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ニコレ/小林のモーツァルト・フルートソナタ

音楽を遊ぶ(戻る

グラモフォンの1,300円盤シリーズSPECIALの1枚。 ちょっと前までは室内楽には目もくれなかったので、このレコードを中古レコード屋さんで見つけたとき、うわぁ〜こんなレコードもあったんや、と目を見張ったものです。 ニコレと小林道夫によるモーツァルトですからね、しかも値段が200円とあっては躊躇することなんてありません、期待に胸踊らせて持ち帰ったレコードです。

話はちょっと横道にそれてしまいますが、廉価CD特に輸入盤を「安いから」という理由で多く買い求めていた時期がありました。 時にはその中に室内楽を含めることもありましたけれど、結局のところ一度聴いてオシマイといった感じになりがち。 もっとも纏め買いすると大抵このようになってしまうのですけれど、室内楽には知識も無いですから余程の思い入れのあるものでない限り2度は聴かないのですね。 
でも廉価LPしかも国内廉価盤に主軸を移してホント良かったなぁ・・・と思うのは解説があることです。 しかもしっかりと書かれたものが結構あります。 輸入CDでも語学に堪能ならば関係ないのでしょうけれど、室内楽は未知な分野だけにこれでぐっと曲が身近に感じられます。 本当にこれは嬉しくて、正直にこのレコード買ってよかったな、なんて単純ですけど、思えてしまうわけです。 永遠のクラシック音楽初心者なんですもの。

さて、このレコードの解説は浅里公三さん。 初出の小林道夫さんの解説を紹介しながら、とても丁寧な筆致で書かれています。 例えばこのK.10〜15の作品は通常ヴァイオリン・ソナタとして扱われていること、まだバロック時代の習慣が残っていて任意の楽器を選べるようになっていること、そしてこの当時のソナタはまだピアノ(チェンバロ)が主導権を握っていたことなどが解ります。 またこのレコードでの演奏は、ラインハルト版とブライトコプフ版とベーレンライター版の3つをニコレと小林道夫が細かく検討したいわばニコレ=小林版の演奏であったり、使用しているピアノは小林道夫の希望による1870年製のベヒシュタインだそうです。 このベヒシュタインは、ハンマーやハンマー・フェルトが当時のままで古い奏法がよく通じるということも書かれていて、いちいち頷いたり感心しながら読み進んでいけます。 これだけでツウになった気分になれるのも永遠のクラシック音楽初心者の特権でしょう(笑)

さて肝心のこの演奏ですが、まさに音楽を遊ぶといった趣きが感じられます。 
伸びやかなK.10、優美なK.11、落着いたK.12と1曲毎に表情が違い、モーツァルトの成長を見事に表現しているようです。 そしてB面になるとその成長の速度もグンと増しています。 特にK.13の第2楽章など、憂愁にみちた表情など8歳や9歳の少年の手になるものとは思えない、と解説に書かれたとおりの演奏です。 
ニコレはいつものように抑制のきいた渋い音色が素適です。 小林道夫もまた端正な響きで曲をしっかりと支えています。 これらの曲を華やかなギャラント・スタイルにしてしまうときっと軽くなりすぎてしまうことでしょう。 それをぐっと抑えても見事なまでにモーツァルトらしい愛らしい音楽の遊びを聴かせてくれる佳演だと思います。