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ジョージ・セルの「水上の音楽」 |
奥行きのある豊かな響き(戻る)
ジョージ・セルというとクリーヴランド管弦楽団を指揮した演奏が圧倒的に多いのだが、申し訳無いことに、これらにはほとんど興味がない。 セルが完璧無比なコンパクトで冷たい音楽をする人という印象が強いからなのだが、これは当時のCBSソニーのレコードのせいであると思っている。 だけど三つ子の魂ではないが、どうもその心象が強くて食指が動かないのである。 しかしセルがヨーロッパのオケを録音は別である。 ベルリンフィルを振ったフルニエとのドヴォルザークのチェロ協奏曲、ウィーンフィルを振ったベートーヴェンのエグモント全曲はLP時代からの愛聴盤である。 キリっとした芯を持っているが、クリーヴランドとは違ったのびやかさのある演奏がこの上もなく素敵だと思う。
そしてこの「水上の音楽」もまたそういった1枚になった。 粘り気のあるロンドン交響楽団の特徴とキレのいいセルの指揮がよくマッチし、素晴らしい音楽をくりひろげているように思う。 このレコードは梅田の中古屋で200円で捕獲したもの。 調べてみると国内初版(1962年 フラット盤)で、輸入メタル原盤を使ったもののようだ。 盤質は古いが、セルとロンドン交響楽団の演奏を瑞々しい音質でよくとらえている。 ホルンの響きはとてもまろやかだし、弦楽器の響きも少々あつぼったいけれどキレがよくてシャキッとした手応えのある演奏になっている。 そして何よりこの「水上の音楽」はセル自身の手が入っているそうだ(ハーティ・セル編曲)。 そのせいか、より響きに力強さと壮麗さが加わっているように思う。 これまで「水上の音楽」はあまり好きな音楽ではなかったけれど、この演奏を耳にしてから色々な演奏を聴いてみたいと思うようになった。 今では古楽器が主流だけれど、まったくもって色褪せしない納得度の高い演奏だと思う。
なおセルは完璧な演奏を聴かせているのだが、けっして原典主義者ではない。 シューマンの交響曲でも様々に手をいれている。 そしてそれらが響きを厚くする方向に向かっているのが興味深いところである。 セル/クリーヴランドの引き締められた音楽像はやはりCBSソニーのレコードによって作りあげられた世界ではないのだろうか...