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W.スタインバーク/ピッツバーク響の悲愴交響曲 |
質実として穏やかな悲愴(戻る)
これもオイストラフ/オーマンディのメンコンと一緒に持ち帰った米国キャピトル盤。 200円だった。 ウィリアム・スタインバークといえば、グラモフォンからボストン響を振ったホルストの「惑星」が手を変え品を変えての登場でお馴染みだろうか。 いわゆるドイツの頑固なマイスター的指揮者なのだが、活躍の場がアメリカだったためか、一般的には忘れ去られようとしている指揮者ではないだろうか。 しかしこれほどまでにアメリカのオケをドイツ的に響かせる指揮者はいないと思うのだが残念なことである。
さて悲愴交響曲といえば、個人的には、粘っこい弦楽器にまた見得を切ったような金管の咆哮が安っぽく聞こえたため長くこの曲を好きになれなかったことを思い出す。 それを変えたのがザンデルリンク/ベルリン響の演奏である。 このドイツ音楽のような構成感を持った演奏を耳にして、この曲の聴き方が180度変わったのだが、このスタインバークと主兵ピッツバーク響の演奏もまた基本的にザンデルリンクのと同じドイツ流の演奏である。 しかしながら、スタインバークはことさらに大きく事を構えていない。 じつに淡々と演奏している。 特に第3楽章のフィナーレは盛大に持りあがって... ということを期待するむきには見事に裏切られる。 これは録音の関係というよりもこのスタイルで全体を通しているのである。 見得を切るように金管楽器や打楽器を浮き出させることはなく、弦楽器主体の演奏なのである。 このコンビのベートーヴェンでは凄い勢いを聴かせる演奏もあるのに、この悲愴では実に穏やかなのである。 冒頭と第4楽章は諦観、そんな感じさえする。 派手さはまるでないけれど、なんかしみじみと聴き込んでしまうような演奏だった。 確かにこれでは一般ウケはしないけれど、捨て去ることなどできない演奏である。