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オーケストラ千里山 第14回演奏会

対抗配置に据えられた豊かな弦の響き戻る


オーケストラ千里山 第14回演奏会
2008年10月26日(日) 14:00 八尾市文化会館プリズムホール・大ホール

ベートーヴェン: 「エグモント」序曲 op.84 (-*)
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番ハ短調 op.18

(アンコール)プーランク: 「3つのノヴェレッテ」より第2曲

ドヴォルザーク: 交響曲第9番ホ短調「新世界より」 op.95

(アンコール)エルガー: 「弦楽のためのセレナード」より第2楽章

独奏: 吉田衣里(p)

指揮: 河崎 聡、藻川繁彦(-*)

対抗配置に据えられた豊かな弦の響き、これらが自然に流れる充実した響きに酔いました。

指揮者は河崎聡さん、2001年よりこの方の指揮による演奏を聴いていますが、オケの自主性を発揮させた演奏を聴かせてくださる、そんな印象が強くあります。 そして今回もまた、オケの各セクションが積極的に響き合った素晴らしい演奏を届けてくださいました。

特にラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、指揮者の河崎さんがソリストの吉田衣里さんを巧みにリードしながら、ゆったりとしたテンポで歌わせた素晴らしい演奏でした。 想いが湧き上がってくるような演奏に惹き込まれてしまいました。 しかも要所を決めつつ進めてゆき、またエンディングをスパっと切り上げて都会的なカッコ良さも光っていたように思いました。

そして新世界交響曲、緩急を巧くつけながらも自然体の演奏を展開、耳馴染みのある名曲ながら、充実した響きを充満させて客席を惹きつけていました。 弦楽器の響きがここでも巧くブレンドされ、そしてそれを突き抜いてくる金管楽器群。 こららが渾然一体となって進んでゆくのだから惹きつけられるわけですね。 個人的な好みを言わせてもらうなら、振幅を大きくとった第1楽章をとても面白く聴かせてもらいました。

また団内指揮者、藻川繁彦さんによるエグモント序曲。 前回の第九演奏会での経験が十二分に発揮されていたのではないでしょうか、集中力を高く保って堂々とした演奏でした。 フィナーレでは壮麗さも感じさせた演奏に、露払いとしては勿体ない演奏だと強く感じました。 しかも、演奏が終わって藻川さんの腕が降り、響きが完全に消えてから暫くして湧き上がってきた拍手もまた素晴らしくて、演奏会全体のクオロティの高さを感じました。
とにかくいずれも充実した演奏の数々、とても素晴らしい演奏会でした。


簡単に演奏会を振り返ってみたいと思います。

今回もまた単身赴任による帰省に絡めた演奏会参戦。 東京に戻る前、小雨降るなか奥さんと連れ立って八尾市の演奏会場に向かいました。 ホールには20分ほど前に到着したでしょうか、パンフレットを受け取るとすぐに2階席へ。 ちょっと右側ながら最前列 A-41 を確保、一息つきます。

ステージを見ると、ヴァイオリンを両翼に据えた対抗配置ですね。 すでに練習を始める方が集まってきていて、開演5分前には自由入場で全員がステージに揃いました。 13-13-11-9-7 の編成でしょうか。 金管楽器もホルンが左、トランペットが右に振り分けられてます。

開演のアナウンス、ブザーとともにコンミスが登場。 ブザーが鳴り止んでチューニングを開始します。 客席の照明が落ち、ステージ上も照らされました。 チューニングを終えて準備完了。 長身の指揮者の藻川さんが登場、いよいよ始まります。

ベートーヴェンのエグモント序曲。 前回の第九演奏会での経験が十二分に発揮されていたのではないでしょうか、集中力を高く保って堂々とした演奏でした。 フィナーレでは壮麗さも感じさせた演奏に、露払いとしては勿体ない演奏だと強く感じました。

集中力を高めて底鳴りのする響き、しかも柔らかさをも感じさせる開始より惹き込まれました。 弦楽の各パートに管楽器、これらの響きがブレンドされています。 木管が密やかに吹き、高音弦も透明感を持った響きで応え、しなやかに流れてゆきながらも、重心は常に低く保っています。 落ち着きと活気が同居している、そんな感じかな。 前回の第九演奏会での経験が十二分に発揮されているのではないでしょうか。
ティムパニが先の細いマレットで控えめに打ち、ゆっくりとした自然な流れで曲を進めてゆきます。 ホルンのファンファーレもまたゆったりと構えた感じ。 藻川さん、低弦に力をこめるように振って力を徐々に漲ぎらせ、トランペットに合図。 渾然一体となった音楽は力強く、壮麗な響きとなって客席に届きます。 引き締まって輝かしいフィナーレを決めたエンディング。 演奏が終わって藻川さんの腕が降り、響きが完全に消えてから暫くして湧き上がってきた拍手もまた素晴らしくて、演奏会全体のクオロティの高さを感じました。

ステージが暗転すると、オケのメンバーが自席を後ろに配し、ピアノを出し始めます。 大勢の人間がこの作業に加わるので、あっというまに準備が整います。 なおこの間にトロンボーン奏者が加わり、トランペット奏者はステージ最上段に移動しました。 ちょっと遅れてチューバ奏者もやってきて全員が揃ったようです。 コンミスがピアノを叩き、チューニングを始めます。 そして準備完了。 黒のドレスに身を包んだ吉田さん、美形な方ですねぇ。 指揮者の河崎さんは後ろでにこやかな笑みを浮かべて登場しました。 さぁ、始まります。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。 指揮者の河崎さんがソリストの吉田衣里さんを巧みにリードしながら、ゆったりとしたテンポで歌わせた素晴らしい演奏でした。 想いが湧き上がってくるような演奏に惹き込まれてしまいました。 しかも要所を決めつつ進めてゆき、またエンディングをスパっと切り上げて都会的なカッコ良さも光っていたように思いました。

第1楽章、芯のある響きで吉田さんがピアノを鳴らして開始、オケも深く澄んだ響きで応え、重心を低く、ややゆっくりとした思い入れのある音楽が進みます。 力強くも美しい響きのピアノの響き、オケは情感を増してじっくりとした盛り上がり。 ややゆっくり目で進んでゆきます。 最高潮に達した演奏もまたゆっくりと減衰して歩むように。 流れがとても自然です。 吉田さんのピアノはまだ少々端正な感じでしょうか。 河崎さん、要所でそんな吉田さんを見て、ぴったりと付けながら、詩情のある音楽を演出しているようです。 そして底力のある響きで決めた終結は実にカッコ良く、客席から拍手も飛び出していました。

第2楽章、綺麗な響きのピアノに、湧き上がってくるようなオケの響き。 フルート、クラリネットも語り合うのようにピアノと絡んでしっとりと。 淡い色合いのピアノの響きが端正です。 ここでもテンポはやや遅めでしょうか、オケのピチカートがズシリとくる感じ。 河崎さん、ピアノを見て、やや音量が上がったように思いましたが、それでもなお端正、いや、都会的なのかな。 速いパッセージとなって、河崎さんは背をかがめてオケの力を溜め込んで、一撃。 キラキラと輝くようなピアノのソロへと移ります。 うっとりとしていると、オケがまた自然に絡んできました。 流れるように歌って、密やかな終了です。

第3楽章、アタッカで躍動感あるオケの響きで開始、ぐっと力こめると、ピアノも跳躍するように入ってきました。 しかし優しく語りかけるようなピアノな響き。 要所を締めるオーケストラは粘り気のある響きを出しています。 ヴィオラが歌い、まろやかなホルンが絡みます。 しっとりと歌うピアノ。 静かにシンバルが鳴り、ゆっくりとオケの力が増してゆくと、重厚な響きになりました。 ピアノが呼応しながら力を増し、進みます。 河崎さん、縦振りでオケを端正に絡めて抒情的に歌うピアノをしっかりとサポート。 ともに響きに芯があっていいですね。 フィナーレ、大太鼓の締まった響きが印象的だった堂々とした終結を決めて全曲を閉じました。 歌いながらも都会的なセンスを感じた素晴らしい演奏でした。

鳴り止まない拍手にアンコール。 しっとりとして豊かなニュアンスある演奏で会場を魅了していて、あとでプーランクの「3つのノヴェレッテ」より第2曲だと知りました。 このような情感の豊かさが吉田さんの持ち味なのでしょうね。 なお終演後、ロビーに立ってお客さまのお見送りをされていましたが、パンフレットよりも美しい方だったことを付け加えておきます。

10分間の休憩、短い時間でしたがいったんロビーに出て気分転換です。 じつは奥さんのトイレ休憩に付き合っただけなんですけども。 休憩して客席に戻ると、オケの皆さんが集まってきています。 今度は 12-13-11-10-7 の編成でしょうか、もちろん対抗配置。 ブザーが鳴ると、今度はコンマスが立ち上がってチューニングを開始します。 照明が落ち、準備が整うと、指揮者の河崎さんが登場。 手を高々と挙げてオケの全員を立たせてから、中央に立って一礼。 いよいよ始まります。

ドヴォルザークの新世界交響曲。 緩急を巧くつけながらも自然体の演奏を展開、耳馴染みのある名曲ながら、充実した響きを充満させて客席を惹きつけていました。 弦楽器の響きがここでも巧くブレンドされ、そしてそれを突き抜いてくる金管楽器群。 こららが渾然一体となって進んでゆくのだから惹きつけられるわけですね。 個人的な好みを言わせてもらうなら、振幅を大きくとった第1楽章をとても面白く聴かせてもらいました。

第1楽章、ゆっくりとオケ全体を見渡してから、ひそやかに音楽を始めました。 ホルンの響きもタイトながら少々控えめだったでしょうか。 そして引き締まったオケの響きに力が増します。 ティムパニも力が入って鋭い響き。 ぐいぐいと力を込めたかと思うと、それを解放。 ゆったりと吹くフルートに、弦楽器もまたゆったりと。 しかしアクセントを付けながらまた急激な盛り上がり。 緩急ついてて面白いですね。 金管楽器の響きがオケの中を突き抜けてくるよう。 パワフルでもありますが、オケと同じ音色なので違和感がありません。 またなだらかになったかと思うと、タイトな盛り上がり。 わくわくしながら聴いていました。 そして最後は、河崎さんが右手を小さく縦振りにしてタイトに盛り上げたのを、左手の拳で力強く止めました。 カッコ良い音楽でした。

第2楽章、ちょっと手探りな感じも受けたスタートもすぐに挽回。 コールアングレがしんみりとさせる有名な旋律を吹きます。 弦のピチカート、クラリネットも甘い響きで寄り添ってます。 自然な盛り上がり。 トランペットの響きはオケに溶け込んだ響き、弦楽器がやや明るさを秘めてきたでしょうか。 紡ぐように丸ぁるく振る河崎さん。 コールアングレが戻ってきました。 河崎さんの丹念なリードで雄大も演出された盛り上がり。 ゆったりとした気分にもなりました。 トロンボーン、チューバが暖かみのある音色、そして柔らかなコントラバスの響きによって終結。 自然体の演奏だったように思いました。

第3楽章、ぐいっと下に振って覇気ある演奏を開始しましたが、柔らかさを失っていません。 そしてそのままぐぃぐぃと進めてゆきます。 音量は大きいけれど、まだ余裕を感じます。 ティムパニがコンパクトに打って全体が盛り上がります。 しかし一転して、木管がゆったりと歌います。 これも長く続かず、徐々にステップを踏むようなリズムで盛り上がってゆきます。 そしてまた力のこもった演奏、またこの後に木管の歌が繰り返され、また力の篭った盛り上がり。 自然な流れが素敵です。 河崎さん、指揮棒を上下動させて端正に進めていますね。 ホルンのまろやかな響きがホールに流れ、トランペットが突き抜けてきて、ぐいっと力を引き絞って跳ねるような一撃で終了。

第4楽章、河崎さんが腰をかがめたまた腕を下ろさずアタッカで、堂々とした響きでの開始。 しかし更に力を増して、弦楽器など弓を強く押し付けていたようです。 徐々にスピードアップも、オケが走り出しそうになりながらも、河崎さんがゆったりと構えて進めているよう。 ひそやかなシンバルが鳴っても雰囲気はあまり変わらず、音量がやや下がった感じでしょうか。 音楽はとうとうと流れてゆき、輝かしい金管もよく聴こえてきますが、落ち着きすら感じて自然な音楽の流れに乗っていますね。 第1楽章のような振幅の大きな演奏からすると、後半2つの楽章はやや端正に思えましたが、耳馴染みのある曲だけに、このように自然に聴こえさせるのは、実はとても難しいのかもしれませんね。 さてトロンボーンの強い響きに、ホルンの斉奏なども纏まった響きであり迫力もあります。 低弦の支えもあるからでしょうね。 フィナーレの盛り上がりも充実した響きがブレンドされて、強烈な盛り上がり。 これがまた自然に減衰、雄大さを醸し出したホルン、そしてゆっくりと畳み掛けるような全奏、そしてその最後のフェルマータはちょっと短く切り上げ、端正に纏め上げていました。 充実した演奏でした。

鳴り止まない拍手のあとのアンコールはエルガーの「弦楽のためのセレナード」より第2楽章。 こちらもオケの響きを紡ぎ合わせて沁み入るような演奏でしたね。 素直にいい曲だなぁと思わせられてのお開きとなりました。 そして外に出ると寒風が吹いていましたけれど、心は熱いまま会場を後にできました。 皆さん、お疲れさまでした。 ありがとうございました。