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ケンペ/トーンハレ管によるベートーヴェン「運命」交響曲 |
たっぷりとして満足感のある「運命」(戻る)
レコード棚を漁っていたら、1974年チューダー(TUDOR)録音によるルドルフ・ケンペ指揮による「運命」のレコードを発見。 中古レコードを再び集め始めた2000年頃に今は無き西梅田にあった中古店(店名は失念)で捕獲したものだと思います。 なんだか印象が違うなぁと思って1〜2度聴いてそのままにしていましたが、録音の加減なのでしょうか。 今回聴きかえしてみたら、とても深い響きが印象的で、悠揚とした運命交響曲に惹き込まれてしまいました。
ケンペのベートーヴェンといえば、ミュンヘン・フィルを振った演奏を思い出しますが、全部の録音を持っていないものの、いずれもオーソドックスで媚びない演奏といった印象だというのは、多くの人の同意見だと思います。 凝縮された表現は誠実で、よく言われるように職人が丹精込めたベートーヴェンといった感じでしょうか。
しかしこのチューダー録音による「運命」。 ライナーノート(宇野功芳さん)によれば、ミュンヘン・フィルの録音(1971年)から3年後ですが、ライナーにも書いてあるとおり、聴いた印象がずいぶんと違って聴こえます。 録音法、ホールの違いと書いてありますけれど、確かにこれまでのケンペの録音とは違って、響きの深さにまず驚かされます。
冒頭のジャジャジャジャーンのフェルマータの伸ばし方など、かなり長めにしているのにも驚きます。 さらに再現部なども念を押すかのように、噛んで含めるようなジャジャジャジャーンが堂々としています。 音楽全体の流れはスムーズで、もたれるようなところは皆無ですし、管楽器を綺麗に歌わせ、きちんと絡ませるなどの巧さも光っています。 悠揚としたこの大きな表現に、これがケンペか、と思ってしまったことには否定できませんが、そんな先入観をとっぱらって聴くこの「運命」。 じつにスケールの大きな演奏で、しかもしっかりとした構成感で推進力もあって唸らされますね。 素晴らしい演奏ではないでしょうか。
久しぶりに、たっぷりとして満足感のある「運命」交響曲を堪能した、そんな感じがしました。