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コルボ/ローザンヌ室内管によるハイドンのテレジア・ミサ |
宗教とは楽しいもの(戻る)
ハイドンのミサ曲といえば、ネルソン・ミサ、戦時のミサ、そして大曲であるオラトリオ天地創造や四季が有名で、テレジア・ミサなるものの存在はこのレコードに出会うまで知りませんでした。 帯のコピー「宗教とは楽しいもの、ハイドンの温顔が典礼と二重写しだ。」に興味を持って連れて帰りましたが、確かにパパ・ハイドンらしい、シンフォニックな響きに軽快さを持った典礼音楽。 気に入りました。 このところターンテーブルに乗る回数の一番多いレコードです。 気持ちのすっきりとする曲・演奏です。
エラート創立30周年記念、エラート特選盤2000シリーズの1枚。 1983年に発売されたレコードのようです。 今年(2006年)3月に町田レコファンにて、5枚で1,000円の1つとして捕獲したのですが、ネット検索をかけてみても、この曲自体の録音がほとんど無いのですね。 ピノックとバーンスタインのがヒットしたくらいかな。 でも実演では、大阪コレギウム・ムジクムや横浜オラトリオ協会合唱団などの記録が出てきますし、あちらこちらで採り上げてられてもいるようです。 決して人気のない曲ではないようです。 ただ、邪推すると、オーケストラ部分がクラリネット2本、トランペット2本にティムパニという小さな編成なのと、特に難しい音符が並んでいるわけでもないようで、手軽に演奏会にかけやすのだと思います。 でも、売り物の録音としては(商売として)美味しくないって感じなのかもしれませんね。
でもこのテレジア・ミサ、2度のイギリス旅行で大成功したあとに作曲された一連の宗教曲のひとつ。 ネルソン・ミサと天地創造の間に位置している作品です。 ハイドン67才、まさに円熟期のエネルギーを感じさせる作品だと思います。
1799年の作曲なので、ベートーヴェンの交響曲第1番と同じみたいです。 でも作風は、モーツァルトに近い感じですね。 綺麗なアリアこそ無いものの、とても美しく楽しい宗教曲、そんな感じです。個人的には、シンフォニックで、オケと歌唱部が独立して動く「グローリア」が面白くて大好きです。
いきなりアレグロで走って始まり、それをいったん速度を落としたあと、またラッパを伴って駆け出すのが壮快です。 しかもそれを今度はアダージョかな、アルトの独唱から各ソリストが清楚にしっとりと歌いあげます。 しかも今度はそれが短調となり、しんみりとさせる合唱で歌いつづけたあと全休符。 ここで一転、ヴィヴァーチェになります。 元の変ロ長調に戻し、独唱、合唱が交互に歌い、曲全体が弾むように起伏するのは、パパ・ハイドンのシンフォニーの特徴ですね。 親しみ易い音楽の中に、格調の高さを感じて気持ちいいですね。また起伏するといえば、盤面を返して続く「クレド」も同じ。
冒頭よりシンフォニックに進み、身体を思わず揺らして聴いてしまう感じ。 この長調のアレグロだったのがやはり全休符のあと短調のアダージョとなります。 ここでソプラノの独奏から切々と主イエスの死を悼み、短調のままアレグロの合唱として復活の預言。 それが今度はフーガへと続き、最後は最初の長調に転じてアーメンと締めくくります。 素朴さを感じさる敬虔な祈りの音楽と、軽やかな身のこなしで弾むような音楽。 ハイドンのアイディアが散りばめられた、まさしくハイドンの温顔が浮かぶような感じ。 疲れた気持ちもすっきりとさせてくれる曲・演奏です。