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コシュラーのドヴォルザーク交響曲第7番 |
自然体で現代的なドヴォルザーク(戻る)
拙ページの掲示板でドヴォルザーク第7番が名曲であるとの話がありましたね。 この前の出張のとき、町田のレコファンでコシュラーさんの指揮によるこのレコードを見つけましたので連れ帰ってきましたが、これがまたなんとも自然体な素晴らしい演奏でした。
お国ものゆえ、民族的主義的な演奏を想像されるかもしれませんが、実にあっさりとした現代的な演奏だと思います。 構成感をしっかりと持った演奏なんですけれど、スィトナーさんの演奏よりも軽やかに感じるのはオケの資質によるところ大だと思います。 とにかく何度聴いても飽きのこない演奏ですね。 非常にゆったりとした第1楽章など、最初に耳にしたときこそアレって思いましたけどね、このテンポにすっかりとハマってしまいました。ところでこの曲はロンドンのフィルハーモニック協会の名誉会員に推薦された返礼のために書かれた曲です。 この曲のほうこそ「イギリス」と呼ぶのが相応しいかもしれません。
そんなことはともかく、第6番(旧番号では第1番)の好評から、この曲(旧番号では第2番)が生まれたことは間違いないところでしょう。 そしてよく言われるところのブラームスの交響曲第3番からの影響が強くあって、民俗的なメロディが次々に繰り出された第6番とはちょっと違い、構成感のはっきり打ち出した音楽になっています。 ただしメロディ・ラインはどうしてもドヴォルザークそのものといっても良いのですから、ここらをどう処理するかが指揮者の腕の見せ所のように思いますが、どうでしょうか。さてこのコシュラーさんの演奏ですが、民族主義的な感覚よりも構成感を全面に出した演奏になっています。 インターナショナルな感じのする現代的な解釈のように思います。 それは第3楽章のフリアントに独特なシンコペーションを効かせた部分とか、終楽章の独特なリズム感など、いずれもゆったりした感じなんですが妙に粘ったりせず、実にサラっと流してゆきます。 弦・管楽器とも指揮者を支えたしっかりとした演奏をしていますが、チェコ・フィルに見受けられるような独特なボヘミア調の艶とはちょっと違って、より土の香りのする素朴な響きに満ち満ちているようです。
そんな演奏の中で特筆したいのは第1楽章です。 通常10分代後半の演奏が多いようですが、ここではなんと12分44秒とクレジットされています。 2分ほど遅くなってて、確かにゆったりとしたテンポの演奏ではあるんですが、ただ遅いだけではありません。 よ〜く聴くとじっくりと歌いあげていますが、ここでもあっさりとした感じで、フレーズには余計な装飾などを付けていません。 コーダはブラームスを強く意識したことが伺え、ストレートに押し寄せてくる高揚感がじつに真摯で素晴らしいものになっています。
民俗意識におもねることなどないゆったりドヴォルザークでした。 全集が録音されているはずですので集めてみたくなりました。