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ウィーンの思い出 |
クリップス/VPOのウィンナ・ワルツ(戻る)
昨年のウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートは小澤征爾の頑張ってます的な演奏だったし(トンボのえもいわれぬ響きには感心したし、一部では執拗に行われている小澤叩きをするつもりは毛頭ないけれど、真剣そのものの表情や前半の型にはまった音楽でリタイヤしてしまったことを告白する)、今年のアーノンクールもまた「舞踏への招待」で客席を向いて、ギョロ目が瞼に焼き付いてしまった。 このところのニュー・イヤー・コンサートはどうも落ちつかない。
そんな恣意的なウィンナ・ワルツではなく、たっぷりとゆったりと愉しみたいからクリップス指揮ウィーン・フィルのレコードを取り出してきた。 クリップスには、コンサート・ホール原盤でウィーン国立歌劇場管弦楽団を振ったレコードもあるけれど、これはウィーン・フィルを振った「ウィーンの思い出」と題されたロンドン・レーベルのもの。 コンサート・ホール盤と違って音が良いし、何よりウィーン・フィルの柔らかいホルンやラッパが心地良い。 弦楽器もまたソフトだけれど、しっかり芯の通った響きに重量感を感じさせる肩のこらない演奏にしばし陶酔。
ヨーゼフ・クリップスはウィーンに生まれ、ワインガルトナーに師事したウィーンっ子。 ユダヤ系のために大戦中は追放されもしたが戦後すぐにウィーンに復帰。 戦争で疲れたウィーンの音楽界の復興に力を尽くしたけれど、多くの指揮者が復帰するにつれて活躍の場がウィーンから離れていったのは残念。 でも彼がウィーン・フィルを振る演奏は一味違う。 このレコードは1964年の著作権表示(c)があるステレオ1200シリーズのもの。 ロンドンのffss録音だし、盤面には ZAL の刻印があるから輸入メタル原盤が使用されている。 ノイズのない無味乾燥なCDのような音ではなく、安物ステレオであってもLPならではのたっぷりとしたウィーン情緒が味わえる録音である。
ピチカート・ポルカのうきうきとする弾力のある弦楽器、皇帝円舞曲での華麗なワルツを踊る姿や、南国のバラでの明るい陽光までもしっかりととられえられているようだ。 同じウィーン・フィルを振ったクレメンス・クラウスのワルツは気取らずに質素。 ボスコフスキーのはサービス精神があってちょっと華美だけど、クリップスはちょうどこの中間をゆくような感じかな。 古き良きウィーン、まさしく「ウィーンの思い出」のタイトルがぴったりとくるレコードではないだろうか。
ヨハン・シュトラウス 円舞曲「美しく青きドナウ」作品314 加速度円舞曲 作品234 皇帝円舞曲 作品437 円舞曲「南国のバラ」作品388 ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウス ピチカート・ポルカ
ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団