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オーマンディ/フィラデルフィアの「四季」

洗練された精緻なアンサンブル(戻る

毎年この時期になると「ニュー・イヤー・バロック」と言っているような気がします。
新年早々NHKのFM放送でバロック音楽を流していたのは30年程前のことになりますけれど、年始の爽やかな雰囲気にバロック音楽はとてもよくマッチしていると思いますし、「ニュー・イヤー・バロック」という言葉の響きもまたとても良いと感じていますので許してください。

ということで今年も年始早々からバロック音楽を聴いています。 今年はオーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団によるヴィヴァルディの「四季」。 えっ、と思われる方も多いと思いますけれど、意外と言っては失礼になりますが、フィラデルフィア管弦楽団の洗練されて精緻なアンサンブルが清々しくまた優美でもあり心地よい四季の演奏にこのところちょっとまいっています。

このレコード、昨年末に御茶ノ水ディスクユニオンにて100円で捕獲しました。 オーマンディ音の饗演1300シリーズの1枚(vol.47)です。 廉価盤フリークの方にとっては、オーマンディは嫌いであっても憶えておいでではないでしょうか。 独奏はアンシェル・ブラシロウ(vn)と書かれていますけど経歴などは不明(検索したら自サイトが引っかかりました)。 明快で小気味良い響きはジュリアード系の響きみたいな感じです。 当時のコンサートマスターでしょうか。 なお演奏はマリピエロ編曲と書かれていますけど、スコアの特徴などは知るよしもありません。 ま、とにかくオーマンディのレコードが100円だったので捕獲した、そんなところです。

ところでオーマンディ/フィラデルフィアといえばフィラデルフィア・サウンド。 コージャスなアンサンブルといったイメージが染み付いていて、未だに評価が低いようです。 でも、ここに聴く四季の演奏は大きな編成ながらよく揃った合奏で、バロック音楽らしいすっきりした味わいや妙味も感じられます。 もちろん冬の第3楽章のような堂々とした終わり方など、大編成の威力を発揮して全曲を締め括る場面もありますけど、全体的には溌剌とした演奏で見事に纏ったアンサンブルを聴かせます。 また聴けば聴くほど、精緻なアンサンブルで全体をすっきりと纏め、しかも暖徐楽章でのぬくもりをも醸し出す巧さ、そしてこれを纏めあげているオーマンディの手腕に舌を巻かざるをえません。 さすが、ともいえる巧い演奏なのですけれど、その巧さがまったく鼻につかないところがまた凄いところではないでしょうか。

なおこのレコードの曲目解説(坂 清也さん)。 オーマンディの音楽が世間では評価がかなり低いことを念頭において以下のように述べています。

フィラデルフィアのサウンドこそ今日の大衆化社会に適応した第一級のものである・・・音楽は何よりもまず聴く人を楽しませるものであるという信念が聴き取れる・・・しかも四季という音楽に人生や人間の意味を求めようとすることはひいきの引き倒しでしかない・・・これは楽しむための音楽・・・まさしく第1級の娯楽品・・・オーマンディはその1点に全力をそそいでいる・・・

言われていることの一つ一つは分からないでもありませんけれど、ここまで書き連ねて自虐的にも思える論調が気になります。 大変なことをまったく大変でなさそうにスラスラっと聴かせてしまう巧さについても言及して欲しいところです。
とにかくオーマンディのフィラデルフィアサウンドはムード音楽(お恥ずかしながら僕は中学生の頃からつい最近までそう思っていました)、そんなイメージを払拭させるべく今年もオーマンディ再評価をしたいと思わせたレコードでした。