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モントゥー/LPOのベートーヴェン「合唱つき」 |
即物的で熱く風格のある第九(戻る)
1970年に発売されたキングの1000円盤「世界の名曲1000」は、ウェストミンスター・abc原盤によるもので、これもその1枚。 契約の関係からかすぐにロンドンやテレフンケン原盤によるものに入れ替えられてたようで個人的にはこのシリーズは後者の印象が強い。 このため中古屋でこの初期GTシリーズを見つけるたびに驚きがある。 そしてこのレコードもまた数寄屋橋ハンターで300円で見つけた時にはちょっと我が目を疑ったほどである。
さてその演奏であるが上品でありながらもとても熱いものであった。 ステレオ初期の録音ということもあって、音が左右にきれいに分離されている。 このため各パートがとてもよく聞きわけられるのだが、この各パートそれぞれに勢いがあって、しかもどこかぶっきらぼうな感じのする演奏である。 余計な感情移入を排しているかのようでもある。 特に第4楽章の冒頭からコントラバスが唸りを上げているのが凄まじく、またフレーズをブツ切りにしているのも印象的である。 しかし、これらが渾然一体として見事に絡み合わさった演奏を全体として聴くと非常に暖かいものを感じるのである。 現代の即物的で冷たい演奏とは一味もニ味も違う。 なお第4楽章のバリトン独唱の前の行進曲の部分は逆にちょっと控えめであったりするのは鳴り物を控えあくまでも曲を弦楽器主体の組立てとしているからだろうか。 奇を衒わず弦楽器を実によく鳴らせた演奏であり風格を感じさせる第九である。