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ロビンソンのディーリアス「フェニモアとゲルダ」 |
1962年の全曲復活演奏(戻る)
フレデリック・ディーリアス(1862ー1934)は、英国生まれの作曲家です。 英国に帰化したドイツ人の両親のもとに生まれましたが、親の仕事を継ぐために17才でドイツに行き、その後アメリカへと渡ったのち、ドイツに戻ってライプティヒ音楽院で学んでいます。 後半生のほとんどはフランスで生活していましたが、これらの大陸的な音楽とは全く孤立無縁、独自の作風を持っています。 強いて言えば、自然から受けるイメージをそのまま音にしたような感じでしょうか。 あまり好きな表現ではありませんが、音の詩人とも言われていたりします。
さて、今回バークシャ・アウトレットでディーリアスの6番目で最後のオペラ「フェニモアとゲルダ」(全曲)のLP(IGS023/4 ,2枚組-3面)を捕獲しました。 スタンフォード・ロビンソン指揮BBC交響楽団、アンブロジアン・シンガーズ他の演奏で1962年ながらモノラル録音です。 録音の状態は悪くはありません。
解説によると1919年フランクフルト・アン・マインでの演奏からこの1962年の演奏まで上演されることはなかったようです。 なおレコードのレーベル面には Private Recording と Not for Sale の文字がありました。 記録録音でしょうか? ライブ録音ではないようで、リハーサル時に収録したものかもしれません。このオペラの原作はデンマークの文豪ヤコブセンの「ニイルス・リイネ」に基づいているそうです。 リイネという主人公の男性にまつわるフェニモアとゲルダという二人の女性の物語で、全部で11場から成っています。 管弦楽曲として有名な「間奏曲」は、このオペラの中の独立した音楽ではなく、第11場への導入部の旋律を用いて別に作られたものです(手持ちのバルビローリのLPでは第7場と書いてありましたので、ちょっと探してしまいました)。
曲は、序曲らしいものはなく、短い導入部から歌が始まります。 英語のようです。 オペラは苦手なので、このオペラでも歌も楽器の一部として聴いてしまっています。 歌が付いていようといまいと、いつもながらのどこをとっても同じようなディーリアスの音楽です。 茫洋としてまるで掴み所がありません。このようなディーリアスの曲と親しくなる方法は、音楽を固定観念で掴もうとしないことではないでしょうか。 ただただ心を開いてオーケストラから紬だされる音に身を委ねています。 これが僕にとっては実に心地好いのです。 どこか波長が合っているのかもしれません。 こんなゆったりした時間を欲しいからかもしれません。
ところで指揮者のスタンフォード・ロビンソンについては全く知りませんが、バルビローリやビーチャムのようなまったりしたような味つけをしていません。 淡々とディーリアスの音楽を繰り出してきます。 「間奏曲」として耳馴染みのある第11場の導入部から合唱が入る部分など、もう少し盛り上げても、とも思います。 モノラル録音というハンディもあると思います。 が、しかし小品集のように5・6分で勝負をかけるものではないから、このようなあっさりめのがいいのかもしれません。 小一時間の長丁場のディーリアス。 最初から最後までビーチャムというのも、考えようによっては辛い時間かもしれません。 しかし、ロビンソンは淡々としていながらも、全くダレることなく最後まできっちりとディーリアスの世界を演出しているのは見事だと思います。 惜しむらくはステレオ録音ではないということでしょうか。