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ロストロ&ブリテンによるシューベルトのアルペジョーネ・ソナタ |
美しく歌うチェロに溜息(戻る)
「室内楽は老後の楽しみ」などと嘯いて、マーラーの交響曲など大規模な管弦楽曲ばかり聴いていたけれど、このところ室内楽の比重が大きくなってきたように思います。 このロストロポーヴィッチとブリテンによるシューベルトのアルペジョーネ・ソナタのレコードも、手にして10年近くが経つと思うけれど、ようやく心にすぅ〜と沁みてくるようになった・・・なんてやっぱり歳とったってことかしらね。 でも、こんなに素晴らしい歌に溢れた演奏を、もっと早く自分の肥しにしておくべきだったこと、ちょっと残念です。
この演奏が1,000円でCD化(KICC-9229)されたのは、キング・レコード創業65年特別企画のシリーズだから1996年。 その年だったか翌年、当時参加していた Nifty-Serve のパソコン通信のクラシック音楽の会議室などで親しくさせていただいていたホッホさんより、買いそびれてしまったけれど関東ではこのCDが見つからなくなった、と関西でのCD捜索願がやってきたことを思い出します。 程なく大阪で見つけたCDを送ったのですが、そんな因縁というほどのことではないけれど、この曲・演奏に親しむ機会はそれ以降もいくつかあったのですが、冒頭に書いたとおり室内楽には興味なく、ようやく今頃になって聴き、感動しているわけです。 情けない話なのですが・・・
さてこの演奏、名盤中の名盤。 だからここで書くことも月並みになってしまうのですけれど、本当によく歌うロストロポーヴィッチのチェロが魅力的ですね。 シューベルトの歌の世界を、憧憬を持って、そして詩情豊かに演奏していて、聴き手の心に静かに訴えかけてくるような感じ。 ロストロポーヴィッチの表現力の豊かさに感嘆せざるを得ません。 第1楽章の2つの主題が歌い継がれながら繰返され、再現部に戻る前のパッセージも効果的ですし、終結部のテンポの落とし方も溜息が出そうです。 また今回、哀愁をこめて歌う第2楽章の旋律を追いかけていたら、戸外で囀るウグイスの鳴き声と奇妙にシンクロしたのも心が洗われるようでした。 山小屋かどこかで生演奏を聴いてみたくなりました。
なお蛇足ながら今回聴いているこのレコード、1970年の(c)マークがついているので国内初版だと思います。 見開きジャケットには、石井宏さんと三浦淳史さんによる詳細な解説に加え、全曲スコアが付いています。 またレコード盤にはZALの刻印があって(輸入メタル原盤使用ですね)、鮮明で豊かなアナログの響きが感動もまた大きくしてくれたのでは、と思います。 別に高級な装置ではないのですけれど。