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大阪市民管弦楽団 第89回定期演奏会 |
意欲的なプログラミング、真摯で前向きで意欲ある演奏(戻る)
日時:2019年3月10日(日) 14:00開演(13:00開場)
場所:ザ・シンフォニーホール曲目:J.シュトラウス2世/喜歌劇「こうもり」序曲
ヒンデミット/組曲「気高き幻想」
ブラームス(シェーンベルク編曲)/ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)
(アンコール)ブラームス/ハンガリー舞曲 第5番
指揮:藏野雅彦
ヒンデミット、シェーンベルク、意欲的なプログラミングですが、演奏もまた真摯で前向き、とても意欲ある演奏でした。 みなさん聴いたことのない曲だから、ちょっとくらい間違っても、ちょっとくらい手かげんした安全運転の演奏でも・・・なんていう雰囲気は無かったですね。 藏野さんの的確で解りやすい棒によるコントロールが何よりだったと思いますけれど、どの場面でも全力で曲に向き合っていたオーケストラを讃えたいと思いました。
冒頭の「こうもり」序曲、藏野さんのハナ息とともに勢いよく始まりましたが、やわらかなオーボエや弦アンサンブル、たっぷりとさせて優雅に進めてゆきます。 手慣れた藏野さんの棒、抑制かけて軽く抑揚かけて歌わせますが臭くならず、勢い増しても力まずと、琥珀色のアンサンブルを堪能しました。
ヒンデミットの組曲「気高き幻想」、重層的なアンサンブルで始まった「導入部とロンド」。 コントラバスの響きをベースに、第2ヴァイオリンとヴィオラが中核を占めていました。 フルートの落ち着きのある音色も素晴らしいものでした。
「行進曲とパストラール」では、ピッコロの愛らしい響きで始まりました。 ここでも重層的に響かせた弦アンサンブル。 音量を増しても力みなく音圧を感じる落ち着いた響き。 また緊張感を高めてもヒステリックならない。 たっぷりとそしてしっとりとさせた美しい音楽でした。 終曲の「パッサカリア」は音圧を感じさせた低音金管楽器もまた全体に見事に調和していました。 いろいろな楽器が絡んでゆきましたが、藏野さんの見事な交通整理で形式的になることなく、分かりやすく客席に音楽を届けてくださいました。 それに見事に応えたオケ、響きを十分に内包させての充実したフィナーレでした。
20分間の休憩を挟んで、シェーンベルク編曲によるブラームスのピアノ四重奏曲第1番の管弦楽版。 原曲もどのような曲が思い出せないので、シェーンベルク編曲というよりシェーンベルクそのものの音楽を楽しんだ気分。 特に第2・4楽章は打楽器による多彩な響きが完全にブラームスを超越した感じでしたね。 しかしどの楽章でも、上手なソロのメロディも出てきますが、特定の楽器が突出するようなことはありません。 音色が統一され、相当練習を積まれたことでしょう。
腰の座ったサウンドで始まった第1楽章、マッチョな音楽でムキムキのブラームスだったでしょうか。 第2楽章は立体的なサウンド、オーボエが巧かったですね。 あと第2ヴァイオリンも奮闘していました。 粘り強い響きの行進曲とした第3楽章華やかながらも重層的なサウンドを楽しみました。 終楽章はカラフルなアメリカンサウンドだったでしょうか、ノリよくギアを一段上げてのフィニッシュとなりました。
いずれも真摯で覇気を感じる演奏に大きな拍手を送りました。 オケの皆さんもやりきった感のある表情も垣間見えました。
アンコールはお馴染みのハンガリー舞曲。 堂々とした凱旋行進曲のような気分になった演奏でお開き。 充実した演奏会でした。 皆さんお疲れさまでした。
以下、未稿