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ケンプ、ケンペン/BPOのベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 |
質実とした美しさ(戻る)
またLPを聴くようになってからモノラル録音が苦ではなくなった。 このケンプの皇帝もグラモフォンのオリジナルスとしてリマスターされた復刻CD(POCG3598)があるが、いくら音が良くなったとはいえCDでモノラル録音を積極的に聴きたいとは思わない。 ステレオ装置の問題が大きいと思うが、CDだとどこか平板に聞こえるような気がするのである。 しかし中古LPだと安いのでモノラル録音でも平気でばんばん買うのだが不満に思ったことはない。 そしてこのLPも初出なんかではなくグラモフォン・スペシャル(\1,300円盤)だが充分に音が澄んでいるし、暖かさや奥行きも充分に感じる素晴らしい録音である。 300円だったが盤質もすこぶる良く、その点でもめっけもんであった。
さて演奏は飾り気のない質実とした美しさをたたえた名演である。 演奏者からして確かにドイツ的であるのだが、豪胆で力強いのとはまたちょっと違う深い味わいを強く感じる。 特に第2楽章が素晴らしい。 ケンプの即興性もあいまって比類のない美しい楽章となっている。 またここから第3楽章に流れこむあたりの間合いの取り方もちょっと息をのむほどである。
またアシストしているのは、オランダの巨匠パウル・ファン・ケンペンとドイツの田舎オケの風情の残っているベルリン・フィル。 戦犯として戦後の活躍は地味だったケンペンだが、もっと評価されてもいい指揮者だと思う。 またカラヤン臭のないちょっとささくれだった響きがするベルリン・フィルも魅力的である。