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同志社女子大学オペラクラス 第20回公演「フィガロの結婚」 |
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同志社女子大学オペラクラス 第20回公演「フィガロの結婚」
2007年2月24日(土) 14:00 同志社女子大学・新島記念講堂モーツァルト: 歌劇「フィガロの結婚」全4幕(日本語上演)
演出・音楽指導: 坂口茉里 音楽指導: 中村利男 衣装: 岸井克己 アルマヴィーア伯爵: 三原 剛 フィガロ: 井原秀人 ドン・バルトロ: 雁木 悟 ドン・バジリオ: 松岡重親 ドン・クルツィオ: 平松実留 アントニオ: 伊藤 正 <4回生オペラクラス配役> 伯爵夫人: 国分 文(2幕) 岩本夕弥(3・4幕) スザンナ: 岩井志津香(1幕) 村尾 藍(2幕) 矢本未来(3幕前) 沼田温香(3幕中) 大石友美(3幕後、4幕) ケルビーノ: 森 理奈(1・3幕) 淺野靖世(2・4幕) マルチェリーナ: 森 理奈(1・2幕) 江口華紅子(3・4幕) バルバリーナ: 村松真葦 村娘・花娘: 3回生オペラクラス(14人) (花娘)
望田静香、岩崎志帆 村の若者:大阪音楽大学有志(8人) 管弦楽: 同志社女子大学音楽学科管弦楽団有志
チェンバロ: 松浦亜季(卒業生)指揮: 井村誠貴
同志社女子大学オペラクラスの卒業公演。 今回が第20回だそうですが、観るようになって今回が3回目。 昨年に続いて充実した公演を楽しみました。
1年かけて作り上げてきた「フィガロの結婚」。 今年も超満員の観客でしたね。 緊張しないほうがウソだと思いますが、関西トップクラスの男声陣の方々と堂々と渡り合い、のびのびとした歌と演技、聴き応え・見ごたえのある公演を今年も楽しみました。 いつもながら思いますが、ちょっとした仕草など演技が巧いのが物語を深くしていますね。 真剣に取り組んでいるレベルの高さを感じます。
出演された皆さんにはそれぞれに良いところがあって、なるほどね、なんて感じながらそれぞれの配役を楽しみました。 スザンナなど総勢5名、第3幕では3人も入れ替わって演じるのですが、その違和感を感じさせないのは、演出の力もありますがやはりしっかりとした演技力じゃないかと思ってみたりします。
いつもはオーケストラの演奏会が主で、声楽はあまり(ほとんど)聴く機会を得ませんが、毎年このオペラ公演が楽しみになってしまいました。 やっぱりオペラもナマが最高(あたりまえ)。 歌・芝居・オーケストラが一体となった同女オペラクラス公演。 モーツァルトの楽しい音楽で今年も大満足。 観て聴いて楽しませていただきました。 皆さんお疲れさまでした。
簡単に公演をふりかえってみたいと思います。
ちょっと家を出遅れて開演20分前に到着したのですが、ほぼ満員に近い状態でした。 いつものオーケストラ演奏会ではホールの後ろに座るのを好むのですが、オペラと室内楽は前のほうと決めています。 初回は左側最前列、2回目も左側2列目。 この時間はまだこのあたりでは座れましたが、今回はもうちょっとハズれて左隅の前から4列目かしら、H-4 に陣取りました。 通路脇なので足元がちょっと楽です。 なんたって4時間の長丁場ですからね、ちょっとでも楽しないと。
開演10分前ころよりオケのメンバーが三々五々出てきて練習開始。 弦楽器は 7-5-5-3-2 の編成で、向かって左に弦楽器、右側に管楽器が配置されたオペラ伴奏の配置ですね。 練習音が大きくなったころ、圧倒的な音量でパイプオルガンの音が鳴り響いて驚きました。 予鈴のチャイムやブザー代わりのパイプオルガンですね。 曲は、サン=サーンスの交響曲第3番のオルガンパートかしら。 これが鳴り止んで開演を告げるアナウンス。 超満員で通路に座る人も居るいつのながらの大盛況な公演です。
2階席の方から、ガラガラッ〜という音がしばらくホール内に響きます。 オケの人も不思議そうに見上げていたりしましたが、補助イスを出しているのかな。 それもようやく収まって照明が落ちました。 コンミスが立ってチューニングを実施。 下手より指揮者の井村さんが登場して始まります。
序曲。 響きの柔らかな演奏ですね。 いつもより隅の席だからでしょうか、響きがちょっとこもって聞こえるみたいなのは仕方ないところでしょう。 トランペットはロータリーを使ってますね、座った位置からだとラッパの朝顔がよく見えます。 抑制をうまくかけてました。 井村さんもしなやかに歌わせるような感じで進め、中盤より力をこめて重量感を増し、慎重に歌い廻してしなやかなエンディング。 幕が上がります。
第1幕、今年もフィガロは井原さん(というか男声陣は昨年と全く同じ配役です)、落ち着いた歌唱、これに対するスザンナは澤井さん、素直な歌唱での2重唱。 手馴れた井原さんと比較すると、スザンナは丁寧に歌っている感じがしますが、リンリンという部分など透明感あって清楚なイメージだと理解しました。
投げキスの退場はとてもチャーミングで、見ていてもドキっとときめきました。
今回斜めから見ているせいでしょうね、フィガロによるカヴァティーナなど、指揮者を軸にして伴奏の音楽と舞台の歌がしっかりと合っているのが手にとるように見てとれてて面白いことに気付きました。
さてバルトロとマルチェリーナが登場。 1・2幕のマルチェリーナは森さん。 若いのに難しい役どころだと思いますが、落ち着いた演技と歌唱です。 スザンナとの二重唱も素直な感じで綺麗に絡んでいました。 ケルビーノが登場、こちらは1・3幕が大崎さんで、いつもながらの宝塚チックな衣装が明るい声質とマッチしてます。 よく伸びる声が特徴的かな。 少年っぽさもよく出てました。
さて三原さんによるアルマヴィーア伯爵が登場、いつもながらの存在感。 そして松岡さんによるバジリオもイヤミったらしい役柄を軽妙にこなしてます。 この両名を相手にしたスザンナとの3重唱。 スザンナは細かな仕草を演技しながらの大健闘でしょう。 見応えありましたよ。
フィガロが村娘達を伴って登場すると爽やかで気持ちの良い合唱。 動きがいつもきちん揃っているし、見た目もすごく清潔感があります。 バジリオがハンケチを振って指揮するような仕草で歩き廻るから余計にそう感じるのかもしれませんが。 とにかく舞台が面白いですね。
最後はフィガロによる「もう飛べない蝶々」。 朗々と歌って、徐々に張りのある歌唱にしていったみたい。 演奏もこれによくマッチさせて、進軍ラッパが軽妙に絡むとケルビーノが不安そう。 歌・芝居・音楽が一体となったモーツァルトを楽しませてもらって第1幕を閉じました。暗転となり、暫くそのままの状態で幕の向こう側でステージの準備。 これが完了すると第2幕です。 チューニングを実施したあと、やわらかな音楽で幕が上がります。
第2幕の伯爵夫人は国府さん、愁いを含んだ柔らかな歌唱が落ち着いています。 個人的に最近宗教音楽を聞いていることもあって、慈悲深い、なんていうイメージを持ってしまいました。
スザンナは村尾さんに交代しましたが、同じくチャーミングでどの場面でも笑顔がとても素適なのが印象的。 ケルビーノは2・4幕と淺野さん。 「恋とはどんなものかしら」をとても柔らかく綺麗な声で歌い、とても可愛らしかったですねぇ。 またこの後ろでギターを弾く(真似)のスザンナ、終始笑顔でケルビーノを引き立てる演技もまた見事です。
そしてそのスザンナのアリア、透き通るような声が特徴的。 またこのあとのケルビーノとの2重唱も、透明な声質のスザンナ、暖かみのある声質のケルビーノ、ともに息がぴったりと合っていて良かったですね。
伯爵、伯爵夫人とスザンナとの3重唱は、常に落ち着い歌う伯爵夫人、綺麗な透る声で歌うスザンナ、いずれも堂々と渡り合っているのが見事でした。
さてフィガロが登場、オケも見事に絡んで更に場が盛り上ってモーツァルトの音楽を楽しみます。 アントニオの伊藤さん、張りのある声はさすがといった感じ(最初に見たとき伊藤さんがフィガロでした)。 マルチェリーナやバジーリオも加わっての大団円。 さっきも書きましたが、斜めから見ているので指揮者を核にして左右・中央と歌が巡り、オケの響きもブレンドされた華やかな舞台としてこの幕を閉じました。15分間の休憩。 さすがに1時間40分、音楽を聴きつづけて疲れました。 新鮮な酸素を補給しに外に出ましたが、今年は2月というのに既に花粉が飛んでますよね。 花粉症の人には辛い季節になってますが、自分は関係ないので、外をウロウロと歩き回って、リフレッシュして戻ってきました。
第3幕、チェンバロの響きとともに幕が開くと、伯爵が苦虫を噛み潰したような表情でレチタティーヴォ。 存在感抜群ですねぇ。 伯爵をじらすスザンナは谷本さんになりました。 これまでのチャーミングな感じのスザンナから、さすがにこの場面では凛として落ち着いた雰囲気を漂わたスザンナです。 そして三原さんの柔らかでスケールの大きな歌は見事ですが、スザンナも堂々としてここでの2重唱を歌って見事でした。
バルバリーナは村松さん、小柄で利発な娘といった感じかな。 可愛いけど、しっかり者でしょう。 3・4幕の伯爵夫人は岩本さん。 アリア「スザンナは来ない」を声量豊かに歌ってとても見事でした。 声に艶もあるし、響きもたっぷりとしていたし、こなれた歌い手といった印象を持ちました。
マルチェリーナは江口さんに交代、ドン・クルツィオの平松さんと一緒に出てきます。 このマルチェリーナ、ホクロなど細工もあるんですけど、なんか雰囲気そっくりですね。 そして堂々とした演技もまた同じです。 スザンナは沼田さんに交代しての6重唱。 ここでのスザンナはとても清楚な感じがしました。 柔らかな声質で歌って皆と対抗します。 マルチェリーナは母らしいやさしさを含んだ歌で渡りあってたみたい。 伯爵、スザンナ、そして全員が一度退場。
スザンナは大石さんに交代して伯爵夫人との2重唱。 落ち着いた夫人と清楚なスザンナの声が柔らかく絡んで綺麗なデュエットでした。
村娘たちが客席の階段を駆け下りてきてステージに登り場面を盛り上げます。 丁寧な合唱は明るい響きがよく揃っていて気持ち良さ満点。 マスゲーム風の踊りもこれまたよく揃ってます(背の高い順に並んでいたり、よく考えられています)。 花娘二人の歌は可愛く、ここでも明るい気持ちにさせてくれました。 バルバリーナも可愛くて賢くてといった感じでの振る舞い、堂々とした演技してました。
婚礼となり、合唱の声が力強くなります。 音楽も端正な感じぐぃぐぃと進めて、とてもよく揃った合唱が高揚感を醸し出してこの幕を力強く閉じました。15分間の休憩。 席でじっとして開演を待ちます。 ちょっと人が空いてきたかな、と思ったけれど通路にも人が座ってます。 しかも見とれるような綺麗なお姉さんばかり(あとで分かったのですが、この方たち卒業生だったのですね)。
第4幕、バルバリーナのアリア「無くしてしまった」。 短調のアリアをよく透る声で伸びやかに歌ってとても巧かったですね。 フィガロとマルチェリーナが登場してマルチェリーナのアリア、声質が柔らかいのですけどよく透る声を転がしてこれも見事でした。 バジリオとバルバリーナの登場。 バルバリーナ、ほんと小悪魔的な魅力がありますね。 そしてバジリオ、コミカルな演技で見せてきていますが、ここでのアリアは張りのある良く透る声で、ほんと素晴らしかった。
スザンナは前幕に引き続いての大石さん。 柔らかな台詞回しからアリアへと繋ぎます。 ピチカートにのせ、響きが豊かなのに清楚で綺麗にゆったりと歌って巧かったなぁ。 ケルビーノが登場して伯爵夫人にまとわりつきます。 そこに伯爵が登場すると空気が一変。 やはり三原さんの存在感は抜群です。 フィガロが登場し、伯爵夫人に扮したスザンナが堂々とこれに渡り合います。 舞台とオケが一体になって進行、ぐいぐいと惹き付けられます。 舞台の左隅のあずまやの上ではケルビーノとバルバリーナが様子を伺う演技をしっかりとこなしてます。 そうそうスザンナがフィガロを蹴るシーンなんて昨年あったかな。 面白いですね。
音楽が更に高揚して大団円のフィナーレ。 重唱となって和解し、そして音楽も響きを増してエンディング。 ここの重唱、モーツァルトの宗教曲を聴いているような錯覚にとらわれました。 女声陣が清楚な歌声だからでしょうか。 そして出演者全員が一丸となって堂々たる音楽で全幕を閉じました。見事なフィナーレでした。 カーテンコールも華やかです。 そしてアンコールは出演者全員に加え、さっき通路で座っていた綺麗なお姉さんたち卒業生も加わって「祭りに行こう」を歌ってお開き。 今年も楽しい舞台でした。
オペラは観て聴いて楽しむもの、当たり前のことなんでしょうが、今年もそれを実感できた公演でした。 皆さんお疲れさまでした。 この素晴らしい経験を生かして、これからの活躍も期待したいと思います。