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コンソルティウム・クラシクムのベートーヴェン:七重奏曲 |
室内楽の楽しさを満喫(戻る)
先日の出張時、1枚100円でゴミのようなレコードの中から発掘したレコードです。 これがなかなか素適で、録音も悪くなく、室内楽の楽しさを満喫させてくれるものでした。 春先の清々しい風を室内に入れながら聴くのにはもってこいです。 この曲の愛らしさ、愉しさを改めて教えてもらったレコードになりました。
このレコード、日本コロムビアのダイヤモンド1000シリーズです。 しかもベートーヴェン生誕200年記念レコードのシールが貼付されています。 1969年の年末に出たもののようですね。 インレートカードでは、評論家の村田武雄さんが、クリップスのベートーヴェン交響曲全集を推薦する、と題した文章のなかで「真の庶民性の展開」と述べられています。 21世紀になってしまった今日、CDにおいてもまたこの1000円盤というのが庶民的な基準として維持されているのが不思議な感じがします。 もっとも最近の1000円盤CDの中には2000年のデジタル録音までラインナップされているのには驚かされてしまいますけれど。
さて、このレコードが出ていた当時の1000円盤というと、安かろう悪かろう的なイメージがありました。 もっとも今からすると、かえって貴重に思えてしまう無名演奏家(と勝手思い込んでいた人が多かったのですけど)のレコードを買うのはためらわれたものです。 この七重奏曲の中古レコードを最初に手にしたとき、それと同じ気持ちを持ちました。 しかし1ヶ月ほどたち、再訪して改めて手にとって眺めてみたら、なんとなく惹かれるものを感じましたので連れて帰りましたけど、こおいう感覚ってよく当るのですよね。 なお家に帰ってコンソルティウム・クラシウムを調べてみると、最近でも活躍している団体のようです。 全く同じメンバーではないと思いますけど、結構有名なのかもしれませんね。
肝心の演奏ですが、全体のバランスの良さが何より魅力的です。 しかも録音が明瞭なので、各楽器の動きもよく分ります。 そして、時折り野太く響くホルンにはパンチがあって、まったく退屈しませんね。 それよりもモーツァルトから続く時代という感じがして、愉しい気持ちにさせてくれます。 爽やかな春先によく似合う曲・演奏ですね。 第4楽章なんかほんとそんな感じ。
実はこの七重奏曲。 スプラフォンの輸入盤LP(デジタル録音)でチェコ・ノクテット・メンバーによる演奏を持っていますが、ほとんど新品状態のままなんです。 だからこのレコードも買うのをちょっとためらったりしたんですけど(いくら安くても聴かないレコードは買わないようにしています、安いのにこしたことはないけど、聴かないのならムダですし)、このレコードを聴いてから、逆にチェコ・ノクテット・メンバーのレコードも聴き返してみたほどです。
どちらが良い演奏なのか、そんな優劣をつける気持ちなどありませんけど、このような気持ちにさせてくれた素適な演奏であることには間違いありません。 そしてこのような演奏が次々にリリースされていた1970年初の1000円盤ブームの頃。 単に安いだけでなく、内容もまた充実していたことをこのレコードを通じて改めて実感しました。 これもまた掘り出し物でした。