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ヘルマン・クレバースのヴィヴァルディ「四季」 |
流麗でかつ清潔な四季(戻る)
ヘルマン・クレバースは、オランダの誇るヴァイオリンの名手であり、長くコンセルトヘボウのコンサートマスターを務めた人である。 そのクレバースが演奏するヴィヴァルディの「四季」レコードが100円で投げ売られていたので救出してきたのだが(コロムビア・ダイアモンド1000シリーズ)、流麗な響きのなかに高雅さを持った清潔で素晴らしい演奏に心を打たれた。 アーヨ/イ・ムジチのような重厚さや、ミュンヒンガーのような透徹した「四季」とはまったく違う中庸だが素晴らしい「四季」の演奏である。
クレバースのヴァイオリンの響きは、じつに高雅な香りをもっているのだがまったく押しつけがましさがないのが素晴らしい。 さらさらとしている。 これはコンサートマスターとしての経験の長さからくるものなのだろうか。 そんなクレバースのヴァイオリンの響きが堪能できるのはやはり暖徐楽章であろう。 たとえば春や冬の第2楽章で、しみじみと唄いあげるヴァイオリンの響きが素敵である。 特に冬の部分は、第1楽章を技巧的にかちっと決めたあとだけに、これに続く第2楽章でのしみじみとした響きにぐっとくるものがある。 そしてそのまま泣き出しそうな響きにも聞こえる第3楽章の冒頭へと続いて、最後はまたかちっと決めて曲を閉じるあたりが実に素晴らしい。 冒頭の春の部分は少々固い音色で、オケも少々リタルダントを効かせたようなメリハリをつけてコンパクトに纏めたような感じがする。 清潔感の漂う演奏である。 演奏全体を振りかえってみると、春の部分で述べたような几帳面さがちょっと顔を覗かせるように聞こえる場面もあったりもするが、これは指揮者とオケによるものが大きいように思える。 しかしそれもまた媚びない真摯さを物語るようでもある。 中庸だがとても素晴らしい「四季」の演奏だと思う。