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オーケストラ千里山 第23回演奏会 |
夏の名残を感じた暑い1日の熱い演奏会(戻る)
日時:2015年9月27日(日) 14:00開演(13:30開場)
場所:伊丹市立文化会館いたみホール・大ホール曲目:エルガー/行進曲「威風堂々」第4番 (-*)
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
(アンコール)ショパン/マズルカ 第3番
ラフマニノフ/交響曲第2番
(アンコール)エルガー/エニグマ変奏曲より第9変奏「ニムロッド」
独奏:喜多宏丞(p)
指揮:井村誠貴(客演)、藻川繁彦(団員-*)
ラフマニノフの交響曲第2番、井村さんらしいロマンを漂わせた演奏にどっぷりと浸かりました。 冗長であるとして作者も承認したカット版が存在する長大な曲ですが全曲版での演奏、しかも主題呈示部の反復もしっかりとこなした第1楽章はたっぷりと30分。 個人的にはこの長大な第1楽章、カッコ良いフレーズをきちっと聴かせた第2楽章が秀逸でしたね。 ちっとも長さを感じず、たっぷりと楽しませてもらいました。
これに先立つチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は、東京芸大大学院の博士課程を終えて音楽学の博士号を取得し現在もカールスルーエ音楽大学及びパリ・エコール・ノルマル音楽院にて研鑽を積んでおられる喜多宏丞(きたこうすけ)さんをソリストに迎え、少々弾き飛ばし気味にも感じましたけれどエネルギッシュな演奏でほぼ満員となった会場を大きく沸かせていました。
冒頭の「威風堂々」第4番は団内指揮者の藻川さんの指揮。 滅多にかからない曲ながら自信に満ちた堂々とした演奏はまさに威風堂々にぴったりでした。 ほぼ満員となったホール、夏の名残を感じた暑い1日の熱い演奏会でした。
簡単に演奏会を振返ってみたいと思います。
会場には30分前に到着。 ロビーコンサートを演っていましたが、さっそく2階席へと急ぎました。 案の定、良さそうな席はほぼ抑えられていたので、最上段31-16に陣取りましたけれど、続々と詰めかけてくるお客さんが上へ上へと押し寄せてくる感じ。 ほぼ満席となっておりました。
自由入場にて団員さんがステージに登場。 オケの編成は、通常配置にて 14-13-11-10-7 であったようです。 客席の照明が落ち、ステージが明るくなると、腰かけていたコンマスが起立してチューニングを開始。 コンマスもステージ袖より拍手をもって登場するのが多いので、ちょっと新鮮な感じもしました。 とにかく準備完了。 藻川さんが登場して始まります。
エルガーの行進曲「威風堂々」第4番、自信に満ちた堂々とした演奏はまさに威風堂々という言葉がぴったりな感じの演奏でした。
明るい響きで軽く弾けるような開始、芯のあるオケの響きが心地良い感じです。 要所で大太鼓がドンドコと鳴るのがとても印象的。 主題を戻し、伸びやかなオケの響きとなって、トランペットの響きが綺麗にオケ全体の響きに溶け合っていい感じ(相変わらず大太鼓はドンドコと目立ってましたけれど)。 悠揚と進め、力を内包させた響きでのフィニッシュも良かったですね。 腕慣らしとしては十二分に楽しませて貰いました。
暗転、ステージ隅に置いていたピアノを中央に持ってきました。 指揮台はやや斜めを向かせて置き、オケとソリストの両方が見やすくなるような感じかな。 準備完了、コントラバスが1本減って6本となっていたようです。 ピアノを使ってチューニングをして準備完了。 喜多さんが登場、拍手を浴びてお辞儀をしているときに井村さんが舞台袖に登場しました。 喜多さんがピアノの前に座るのに併せて井村さんも指揮台に登壇。 今回の主役は喜多さん、そんな感じですね。 チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番、さぁ始まります。
第1楽章、お馴染みのホルンの斉奏は張りのある響きで掴みはバッチリ。 引き締まったオケの響き、それを裂くような強いタッチによる喜多さんのピアノが鳴り響きました。 ピアノという楽器全体を存分に鳴らし、高音へと駆け上る鍵盤を払いのけるような勢いのある演奏で会場を魅了。 ちょっと弾き飛ばし気味かな、と思いましたけれど、曲への想いの籠ったエネルギー感というのかな、それを強く感じました(単に荒っぽい演奏とは違いますね)。 井村さんに率いられたオケは丁寧に付けている感じ。 ティムパニの一撃で盛り上がった場面のみ、井村さんらしい昂揚感ある盛り上げ方をしましたけれど、基本丁寧な伴奏でしたね。 それでもスケール感が小さくならない所がところがいい感じでした。 フィナーレはちょっと粘って力強く幕。
第2楽章、淡々としたピチカート、しみじみとしたフルート・ソロがなんとか最後まで持ち込んで、明るい響きのピアノに繋ぎました。 この後の木管アンサンブルやホルン、低弦などが見え隠れしつつ、情感をもって曲が進みます。 奮闘するも何となくぎこちないオケの響きに、逆にこんなフレーズが隠れていたのね、なんて気付いたりもしました。 しみじみとさせながらも根っこのところは明るさが滲み出ている音楽を楽しみました。
第3楽章、引き締まったオケの響きに、煌びやかでリズミカルなピアノの饗宴という感じだったでしょうか。 先ほどまでと違ってオケは自信を持ってタイトに走り、ゆったりと粘った響きとして、力強いタッチのピアノソロと渡り会っていました。 井村さん、左手を手刀にしてスパっと切っては、きちんと繋いでゆくような感じかな。 フィナーレ、喜多さんのヴォルテージはうなぎ上り。 締めの前にバンザイもしたのには驚きましたが、雄大に響かせたオケとともに豪快に締めを決めて、会場より大きな拍手が湧きあがありました。 途中色々とありましたけれど、エネルギッシュで感動的な幕切れに色々な事が吹き飛んだ、そんな感じでもありました。 当方も大きな拍手を送りました。
アンコールはショパンのマズルカ 第3番、繊細かつ思索的な演奏として会場を惹きつけていました。
15分間の休憩。 2階席の脇で立見されていた方もいましたが、なんとか席を確保されたみたい。 ほぼほぼ満席の大盛況であります。
後半はコンサートミストレスに交代。 コントラバスも7本に戻って 14-13-11-10-7 の編成です。 チューニングを終えて準備完了。 井村さんが拍手に包まれて登場。 コンミスと握手したあと登壇、客席に一礼してラフマニノフの交響曲第2番が始まります。
第1楽章、低弦の方を向いて一振り、奥行きのある響きを導き出したあと、高音弦を向いて甘美なメロディを奏でて郷愁を誘う見事な開始。 常に低弦の響きが絡む練り込まれた素晴らしい弦楽アンサンブルに酔いしれました。 コールアングレの音色も素晴らしかったですね。 井村さんらしいロマンを漂わせた演奏にどっぷりと浸かりました。 冗長であるとして作者が承認したカット版も存在する長大な曲ですが全曲版でしかも主題呈示部までも反復。 これでもかっていう感じですが、この曲が好きな当方にとっては素適な時間が延々と続いて大満足。 クラリネットのソロやヴァイオリンのソロも素敵でしたよ。 エンディグも情感を込めていたものの意外とコンパクトに巧く纏めていました。
第2楽章、ヴァイオリンが刻むなかホルンの勇壮な響きながらスマートでカッコ良い幕開け。 軽快に走ってゆきますが、すっと退いてクラリネットの柔らかな響き。 そして哀愁を含んだ弦楽アンサンブルが大きく包み込むよう。 そしてまた勇壮なホルンが戻ってきてカッコ良かったですね。
そして井村さんの踏み込みの強さそのまま場面転換を見事に決めました。 タイトな音楽、緻密ながら力感あるアンサンブル。 常に低弦が曲を支えているし、チューバやバス・トロンボーンなど低音金管楽器もいい感じで絡んでいて素晴らしい。 要所をバッチリと決めつつ走ってスピード・アップ。 カッコ良い音楽です。 最後はそっと纏めてまた見事でした。
第3楽章の前にチューニングを実施しましたが、冒頭やや乱れてちょっと残念な開始となりましたが、懸命に繋いでロマンティックなメロディを紡ぎます。 クラリネットのソロに弦楽アンサンブルの音量がやや大きい?(ソロが音量小さい?)。 ここもちょっとチグハグな感じを持ちましたけれど、大きく歌い上げる場面にて軌道修正完了。 しだいに熱気も帯びてきました。 ぐっとタメを効かせて盛り上げたピーク、これをすっと退かせて各ソロがしっとりと歌って情感たっぷり。 美しい音楽が次第に雄大になり、最後は濃厚なロマンを感じさせて締め括りました。
終楽章、井村さんが軽く伸びあがって軽快な音楽を導き出しました。 芯のある響き、低弦や低音金管楽器が彩られています。 井村さん、こんどはしゃがみ込むようにして音量絞るなど、本領発揮? 主題戻して躍動感のある音楽ですが、さすがに長丁場だからでしょうか、けっこう抑制も効かせて歌い上げる感じでもありました。 集中力を高めて入った全奏でも整った響きとしてやや淡々と進めていましたし、大きく伸びあがるようにして盛り上げた音楽も雄大な響きとしていましたが、その後は上下運動を基本として纏めている感じかな。 エンディグも力を込めたオケの響き、これを指揮棒で右下から左上に斜めに切り上げるようにしての幕切れとしました。
随所に井村さんらしいロマンを漂わせた演奏でしたが、それにどっぷりと浸かれた第1・2楽章が素晴らしかったですね。 終楽章の盛り上がりも良かったけれど、聴き手としての体力も前半2楽章で消耗していたのかもしれません。 主題呈示部の反復もしっかりとこなした第1楽章はたっぷりと30分。 カッコ良いフレーズをきちっと聴かせてもらった第2楽章は秀逸でちっとも長さを感じず、たっぷりと楽しませてもらう事が出来て幸せでした。
アンコールはエルガーのエニグマ変奏曲より「ニムロッド」、指揮棒を持たない井村さんの濃密な演奏でしたね。 終演は16時半、たっぷり2時間半の演奏会となっていました。 ほぼ満員となったホール、夏の名残を感じた暑い1日の熱い演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。