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ガラグリー/シュターツカペレ・ドレスデンの「南国のばら」 |
しなやかでチャーミングなシュトラウスのワルツ集(戻る)
カール・フォン・ガラグリーは、ハンガリー生まれでフバイ門下のヴァイオリニストとしてキャリアをスタートし、ベルリン・フィルの首席奏者からスウェーデンに移ってストックホルム・フィルの首席、そしてエーリッヒ・クライバーに認められて指揮者に転じた人。 Berlin Classics からシベリウスの交響曲第1番、第2番が出ているが、いずれも推進力を持った素晴らしい演奏である。 この指揮者のことは、ごく一部の人にしか知られていないような存在だが(音楽の友社のムック本「指揮者のすべて」にも載っていないが)、腕の確かな指揮者である。 もっと知られて欲しい存在でもある。 このレコードはディスク・ユニオンで見つけた国内盤(300円)であるが、Berlin Classics からもCD化されているようだ。
さてその演奏は、ジャケットの写真からも分かるように、帯に書かれた「シュターツカペレ・ドレスデン/「南国のばら」」の文字が示すとおり、まさしくシュターツカペレ・ドレスデンによるワルツ集といった感じ。 絹のように可憐に響く弦楽器の旋律に、チャーミングに響く木管楽器のメロディがかぶさる。 シュターツカペレ・ドレスデンという類稀なオーケストラの魅力がじつに効果的に使われた演奏になっている。 「エジプト行進曲」ではオケ団員によるコーラスまでもがじつに耳障りが良く、もう惚れ惚れとしてしまうほどの演奏だ。 このような演奏が次ぎから次ぎへと流れでてくる。 確かにウィーン情緒あふれるワルツ演奏とは基本的に異なる演奏なのだけれど、ワルツを踊れない日本人のための鑑賞用としてはうってつけの演奏といえるかもしれない。 とにかく、聴いていて実に納得度の高いワルツ集であることは確か。 さすがにシュターツカペレ・ドレスデンは巧いなぁ・・・ と思うのだが、 しかしちょっと考えてみると、オーケストラが勝手に演奏しているはずもなく、実際にこれほどまでのオーケストラ・コントロールをしているフォン・ガラグリーという指揮者の存在を考えてみて欲しい。 すると彼の美的センスが並々ならぬものであることが分かってくると思うのだが、どうだろうか。 このアンサンブルは彼が弦楽奏者出身であること、また自らの弦楽四重奏団をも主宰していたことが大きいように思える。 シベリウスで聴かせる強靭ともいえる音楽とは全く性向を異にした演奏であるが、このワルツ集もまたガラグリーの魅力・実力を伝える数少ない録音であり、聴いてもらいたい演奏である。