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ヘーグナーのモーツァルト/ホルン協奏曲全集 |
牧歌的なホルンと明るいVPOの響き(戻る)
ウィーン・フィルのホルン奏者ギュンター・ヘーグナーがF管ヴィーナー・ホルンを吹いて録音したモーツァルトのホルン協奏曲全集。 しかも伴奏がカール・ベーム指揮ウィーン・フィルという胸踊る組み合わせのレコードです。 これが300円で投げ売られていたのですから救出するしかないです・・・っていつもこのパターンばかりなんですけどね。 それはともかくとして、とても優雅で楽しい気分にさせてくれる演奏です。 早いパッセージなどちょっともたつくようなところもありますけど、これとて愛嬌のようなもんです。 伴奏のベーム/VPOも基本は手堅くやってますが、若干リタルダンドをかけるような場面も散見され、牧歌的なホルンと明るいVPOの響きに酔わされるレコードです。 お気に入りになってしまいました。
このレコードは1979年録音のレギュラー盤。 盤面はとても綺麗なんですけどジャケット裏面に若干のシミがあるので投げ売られたようです。 儲けた! な〜んて思って帰ってきたのですが、レコード針を落としたときに耳を疑いました。 ホルンの音が微妙に割れるんです。 ノイズです。 古い針を使って音の振幅が大きい部分に目に見えないキズがついてしまったような感じ。 かなりショックでした。 でもまぁ中古レコードを買う時につきまとうリスクですからね、内心諦めもしたのですが、何度か聴いているうちにきちんとした音で再生されるようになりました。 キズではなく溝に入り込んだ細かなゴミだったようです。 それが針に付着して取れていったのでしょうね、諦めずに聴いていたから復活したようなものです。 それほどこのレコードは惜しい気がしましたし、魅力ある演奏にも感じましたのでノイズまじりでもしつこく聴いていました。 この執着が功を奏したようです。 ま、それで嬉しくて感想文も書いてみる気にもなったのですけど、何事もちょっとしたことで判断しないことですね。
ところで、この演奏で使われているF管ヴィーナー・ホルンは日本のヤマハ製のYHR−801だそうです。 ジャケット写真もこの機種とのこと。 聞いた話では、ホルンだけでなくヴィーナー・オーボエなども欧州では入手困難になっているらしく、奏者から依頼されて作られたヤマハ製が多く使われているようです。 西洋崇拝でコピー製品を作るのが巧い日本人ということもあるのでしょうけど、伝統を重んじるところで共鳴するものがあったら嬉しいな、なんて考えたいですね。
さて演奏なんですが、第1番での伴奏でちょっとリタルダントをつけるあたりからして明るい気分が漂ってきますね。 この曲については、これまでザイフェルト/カラヤン/BPOの美感を漂わせた演奏がいいなぁと思っていたのですが、これがなんだか正確無比な演奏のように思えてきます。 ヘーグナーのはもっと自由度の高い演奏っていうのでしょうか。 BPOとVPOの違い、なんていう安直(?)な答えがあるかもしれませんね。 ともかく第4番や第3番の第1楽章でのヘーグナー自身によるカデンツァはヴィーナー・ホルンの魅力を存分に出したものです。 とにかくこのモーツァルトの佳曲について細かな部分をとやかく言うのはヤボだな、っていう気にさせるような演奏でもあります。 明るく心はずむメロディをヘーグナーの牧歌的で伸び伸びとした響きでもって味わってちょうだい・・それで充分でしょ・・っていう感じ。 ゆったりと身をまかせて楽しみたいレコードです。 音が蘇って本当に嬉しい。