BQクラシックス My Best Quality Classical Music Site 〜 堅苦しいと思われがちなクラシック音楽を、廉価盤レコード(LP)、CD、アマチュアオーケストラ(ブログ「アマオケ大好き、クラシック大好き」)などで気軽に楽しんでいます。
TOP演奏会感想文廉価LPコンサートホールLP廉価CD資料室掲示板
ギレリス、コーガン、ロストロポーヴィッチ/大公

青春の血が漲る演奏(戻る

2007年4月27日、20世紀後半を代表するチェロの巨匠ロストロポーヴィッチが亡くなった。 享年80歳。 中学生の頃にクラシック音楽を聴き始め、その頃に活躍されていた方々がどんどんと鬼籍に入られてゆく。 追悼の意をこめて彼の音盤を探してみた。 有名なところでは、シューベルトのアルペジョーネ・ソナタや、ブリテンのチェロ・ソナタ、ターリッヒ指揮によるドヴォルザークのチェロ協奏曲もあったけれど、ロシアの巨匠エミール・ギレリス、レオニード・コーガンとともに演奏したベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」をチョイス。 1955年録音、いずれの奏者も30歳前後、青春の血が漲る若々しい演奏に心躍らされました。 若いって素晴らしい。 心よりご冥福をお祈りします。

まずこのレコード、新世界レコードによる国内盤。 1955年録音、製造1957年6月と書かれているが、原盤の発売が1957年じゃないかな。 後年、日本コロムビアの1,000円盤ヒストリカル・レコーディング・シリーズ(HR-1003)として発売されたものと同じ録音と思われます。 モノラル録音ながら、録音状態は良いのだけれど、いかんせん盤の状態はイマイチでチリチリノイズが。 でも、鑑賞には差し障りはありません。 今は無き数寄屋橋ハンターによる捕獲品で、キズ物のシールが貼ってあったのを承知で購入したものです。 300円のシールも付いてます。

さてこの録音が行われた1955年。 ギレリスが一番の年長で39歳、コーガンは30歳、そしてロストロポーヴィッチは27歳であるようです。 平均年齢32歳。 この年齢だけ見ても若々しさが伝わってきます。 鋼鉄のピアニストと呼ばれたエミール・ギレリス、虚飾を排して無骨ともいえる演奏を展開するレオニード・コーガン、彼らと組んだ最年少のロストロポーヴィッチ。 この3人、当時巨匠と呼ぶのにはまだ少々早いと思いますが、巨匠・大家の時代だったのだな、と思わされます。

そして演奏内容は、終始最年長のギレリスがリード。 妹婿になるレオニード・コーガンが息のあったところを聴かせて、ロストロポーヴィッチも臆することなく確かな技巧と豊かな音量で演奏を支えています。 伸びやかですね。 ぐぃぐぃと引っ張るギレリスは少々荒っぽい感じもしますが、いずれも若さの漲った演奏で、まるで青春の曲のよう。 この曲を作曲したときのベートーヴェンは41歳、献呈されたルドルフ大公はなんと21歳。 だから、この若々しい演奏は正しいのかもしれません。 この演奏を2度聴き直しましたが、若いって素晴らしい。 素直にそう感じました。

このレコード、正直なところ、今までに1・2度聴いたのみでしたが、今回この曲に対するイメージが一変しました。 これから「大公」を聴くときには、このレコードのことを思い出すでしょう。
皆さん鬼籍に入られてしまいましたが、心よりご冥福をお祈りいたします。