朝比奈隆/大阪フィルの「田園」（学研盤）


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若々しくそして懐かしい田園（戻る）

例によって数寄屋橋ハンターの俗に言う餌箱から \100円で拾ってきたレコード。学習研究社の「新少年少女世界の名曲」というシリーズもので、「１１田園交響曲＜シンフォニーへのおさそい②＞」、レコード製作は日本コロムビアとある。演奏は... と見ると、おっちゃん（驚）。ということで拾ってきた。そういえば、クラシック音楽を聴き始めたころ、おっちゃんのベートーヴェンの交響曲全集が学研レコードから出ていたっけ。懐かしいなぁ。あの頃はまだ地域のマエストロだったおっちゃんだけど、ここんところのブレイクぶりに冷めてしまう。これはいつものマイナー好みゆえなのだが、まぁそんなことはともかく、この学研盤による「田園」は実によく纏まった演奏である。大阪フィルも今よりも随分と巧いのではないかな。本当に素晴らしい演奏で吃驚した。盤質はイマイチだったが、音には問題なく、ノイズもほとんどない儲けものである。
演奏は冒頭からストレートな感情が漲っていて聴く者を惹きつけて離さない。それが終楽章まで全く途切れないのだからこれは素晴らしいのひとことにつきる。で、終ってしまっては何なので駄文を続けるが、木管楽器はやや抑え気味であるが総じて明るい音色で巧い。ホルンもかなり軽い響きながら朗々と鳴っていて安定している。弦楽器もアンサンブルがよく纏まっている。特にコントラバスがとても締まって力強い響きを出しているが、アクが全くないのが素敵である。最近のおっちゃんの演奏をまともに聞いたことがないので偉そうなことは言えないけれど、ＣＤ屋で流れているのなんかを聞くかぎりクセがあって好みではないのだが、ここでは実にストレートに音楽を展開させている。ただ少々コントラバスの旋律が杓子定規に聞こえたり、各フレーズをきちんと受け渡していくあたりなんかちょっと教科書的な懐かしさも感じる演奏である。そういえば学生時代に学校の音楽室で響いていた田園ってこんな演奏だったろうなぁ... という気もさせる。どことなく懐かしさも感じさせる田園交響曲である。しかし若々しさが漲っていてまったく飽きさせることがない。さすがおっちゃんの力量を感じさせる演奏である。
なお、少年少女向けなので解説はですます調で、漢字にはすべて振り仮名が付いているのは当たり前だが、その解説担当が宇野功芳氏であるのがなんとなくおもしろい。ただし少年少女向けなのでおっちゃん讃歌はなし。