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ボールト/LPOのシューマン「ライン」・交響曲第4番 |
暴走するライン・熱い4番(戻る)
テイチク・クラシック・コレクション・シリーズの1枚(パイ原盤)、クラシック音楽を聴き始めた頃の廉価盤による唯一のシューマン交響曲集がこれ。 当時欲しかったのだが、雑誌で「いかにもイギリス紳士であって、いわゆるドイツ的な腰の強さやロマン的な詩情に不足しがちだが、整った点で評価されてよい」(レコード芸術:1973/6、門馬直美)と書かれていたため、何度か買おうと思ったが、ドイツ音楽はドイツのオケで聴きたいと思ってパスしてしまった。 その後コンヴィチュニーによる全集が廉価で出たのを捕獲し、現在までにシューマンの交響曲集は10種類を超えた。 それでもこのボールトの演奏は何故か気になる存在であり、時を経るにしたがって余計に聴いてみたい演奏になっていた。 数寄屋橋ハンターで300円でこれを見つけた時には我が目を疑い、ちょっと興奮したほどである。 残る1・2番のLPも欲しい。
さて上記のように書かれたボールトのシューマンであるが、批評とは本当にあてにならないものである。 ラインの冒頭、オケがついてこれないほどの速度でまず度肝を抜かれる。 レコード針が飛んだのかと疑ったほどである。 ラインの両端楽章はこれまでに聴いてきたなかでも最速だと思う。 第1楽章の冒頭、オケが置き去りにされてもおかまいはない、とにかく前に進んでいく。 なんでこんなに急いで駈け抜けるのだろうか。 シューマンの熱い思いをこぼさないようにと走っているのだろうか。 とにかく速い。 しかし全体的には弦楽器を基本にした演奏である。 先に聴いた英雄交響曲と同じではあるが、ここでは悠久の響きは見当たらなかった。 中間楽章でもテンポがゆれ、熱い思いが時折顔を覗かせる。 とにかく熱っぽい演奏である。
第4番もまたラインと同じである。 弦楽器を主体としたボールトらしい演奏なのだが、ここでもまたテンポを揺らし、陰影に富んだ熱い演奏が展開される。 やはり両端楽章は速めのテンポ設定である。 低弦が響きわたるので、濃厚なロマンティシズムを感じさせる。 第2楽章はじっくりと歌うが、第3楽章のスケルツォはコントラバスが主部の主導権を握り、重量級なのも面白ろかった。
低弦の響きが英雄交響曲は安定感となって悠久の響きになっていたが、ここでのシューマンは快速を基本とし、安定よりもロマンを優先させた演奏である。 とにかく熱い。 整った点で評価されてよい... とはいったいどこにあるのだろうか。