚を付けたワルツ。 想いをたっぷりと籠めた音楽です。 オーボエの旋律がここでも朴訥とした響きで届けられました。 リードの調子が悪いのかもしれませんが、ひっそりとした感じは悪くありません。 ゆったりと流れるように曲を進め、まるでビロードのような響きが聞き手の気持ちを開放してくれます。 艶やかなヴァイオリンの旋律が戻り、またゆったりと歌わせたあと、快活なトランペット、木管アンサンブルを経て柔らかな響きで着地しました。
第4楽章には勿論アタッカで突入。 明るく美しいトランペットのファンファーレがとても素晴らしかったですね。 そして、ゆったりと歩みを進めるようにしてチェロが旋律を奏でます。 後方よりコントラバスがそれを支えているのがいい感じ。 ヴァイオリンが入ると音量が増しますが、低音弦が常に芯。 腰の据わった音楽です。 急激な盛り上がり、それもすっと退きました。 フルートの爽やかな響きの後ろで、チェロのピチカートのなんと瑞々しいこと。 このあと畳み掛けるようにぐいぐいオケを煽って盛り上げる井村さん。 チューバやトロンボーンの艶の乗った響きが聴き応え十分で、とてもカッコ良かったのも印象的でした。
響きを鎮め、たゆたうような変奏となります。 中低弦がここでは主役かしら。 クラリネットやファゴットも牧歌的に響かせて、しみじみとした音楽に。 このあとハナ息を伴って急速に盛り上げたコーダ。 集中力をより高め、ストレートに駆け抜けて、井村さんの右手が高く上げられて全曲を閉じました。会場内より熱い拍手が沸きあがりましたが、井村さん、オケの方を向いたまましばし動かず。 ようやく振り返ると更に一段と大きな拍手になりました。 とても熱い演奏でしたね。
2005年10月29日には、京都三大学合同交響楽団の定期演奏会でもこの曲を井村さんの指揮で聴いていますが、このときはドラマティックな演奏で、終楽章のフィナーレでホルンをベルアップさせていましたが、今回のこの演奏会ではベルアップはなし。 とにかくオケの性格がかなり違っていて、こちらは基本的には中低弦を芯にしたオーソドックスな纏め方になりそうなところを、半ば強引に井村流の解釈で押し切った、そんな感じがしました。とにかく熱い拍手が鳴り止まず、終楽章のフィナーレ部分を再演。 ようやく本割とは違ってリラクッスした演奏を聞かせてくれました。 纏まり具合は良くなくても、こちらのほうが楽しく演っているというのがバンバン伝わってきた演奏でした。 時と場合によりますが、アマオケではこおいうのが基本的に好きなんですよね。
ま、色々と書きましたが、とても熱い演奏会を堪能させていただきました。 皆さんお疲れ様でした。