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ノイマンのマーラー/交響曲第9番 |
新古典的で格調高い名演奏(戻る)
このところアブラヴァネルのマーラーの交響曲第7番に端を発して、ちょっとしたマーラーのマイ・ブーム状態。 第7番の比較試聴時も、CD/LPとりまぜて聴いてみましたが、圧倒的にCDの枚数が多いのは、マーラーのレコードは2枚組が多くて買えなかったから。 社会人になってやっとお金も回るようになった頃、世の中はCD時代になってましたが、僕は頑なにCDに走った人に捨てられた中古LPでマーラーのレコードを集めていたものです。 そしてこのノイマン/チェコフィルによるPCM録音されたレコードもそんななかの1枚です。 今は無き毎日会館にあった堂島ワルツ堂で捕獲しました。
マーラーの交響曲は、先にも書いたように、廉価盤でしかも1枚もののLPしか買えなかったので、ワルター/NYPのモノラル盤(ソニーの1,000円盤)にはお世話になりました(こおいう人多いですよね)。 その関係でもありませんが、第9を最初に買ったのはワルター/コロムビア響によるニュー・リミックス・マスター盤。 これ、新品で買いましたよ。 定価4,000円でしたが、京橋ショッパーズプラザ(ダイエーの入っているビル)のワルツ堂で2割引になってました。 結婚前でお小遣いも潤沢だったし、劇的に音質が改善されたことが雑誌でも評判になったのも気になってましたしね(ま、それだけソニーのレコードの音質は酷いものがありました)。 とにかく第9もワルターに導かれてマーラーの扉がまた一つ開かれました。
しかし、このノイマンのレコードを手にしたとたん、他の交響曲と同様にワルターから離れてしまいました。 確かにワルターはマーラーの弟子として聴くべきところは多いと頭では思うのですけれど、ノイマンのような新古典的でスッキリした解釈により魅力を感じてしまいます。 特にこの第9番、生死感をどのように表現するかで印象もまた大きく異なってきますが、ノイマンはそのようなことから一歩離れて純音楽的に曲をしっかりと見据えています。 かといって解剖学的な冷たい感じや突き放した虚無的な感じはなく、逆に同郷の作曲家への共感もひしひしと感じさせる演奏です。 4つの楽章をきちんと描き分けながら全体として連続しているという点でも非常に聴き応えのある演奏として構築されています。 個人的には、第2楽章の最後のピッコロ(?)の音をちょっと尻上がりに吹かせたあと頑強な第3楽章にガツンと入るあたりなんて、この曲全体の中央部(頂点)を感じさせるのに充分な配慮を感じずにはいられません。
そして更に言うならこの演奏の魅力はチェコフィルという稀代のオーケストラを駆使した艶やかな弦楽器の響き、独特なコクを感じさせる管楽器の響きでしょう。 常に格調高く素晴らしい演奏を展開しています。 バルビローリ/BPOも実にオケが巧い演奏ですが、叙情にみちた表現が優先しているようです。 アブラヴァネル/ユタ響の演奏は基本的にノイマンと同じような解釈なのですが、いかんせんオケの精度が足りないために素直な感じになってしまってます。 また今回ワルター/コロムビア響のレコードも久しぶりに聴き返してみましたが、やはりPCM録音に比べると録音精度が少々甘くなるのは仕方ないとしても、オケの器が小さいこともありますがフレーズの切り返しや音の重ね方、響き合わせ方が独特で(良く言うと孤高の表現となるのでしょうがちょっとノロいため)のめりこむにまでは至りませんでした。
それでもこの曲は名曲ですからね、それぞれに素晴らしい面があって聴き飽きるようなことはありませんでした。 しかし今の僕としては、この1982年PCM録音のノイマン/チェコフィルの第9を一番に支持したいと思っています。