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第3回ホール・バルティカ演奏会 |
誠実で実直ながらチャーミングさを失わなわない(戻る)
日時:2013年3月17日(日) 14:30開演(14:00開場)
場所:吹田市文化会館メイシアター・大ホールハイドン/オラトリオ「天地創造」
独唱:Gabriel 平井 文(S)
Uriel 小餅谷哲男(T)
Raphael 井原秀人(Br)
Adam 小玉 晃(T)
Eva 小玉洋子(S)
合唱:ホール・バルティカ
管弦楽:セント・マーティン・オーケストラ
指揮:河崎 聡
滅多に耳にすることの出来ないハイドンのオラトリオ「天地創造」、期待に胸を膨らませてメイシアターを訪れましたが、期待に違わないというよりも遥かに想像もつかなかった素晴しい演奏に感動しました。
実はこの曲、カラヤンによる抜粋盤のレコードで何度か予習したものの、豪奢な響きであるものの惹きつけられるような魅力を感じませんでした。 実演ではどのように料理されるのか、退屈で寝てしまうのか・・・ いやいや実演は何物に勝るはず、そんなことを思って臨んだ演奏会だったのですが、寝るどころか、時おり身を乗り出すようにし、またうっとり聞き惚れてしまうほどの素晴しい演奏でした。
何より指揮者の河崎さんの指導が隅々まで行き届いていました。 長丁場ではあるけれども、音楽にしっかりとした要があるので、誠実で実直なハイドンらしい纏まりの良さが終始切れることなく見事であったと思います。 オーケストラでは、中低弦の纏まりの良さ。 これが常に音楽の芯となっていました。 しかもリズム感良く脈打つように届けられて、第2部などいっしょになって身体を動かしていたほどです。 そして木管楽器、端正ながらチャーミングでしたし、金管楽器も華美な響きを抑えながら、長閑で明るめの響きがハイドンに似合ってました。
独唱陣では、何といってもガブリエルを歌った平井さん。 なんと柔らかな響きで可憐な声だったことでしょう。 うっとりと聞き惚れてしまいました。 まさしく大天使ガブリエル。 第1部の最初から最後まで虜になってしまいました。 小餅谷さん、井原さんというベテランも柔らかな響きでそれぞれ天使を好演。 第3部では、アダムとイヴを歌われた両小玉さん、共にちょっと押し出しの強い歌唱だったのは、人間・世俗的なものを表現されていたのでしょうか。
そして合唱のホール・バルティカ。 「バルト海の合唱団」という意味だそうです。 2008年2月に開催された第九演奏会の特別合唱団を母体としてホール・バルティカとなり、第1回はヴェルディのレクィエム、第2回はプーランクのグローリアとベルリオーズの荘厳ミサ、そんな大曲を約1年半かけて演奏会に採り上げられています。 なお次回は来年秋にヘンデルのメサイヤが予定されている気鋭の合唱団です。 管弦楽を受け持っているセント・マーティン・オーケストラの音楽監督である河崎聡さんが、この合唱団を指導されています。
それはともかく、やはり男声は少ないのですが、しっかりとコントロールされ、瞬発力もある見事な合唱でした。 第九のような圧倒的な声で押すのではなく、明るい響き、強い響き、そして柔らかな響きと巧く使い分けていたように感じました。 そして第3部のエンディングでは、フーガとなって高揚感をしっかりと演出してフィナーレ、アーメンを力強く歌っての幕切れの潔かったこと。 端正ながら熱っぽくて歌い上げました。 なおこのとき、河崎さんの眼鏡がふっ飛んで客席に落ちたみたいですね。 全員一丸となった素晴しい演奏に大きな拍手を贈りました。
しかし惜しむらくはお客さんが少なかったことですね。 合唱団による演奏会なので、もっと集客があるかな、と思っていたのですが、ホールに半分も満たないお客さん。 しかも少ないお客さんも演奏会慣れしていないのか、拍手もどこか力が弱く、長く続かないのがちょっと悲しかった。
しかしながら、誠実で実直ながらチャーミングさを失わなわないまさしくハイドンの音楽。 しかも第3部ではベートーヴェンやモーツァルトらしさも感じさせつつ、これらの時代を行き抜いてのハイドンの「天地創造」であったように感じました。 また一つ良い経験をさせてもらいました。 皆さん、有難うございました。
以下、未稿