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関西学院交響楽団 第108回定期演奏会

ドラマティックで濃厚な演奏戻る


関西学院交響楽団 第108回定期演奏会
2007年2月12日(祝・月) 18:00  尼崎アルカイックホール

リムスキー・コルサコフ: 歌劇「皇帝の花嫁」序曲 (*)
ボロディン: 交響曲第2番ロ短調
プロコフィエフ: 交響曲第7番嬰ハ短調 op.131

(アンコール)チャイコフスキー: バレエ曲「白鳥の湖」より「乾杯の踊り」

指揮: 井村誠貴、平田將明(*、学生)


ボロディンの交響曲第2番とプロコフィエフの交響曲第7番、濃厚でドラマティックな演奏に驚きました。

ボロディンの交響曲第2番、ギリギリにまで引絞った弓で矢を放つかのような張り詰めた響き、しかも重量感たっぷりの濃厚な開始、否応無く曲に引きずり込まれました。 中低弦が芯になった弦楽器を大きくうねらせながら、美しい木管の響きを散りばめ、渋く底鳴りのする金管など、若い血が迸るような演奏に終始唸っていました。

そして、プロコフィエフの交響曲第7番。 あまり聴かない曲なので簡単に予習をしてから出かけたのですが、もう全く印象が違ってました。 憂いをたっぷりと含んだ第1楽章、こんなにも濃厚な曲やったっけ・・・。 ここでも低弦が芯になってドラマティックに曲を展開。 後半、明るさが見えて高音弦が歌い、木管も綺麗に響いていたのにも懐かしい感じがし、まさに青春(を回想する)交響曲。 力の漲らせてアタッカで入った終楽章のカラフルな演奏にも目を見張りました。 とにかくいずれの曲も大きな呼吸をし、オーケストラも奮闘した見事な演奏に感激しました。

また冒頭の学生指揮者・平田將明さんの指揮による R.コルサコフの歌劇「皇帝の花嫁」序曲も堂々とした見事な演奏でした。
平田さん、パンフレットにも書かれていますが演奏旅行では「本当に学生指揮者?」言われるほどの堂々とした指揮ぶり。 艶やかに巧く纏めた弦楽器、落ち着いた木管、渋く響かせてパワーを持たせた金管、恰幅の良さを感じました。

ということで、簡単に言うならば、濃いぃ〜演奏会でした。
正直、連休最後の夜の演奏会なので、翌日の仕事のことなど考えて少々億劫だったのですが、素晴らしい演奏の数々に元気を頂きました。 皆さんありがとうございました。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

3連休とはいえ、初日は出張先より夕方に帰宅。 この日も昼から休日出勤して仕事をしてましたが、夕方に会社を抜け出して尼崎に向かいました。

このところ夜の演奏会はちょっと苦手です。 土曜日ならまだしも、翌日の仕事のことを考えると・・・正直なところ億劫なんですね。 もうこれは歳のせいでして・・・ ゆっくりとしたい、とか、お昼だったらよかったのに、なんて思ってしまいます。 でもなかなか聴くことの出来ないプログラムですし、井村さんの指揮とあってはパスするわけにはいきません。 開演20分ほど前にホールに到着。 ロビーに井村さんが立っておられましたね。 演奏前のお客さんの雰囲気を確かめておられるようです。

さて、ホールに入るといつもの2階席に。 中央より右ブロックの最前列 3-37 に落着きました。 ここは足元がグンと広く、見晴らしもいいのですね。 最終的には1階席はほぼ満席になったようですが、この時点では7割ほどかな。 連休最後の夜だから出足が遅かったのかもしれません。 2階席など2割程度ですものね。 これでは卒団生の方にはちょっと可哀想やな、なんて思ったりもしてました。

定刻、ホール内の照明が落ちてステージが明るくなり、両サイドよりメンバーが整列入場します。 弦楽器の編成は、14-12-10-10-7 の通常配置ですね。 コンミスが登場し、チューニングを実施して準備完了。 そして堂々とした足取りで学生指揮者の平田將明さんが登場。 場慣れしているというのかな、体躯もあるからでしょうか、プロでもこのような落ち着ついた雰囲気はなかなか醸し出せないんじゃないかな、なんて思えるような空気を持って登場しました。

R.コルサコフの歌劇「皇帝の花嫁」序曲、棒振り姿もまた落ち着いていて、じつに堂々とした指揮ぶりに感服しました。 学生指揮にありがちな、いわゆる体操指揮ではなく、半身に構えてサラっと流してみたり、パンフレットにも書かれていましたけれど演奏旅行では「本当に学生指揮者?」言われるのも納得。 もちろん音楽もまた堂々として見事でした。

弾力を持った響きによる開始から、堂々と曲を進めます。 金管楽器が渋い響きでよく締まってますし、弦楽器は艶やかに鳴っています。 そして低弦のピチカートもまた心地よく届けられ、余裕を感じさせる手馴れた曲運びといった感じ。 とにかく安心して楽しめます。 そして曲もまた一段と力を込めて進めて、悠然とした感じがよく出てます。 指揮も巧いがオケもまた巧い。
ハープが入り、柔らかな弦楽器も濡れるよう。 第2ヴァイオリンやヴィオラがしっかりとしていて安定した曲の運び。 いいですねぇ。 そして、クラリネットを始めとする木管楽器、その落ち着いた響きがホールに消えていって終了。 うん、巧い! 心の中でそう言って大きな拍手を贈りました。 指揮者の統率力も抜群、恰幅の良さを感じさせた素晴らしい演奏でした。

暗転し管楽器メンバーの半分ほどが入れ替わったでしょうか。 今度の編成は 16-14-12-10-8 と少し大きくなりました。 準備が整い、交代したコンマスによるチューニングを実施。 そして井村さんが登場するとコンマスの肩を叩いて何やら一言二言、にこやかに声をかけてから客席に向かって一礼。 指揮台に登壇して、さあ始めるかと思ったら、譜面台の高さが合わないようです。 高さ調整をし、集中力を高めてから始まります。

ボロディンの交響曲第2番。 ギリギリにまで引絞った弓で矢を放つかのような張り詰めた響き、しかも重量感たっぷりの濃厚な開始、否応無く曲に引きずり込まれました。 中低弦が芯になった弦楽器を大きくうねらせながら、美しい木管の響きを散りばめ、渋く底鳴りのする金管など、若い血が迸るような演奏に終始唸っていました。

第1楽章、井村さんの腕が徐々に広がって力を溜め込んでゆき、これが弾けるように開始した冒頭のユニゾン、物凄い響きに驚きました。 凄い迫力、オケが落ち着いているので安定感も抜群。 ティムパニの硬い一撃もアクセントになっていて、否応無く曲の中に引きずり込まれました。 豊穣な響きで、若さもはちきれそうな感じ。 オケも巧いですねぇ。 井村さんがまた緩急つけてぐぃぐぃと引っ張ってゆきます。 これにオケも見事に応え、中低弦の引き締まった響きが芯になり、軽快な木管楽器を挟み込みながら、ドラマティックな濃い演奏として推し進めて締めくくりました。 この曲ってこんな濃いぃ曲でしたっけ、というのが率直な感想。

第2楽章、ここでも力のこもった和音による開始、低弦ピチカートと陽気な木管楽器が歌います。 ここもまた濃いぃ音楽ですね。 トライアングルは静かに入って、中間部ではゆったりと木管を歌わせます。 高音弦もゆらめくよう。 そしてまた冒頭の狂想的な旋律を戻し、力を込め、リズムに乗せて進めたあと最後は歌うようにふわっとした着地でした。

第3楽章、ハープとクラリネットによる柔らかな開始のあと、ホルンが味わい深い響きで歌います。 オーボエからゆったりとした木管楽器による旋律が移ってゆきます。 このあたりちょっと乱れたかもしれませんが、気になりません。 ハープ、ホルンそして弦楽器が物憂い表情で入ってきます。 ゆったりとした呼吸をもって曲が進みます。 ここでも指揮台から一直線になった中低弦が芯になってますね。 そして大きくうねらせるようにしながらドラマ性を強く感じさせる盛り上がり。 このあたりの濃さも井村さんらしい感じですね。 そして静かに終息してゆきました。

第4楽章、アタッカで入ります。 高音弦のトレモロをシンコペーションさせ、華やかな開始となります。 軽やかに進めてますが、要所の力こぶを作ってなめらかな移行。 クラリネットが好演ですね。 そしてまろやかな強さを持ったトロンボーンとチューバが入り、中音弦が走り始めます。 全奏となって力を込め、集中力を高めた盛り上がり。 若い力が迸り、息づいたクライマックスに聴き手もわくわくとしてきました。 そして更にぐぃぐぃと盛り上げてゆき、華麗な音楽としたあと、すぅっと力を抜くように締めたエンディング。 ん? といった感じで、少々唐突に終わった感もしましたけど、潔い終結といったところでしょうか。
とにかくドラマティックな音楽を堪能しました。

15分間の休憩。 席で大人しくして開演を待ちます。 客席が随分埋まってきましたね。 1階席は満席に近い感じですし、2階席も4割くらい入っているのではないかな。
定刻になり、やはり照明が落ちてメンバーが整列入場します。 今度の編成は、16-14-12-12-8 ですね。 コンミスが登場してチューニングを実施して準備完了。 井村さんも登場、コンミスと握手し、一礼して始まります。

プロコフィエフの交響曲第7番。 あまり聴かない曲なので簡単に予習をしてから出かけたのですが、もう全く印象が違ってました。 憂いをたっぷりと含んだ第1楽章、こんなにも濃厚な曲やったっけ・・・。 ここでも低弦が芯になってドラマティックに曲を展開。 後半、明るさが見えて高音弦が歌い、木管も綺麗に響いていたのにも懐かしい感じがし、まさに青春(を回想する)交響曲。 力の漲らせてアタッカで入った終楽章のカラフルな演奏にも目を見張りました。 とにかくいずれの曲も大きな呼吸をし、オーケストラも奮闘した見事な演奏に感激しました。

第1楽章、ピアノの一音、第1ヴァイオリンが物憂げな旋律を歌い、底力のある低弦などがそれを追いかける分奏が展開する見事な開始。 木管やホルンの響きもオケ全体の響きにマッチして渋く響き、大きな呼吸をもってオケ全体が進みます。 正直こんな重い曲やったかな、と感じました。
シロフォンの響き、フルートそしてクラリネットが入って少々明るくなりますが、引き締まった低弦の響きに艶が感じられて耳がそっちにゆきますね。 おどけたような旋律なんですが、ここでも音楽がゆっくりと呼吸し、進んでゆきました。
主題が戻り、高音弦の愁いを感じさせる響きにじ〜んときます。 木管が絡み、ホルンが吹き、ゆったりとしたドラマティックな音楽です。 最後はフルートのしみじみさせた響きでそっと終わりました。

第2楽章、弦楽器をそっと歌わせるような序奏、スネアが入って低弦に乗った弦楽アンサンブル、そしてホルンの響きがまた渋い。 ふわふわっと浮くような感じもするワルツなんですが、要所に力を込めながら、一筋縄ではいかない感じ。 不意に色々なメロディは飛び込んできては絡み合って進みます。 木管楽器が巧いですねぇ。
抑揚をつけて歌うように音楽を進めるあたりオペラ指揮者としての井村さんの特質がよく出ているような感じです。 オケもそれによく乗ってつけています。 力を増し、朗々と歌うトランペット、力感のあるトロンボーンとチューバ、弾力ある打楽器を交えつつリズム感よく盛り上げ、ぎゅっと集中させてこの楽章を終了。

第3楽章、チェロの方を向いた井村さんが振ると柔らかな綺麗な響きが流れ出てきます。 木管楽器がここでも美しく歌って寄り添います。 コールアングレかしら素適な音色です。 ゆったりと夢見るような感じ。 ファゴット、クラリネットも落ち着いた美しい響きで、オーボエの凛とした音色に第2ヴァイオリンやヴィオラも響きもあっていました。 マリンバの響きがまた夢想的な感じで打ち、美しい音楽として展開されてゆきますが、どこか懐かしさも感じさせて、やはり青春の回想なのかな、と思ってみたり。 少々乱れはあったかもしれませんが、しっとりと息づいた音楽を楽しみました。

第4楽章、キレの良い弦楽アンサンブルに力を込めた序奏。 快活な音楽になって走り始めました。 やはり低弦の響きが安定していて、この上に音楽がずべて乗っているような安定感がありますね。 そして低音金管楽器の渋い響きが軽やかです。 相変わらず見事な弦の分奏を楽しみながら曲が進み、木管楽器がこれまた素適に絡みますね。 シロフォンやピアノも入ってきて、オケの各パートが呼応しあってカラフルな響きに酔いました。 遥かな感じのする高音弦、伸びのあるブラス、シロフォンやマリンバも加わって軽く盛り上がったあと、そっと止めたピチカートによる終結で全曲を閉じました。
手許のレコードは、このあと強奏で終わる終結なんですけど、この終わり方はいいですね。 はっとして我に返って大きな拍手を贈りました。

ちょっと乱れたかななんて思った箇所もあったと思いますが、オーケストラの奮闘がとても素晴らしい演奏に掻き消されましたね。 深みも機動力もありましたし、何より聴かせてもらって予習したレコードとまったく違う曲のように思えました。 改めて実演の素晴らしさに気付かされた次第です。 正直、連休最後の夜の演奏会で少々億劫だったのですが、元気を頂いて戻ってくることができました。 ありがとうございました。