フランス・ブリュヘンのブロックフレーテが大ブレイクしたもとになったレコードではないだろうか(これが売れに売れていた1972年当時、この\2,300円のレコードが買えるはずもなく諦めていたのでじつはあまりよく分かっていない)。
しかし、数寄屋橋ハンターの俗に言う餌箱で
\100円でこのレコードを見つけた時にはちょっとときめくものがあった。
100円なのだが、解説部分に少し破れやシミはあったもののレコード盤そのものの状態はAランク。
超お買い得品だった。
演奏はどの曲もブリュッヘンの強い個性が滲み出ているようである。
クナイスの演奏に馴染んでいたせいもあるが、ラ・フォリアにおいてフレーズの終りなどを修飾して強引に引っ張るところなど、ちょっと臭さも感じてしまう。
しかしブロックフレーテのみの独奏曲になると、その強い個性が演奏の大きな魅力となっていることもまた事実である。
演奏に華があるとはこのことだろう。
笛一本で聴く者をぐいぐいと弾き込んでいくのはさすがである。
とくにエイクのバタリでは曲名を言ってから演奏が繰り広げられるのが面白いし、クープランの恋のうぐいすのソプラニーノでも絶妙な息使いが堪能できる。
抜群のテクニックである。
またこの演奏を支えているのは名匠グスタフ・レオンハルトと気鋭のアーノンクールによるバス・ヴィオラダ・ガンバである。
さすがによく売れた理由がどの曲・演奏を聴いても納得できる。
さらに解説では、各演奏曲目・使用楽譜・使用楽器の説明(永田仁)の他に、串田孫一のエッセイ「笛を携えて」、永田仁による「バロック期のブロックフレーテ」という小論文まで付いている。
これらの解説文を読み、くるくると回る黒いレコードをたまに眺めながら音楽に身をゆだねる。
レコード族にとっては至福のひとときが提供される1枚である。
曲目は以下のとおり。
A面 |
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コレルリ |
ブロックフレーテと通奏低音のための「ラ・フォリア」による変奏曲
作品5-12 |
ヴァン・エイク |
バタリ |
ロバート・カー |
イタリア風グラウンドにディヴィジョン
〜
アルト・ブロックフレーテと通奏低音のための「愉快な仲間」より |
ヴァン・エイク |
涙のパヴァーヌ
(ジョン・ダウランドの「涙のパヴァーヌ」による4つのフィギュレーション) |
B面 |
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フランソワ・クープラン |
恋のうぐいす 〜
クラウザン曲集第3番 組曲第14番より |
レイエ |
ブロックフレーテと通奏低音のためのソナタ
ハ短調 |
ヴィヴァルディ |
アルト・ブロックフレーテと通奏低音のためのソナタ
ト短調 作品13-6 「忠実な羊飼い」
第6番 |
テレマン |
幻想曲 イ短調 〜
無伴奏フルートまたはヴァイオリンのための「12の幻想曲」より |