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クルト・レーデルのバッハ「ブランデンブルグ協奏曲」

優しい眼差しのバッハ(戻る


最近体調が思わしくないせいか中古レコード選びも大曲からバロック音楽や室内楽が多くなってきた。 この白地のエラート盤に自然と手が止まる。 そして今回は1枚300円でクルト・レーデルのブランデンブルグ協奏曲がひっかかってきたので捕獲した。 なんでもエラートにはレーデルのブランデンブルグが2種類あるようだが、アンドレ、ラクロワなどの名人を擁した新盤(といっても1961年頃の録音)ではなく、今回捕獲したのは旧盤のほうである。 それでもこのレコードは週刊FMなんかの廉価盤特集ではいつも推薦になっていた名盤であり馴染み深いものである。

さて演奏はとても優しい眼差しを感じさせるブランデンブルグ協奏曲である。 どの曲のどのフレーズをとっても刺激的な部分はない。 かといってキレが悪く、焦点の定まらない微温的な演奏であるかというと、そおいうのとも全く違う。 落ち着いた大人の味わいのようなものを感じさせる演奏である。 バッハへの深い愛情をたたえているようだ。 第5番なら第1楽章の長大なチェンバロのカデンツァにいたってもことさらに技巧をひけらかすことなく優しい眼差しを感じさせる演奏である。 ロ短調の第2楽章も深刻になりすぎず深い悲しみのようなものを淡々と演奏することで表現しているようだ。 第3楽章は自由さを取り戻すがはしゃぎすぎず各フレーズが自然に溶け合ってじつにまろやかである。 といったぐあいにどの曲のどの演奏も誰かが突出することなくまろやかでよくまとまっている。 強引にこちらを向かせようとすることがなく、自然さと優しい眼差しをもったこんな素晴らしさは今ではもう流行らないのだろうけれど。