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喜歌劇楽友協会 第53回定期公演

リラックスした雰囲気、華やかな舞台をたっぷりと戻る


喜歌劇楽友協会 第53回定期公演
2003年12月9日(日) 12:00 森之宮ピロティホール

J.シュトラウス2世: 喜歌劇「こうもり」全3幕(日本語上演)

演出:向井楫爾

アイゼンシュタイン:金丸七郎
ロザリンデ:山田維久子
アデーレ:蘆田まり子
ファルケ:近藤修平
アルフレート:角地正直
フランク:澤 一孝
オルロフスキー:河嶋紀子
イーダ:木矢晃子
ブリント:音在弘之
フロッシュ:和田垣 究
パーティに招かれた客:樽本裕子、久米真澄、奥山保子、長野由紀子、細川典子ほか

合唱:喜歌劇楽友協会合唱団
管弦楽:エウフォニカ管弦楽団

指揮:井村誠貴


「20回目のこうもり」と題された公演、しかも3回公演の中間、マチネということもあってリラックスした雰囲気が漂うなか、手馴れた演出とオケ伴奏で楽しみました。

この公演では、アイゼンシュタイン役の金丸七郎さんの演技と歌、それと、こうもり博士ファルケ役の近藤修平さんの演技と台詞回し、とても素晴らしかったですね。
金丸七郎さん、細かな動作や表情までも、一つ一つがツボを得ていて、さすが巧いなぁ、と感心させたりもしながら、大いに楽しませていただきました。 そして近藤修平さん、歌舞伎役者ばりの堂々とした台詞回しがとても見事。 舞台をきりっと引き締めて存在感がありました。 パンフレットによると近藤さんは音大出身ではなく法学部出身、大阪ガスセキュリティサービス勤務と書かれていましたけれど、まったくもって落ち着いた歌と演技にそんなこと忘れて見入っていました。

女声陣もまた奮闘していました。 ロザリンデ役の山田維久子さん、アデーレ役の蘆田まり子さん、ともに第1幕は少々硬さも感じられたものの、徐々に調子を乗せていったようです。 第3幕では伸び伸びと楽しんでおられたのではないでしょうか。

そしてこの第3幕での楽しみは、和田垣さん。 今回も看守フロッシュ役での登場で、こてはハマリ役ですね。 いつもどおり時事ネタをたっぷりと入れてスパイスの効いた台詞まわし。 笑わせてもらいました。 それと刑務所長フランク役の澤一孝さんもまたサービス精神旺盛。 第2幕ともども金丸七郎さんとの絡みがハマっていましたね。 アルフレート役の角地正直さん、この方は美声も持ち主ですけれど、女声の方々と同様に第3幕に向かうにしたがってのびのびとされていたように思いました。

最後にこの公演を支えた井村さん指揮によるエウフォニカ管弦楽団。 プロオケに言うのも失礼ですが、よく纏まった演奏がとても素晴らしく、中でもまろやかな金管の響きに魅了、柔らかな打楽器とともに舞台に華やかさを添えていたことを記しておきます。

副題の「2大オペレッタを同時に楽しめる」とは、第2幕の舞踏会で「メリー・ウィドウ」を出し物として挟み込んでいたからで、副題のとおりの華やかな舞台をたっぷりと楽しませていただきました。


簡単に公演をふりかえってみたいと思います。

正午開演のマチネ公演、開場時間をちょっと過ぎた頃に到着しましたが、中央付近の良い席は既に埋まっていて、いつもどおりの右側ブロックで前から5列目 H-34 を陣取りました。 ここは指揮者も舞台もよく見える席なのですね。 席も確保したので軽食を・・・と思ってロビーに出てみたものの、座るところが少なくて、しかも皆さんちゃんと腹ごしらえをしてらっしゃって動きそうにもありません。 思い立って階段を登り、ホール後方を探ってみると、ベンチが空いてましたよ。 死角ですね。 ここで腹ごしらえを済ませて準備完了。 開演時間が近づいたので席に戻りましたが、案の定、満員です。

定刻、客席の照明が落ちるとオーケストラのチューニング。 これが終わるとホール内にチャイムが鳴ります。 クリスマスらしい演出でしょうか。 指揮者が出てくるのを待っていると、舞台上手よりファルケ(こうもり博士)が登場しました。 復讐劇に至った顛末を口上しますが、歌舞伎役者ばりのよく透る声が素敵です。 そして最後に協力者としてのマエストロの紹介をすると、井村さんが登場。 OK!の返事とともに指揮台に進んで序曲を振り始めます。 スポットライトを浴びた井村さん、気合の入った動きと、なでるような動きを絡め、メリハリの付いた演奏で音楽を進めてゆきます。 手馴れた演奏ではありますが、軽やかな金管が素敵に響いて華やかさを添えた上々の滑り出し。 さぁ幕が上がります。

下手の楽屋からアルフレートの歌声、朗々と響きますがちょっと硬い感じでしょうか。 もうちょっと色気が欲しいな、と思っているとアデーレが登場。 「私は叔母さんの所へ行けない」、声量はあってしっかりとした歌唱ですが、まだちょっと緊張気味なのでしょうね、少々この歌も硬い感じだったかな。 ロザリンデ登場、スカートの裾がセットにひっかかるアクシデントに少しハラハラっとしましたが難なく切り抜けました。 この後もなんとなく型どおりのアンサンブルで進んでゆきましたが、アイゼンシュタインの登場、手馴れた自然な演技とハリのある声、台詞回しもまた手馴れたもので、舞台を引き立てます。 3重唱ではまだ少々雑然とした感じも残りましたけど、ファルケが登場しての2重唱は堂々とした声、アイゼンシュタインの軽妙な動きもまた光って見ごたえ聴き応え充分。 ロザリンデとの別れのシーンの3重唱「一人で8日も暮らさねばならない」では甘く響くトランペットとホルンも一体となってオケもまた聴き応え充分です。 さて、アルフレートが登場、「トギャザーしようぜ」とルー語の台詞、大阪弁で「今夜は寝かさへんで」とも言うと、ロザリンデも「何考えてんの」と大阪弁で応じる場面もありました。 でもまだどこか淡々と進んでいる印象が拭えません。 お互い良い声質を持たれているのですが、まだ本調子になっていないと感じました。 しかしフランクが登場、キレの良い声とコミカルな演技で観客を惹きつけます。 そして第1幕のフィナーレ、ロザリンデの響く声と上品なオケとの響きがよく合った華やかに盛り上がって幕が下りました。

20分間の休憩。 天井からは「Die Fledermaus」の看板が掲げられていて、第20回目のこうもり、看板を見て伝統を感じたりしていました。 電子音楽が少々大きな音量で鳴って、これが予鈴でしょう。 この電子音楽がフェードアウトして照明が落ちると指揮者の井村さんが登場。 小脇にかかえたポインセチアをお客さんにプレゼントしますが、これも恒例みたいです。 軽やかな音楽を奏でて緞帳が上がると舞踏会。 柔らかな合唱が素敵に響いて華やかさを演出しています。 いつもながら合唱が入ると華やかになります。 さてイーダとアデーレ、そしてオルロフスキーも登場し、イーダの「ウィーンわが都」、ちょっと声量は少なかったものの丁寧な優しい声はよく透っていて好感が持てました。 アデーレがチャーミングでコミカルな演技でうまく狂言回しを務めていて、アイゼンシュタインとフランクが登場となります。 例のフランス語会話でも笑いを取り、徐々に全体的な調子が上がっているようです。 金丸さん、ここでも歌も演技も余裕を感じさせるほどで素晴らしかったな。 ロザリンデも調子が出てハンガリーの歌で魅了。 ファルケも色気のある声で重唱に参加、そして何より舞台、見ているだけに綺麗な色で占められていて華やかです。 そして余興は「メリーウィドウ」、「2大オペレッタを同時に楽しめる」の副題のとおりの華やかな舞台が更に続きます。 ロザリンデのリディアは艶やかで素敵な声がよく伸びて客席を魅了。 アンゼンシュタインも端正な歌を聴かせて、二人で歌い、踊ります。 男性合唱が加わってきましたが、よく見ると角地正直さん、アルフレートとの二役で参加されてましたね。 手拍子も伴って大いに盛り上がったあとお馴染みの「雷鳴と電光」。 よく揃ったダンスで連なってゆきます。 オケもノリノリな感じですが、ティムパニ奏者の方は席から降り、窮屈な姿勢でかがんで楽器を叩いていい音を出していました。 そして人間ドミノ倒しとなっての大団円。 ここでも客席は大いに沸きました。 そして鐘が6つ鳴り、アルフレートとフランクの二人がステッキ載せたシルクハットをクルクルっと回しながら大急ぎで退場。 一気に見せて聴かせて幕へとなりました。

幕が降りましたが休憩のアナンウスがなく会場は薄暗いまま・・ しばらくすると下手の花道にアデーレとイーダがワゴンを押して登場します。 恒例のワイン・プレゼントの抽選会ですね。 合計3本のワインを観客に配り終え、残った1本は抽選を手伝った女の子へのプレゼントとし、拍手で終了。 トイレに行きたかった人にはちょっと酷な時間だったかもしれませんが、座って出番を待っていた井村さんが立ち上がって第3幕が始まります。

軽やかで明るく楽しい音楽が流れます。 そして幕があがると監獄。 和田垣さんのコミカルな演技と台詞まわし・・ 刑務所の民営化、駅前懲役などなど、大いに楽しませていただきました。 和田垣さん、ほんと間合いが絶妙なんですね。 巧い。 アルフレートの声が獄舎(楽屋)より響いてきます。 第1幕とは違ってよく透った艶のある声が素敵です。 また獄舎より出されて歌ったオーソレ・ミヨも見事でした。 そして彼らが引っ込むと、フランクが登場。 オケからのお酒の差し入れを受けると、賞味期限切れじゃないか、とか、白福もち、赤い恋人などギャグを連ねたあと、それ山田(洋行)にツケといて、で会場をまた沸かせました。 イーダとアデーレが登場し、アデーレが女優になりたいと歌う「田舎娘になる時は短いスカートで」、明るい声質の透る声でチャーミングでした。 監獄に到着したアイゼンシュタイン、コミカルな演技にも更に力が入っています。 弁護士のブリントの衣装とカツラを着けると見た目そっくりなのも見事。 そして柔らかなオケの伴奏にのせての3重唱、実はアイゼンシュタインだとバラしてからの盛り上がりと勢いにのって進みます、そして活気ある音楽をすっと止めて、動かぬ証拠が突きつけられると、舞台後方の幕があがって舞踏会のシーン。 華やかで気分もパッと晴れた感じがする演出ですね。 そして全員が十人十色と歌って大団円のフィナーレもまた素敵。 そして、いったん幕が下りてのカーテンコールですが、アイゼンシュタインが緑色の横縞模様のシャツ、囚人服を着ての登場も凝ってましたね。 一気に見せてもらいました。

喜歌劇楽友協会のこうもりは20回目とのこと、個人的には2回目の鑑賞となりましたが、演出は同じようでいても時事ネタなどを盛り込んだオペレッタらしさがふんだんにあって満足しました。 またこの公演を支えた井村さん指揮によるエウフォニカ管弦楽団の演奏もまた素敵でした。 特にまろやかな金管の響き、柔らかな打楽器とともに舞台に華やかさを添えていたことを記しておきます。