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「浪漫幻夢」 (藤真利子) 1981年
女優の藤真利子さんがテイチク・コンチネンタルレコードに吹き込んだ最初のアルバム。 このあと思いっきりニューウェイヴしてからヨーロピアンになって歌手から引退かしら(?)。 いわゆるニューミュージック系ですけど、随所に怪しい魅力を感じさせる佳作アルバムです。
バックバンドは一流どころを従え、全曲瀬尾一三編曲、作家には松任谷由実(作詞/作曲)、松任谷正隆(作曲)、南佳孝(作曲)、岸田智史(作詞/作曲)、湯川れい子(作詞)、三浦徳子(作詞)という面々に加え、藤真利子名義での作詞/作曲が2曲、微美杏里(藤真利子)名義での作詞が1曲(作曲は南佳孝が担当)。 いきなり凄いことやってます。
A面1曲目「裸足の伯爵夫人」(三浦徳子/南佳孝)から誘惑的で倦怠感も感じさせる女優的な歌唱。 続く「地下室のパーティ」と「青春の終わりに」は岸田智史作品で、ちょっと教科書的な感じもさせるバラード。「ウィスパー・トゥ・ミー」(湯川れい子/松任谷正隆)や「雪だより」(松任谷由実)での息を抜いた歌唱は可愛くでもどこか裏もありそう。
B面「Gemini
Vs Capricorn」(微美杏里/南佳孝)は軽快なポップス。 歌詞カードの南佳孝さんからのメッセージは「私の命のかかったレコードを、微美さんの作詞の実験台に決してしないで下さい。 ニューミュージックにこだわらず、幅広いご活躍をお祈りしています。」 見事にこのあと開花したと思います。 「The light in the memory 」(藤真利子)は名曲でしょう。 フュージョン調のアレンジも素敵ですけど、何より怪しさの滲み出たバラード。 作曲の能力もホント素晴らしい。 「シーズンオフの心には」(松任谷由実)は明るめのスローバラード、個人的にはちょっとパスかな。 「PIERRE! PIERRE! PIERRE! 」(藤真利子)は実験的要素も含んだ台詞付きの歌曲でしょう。
8分30秒の大作。 歌詞カードの藤真利子さんからアレンジの瀬尾一三さんへのメッセージ「私は瀬尾サンに「地球人とは思えない」と言われました。 でも私にとって瀬尾サンは、とても宇宙人とは思えない感覚の持ち主であると思うのであります。」
(2004.11.23)
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「狂躁曲」 (藤真利子) 1982年
女優の藤真利子がテイチクのコンチネンタルレコードに入れた4枚のアルバムはどれも女優の片手間仕事どころか、日本のポップシーンをリードするほどの凄いアルバムだった(のだが、ほとんど売れかなかったようだ)。
そして2枚目にあたるこのアルバムは最も先鋭的な仕上がりである。
このレコードの特徴をうまく説明できないので安易に帯に書いてある文面を紹介すると「このレコードは注意書をよくお読みになってからお聞きください」とある。
そしてインレートカードの注意書には次ぎのように書いてある・・・
1.躁病・自律神経失調症・夜尿症・水虫をお持ちの方は1面よりお聞きください。
2.うつ病・不眠症・胃腸障害・妊娠中の方・恋愛中の方は2面よりお聞きください。
3.小児の手のとどかない所に保管してください。
4.本盤には、劇物に該当する成分も含まれていますので、定められた用法・用量を厳守してください。
5.他のレコードと併聴しないでください。
6.本盤の試聴により、アレルギー症状(例えば発疹・かゆみ等)があらわれた場合には、試聴を中止してください。
<成分>
赤江瀑・寺山修司・辻井喬・山口洋子・吉原幸子・鈴木慶一・沢田研二・高橋幸宏・大村憲司・微美杏里
この微美杏里(ビビアン・リー)こそ藤真利子のことで詩を提供している。
バックにムーンライダースを従えて見事にニューウェイヴしています。
病みつきなりそうなメロディ、リズム、歌詞、そして僕好みのキバらない怪しい女優的な歌唱・・・
ああっ!くらくらしてしまいそう。
藤真利子さん、また歌ってください。 (2002.9.17)
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「アブラカダブラ」 (藤真利子) 1983年
女優の藤真利子(微美杏里)さんの3枚目のアルバムもバックにムーンライダースを従え、「MARIKOのミラクル・ラブコール"恋の呪文"」(帯のコピー)どおりの不思議な魅力に溢れています。
何度も言いますが僕はキバらない歌が好きなんで、藤真利子さんのような怪しい女優的な歌唱は本当にくらくらきてしまいます。
また彼女のそんな魅力は一流ミュージシャン好みでもあったのでしょう、前作以上の豪華作曲陣がこのアルバムを固めています。
細野晴臣、松尾一彦、鈴木慶一、坂本龍一、沢田研二、S.Gainsbourgeで、編曲はムーンライダースの白井良明。
ニューウェイヴしてた前作よりも聴き易いものに仕上がっています。
もちろん作詞は全曲微美杏里(藤真利子)です。 個人的にはこのアルバムで彼女の魅力にとりつかれたこともありとても懐かしいアルバムです。 実は細野晴臣狙いで買ったんですけどねっ。
その細野作曲のモノローグ風の「Prologue」「Epilogue」で始まって終わるコンセプト・アルバムです。
全曲すれ違った愛をアンニュイに歌っています。
坂本龍一の「SO
LONG」、松尾一彦の「ひとりぼっちにしないで」「紅茶の午後」などその最たるものでしょう。
同じく松尾の「セピアの恋人」はヴァイオリン、チェンバロにオーボエも入った愛らしいバックが余計に妖しさを際立たせるようです。
沢田研二の「モナリザ伝説」はGS風、「YAI YAI YAI」はこれにマンドリンも入ってますが明るさのなかに倦怠感を感じさせた掴みどころのない歌がまた魅力的。
でも一番は細野のB面トップ「天使と悪魔」でしょう。
オリエンタル調のハープの響きからアブラカダブラのコーラスで始まるのでこのアルバムのタイトル曲でしょう。
頭打ちのリズム・パターンが当時の細野嗜好な僕には嬉しいものです。
そしてこの曲、デュエット曲なんですがクレジットにはGO-GO
GIGOROと書かれいます。
これ覆面歌手でしょうか。
クセのない南佳孝みたいな甘い声なんですが、ここに藤真利子さんの透明感のある声が絡んで実に心地良い。
この曲、本当によく出来た作品ですよ。
まいりました。
藤真利子さん、また歌ってください。 (2003.7.13)
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「ガラスの植物園」 (藤真利子) 1984年
女優の藤真利子さんがテイチク・コンチネンタルレコードに吹き込んだ最後のアルバムでしょう。 この後の歌手活動は(申し訳ありませんが)知りません。
このアルバムは、フランス・ギャルやジェーン・バーキンなどのフレンチ・ポップスに、微美杏里(藤真利子)さんが全曲独自の歌詞をつけたものだそうです。 原曲については全く記憶がないので、個人的にはオリジナルアルバムという位置付け。 レコードの帯には「MARIKOさん。メいっぱいヨーロッパしてますね。」のコピーどおりのヨーロピアン調のポップアルバムです。 プロデュースとアレンジは松任谷正隆。 やはり誘惑的な魅力を秘めた作品集です。
A面「素敵なMIO」(B.BERGMAN-J.BEN)3年前に別れた恋人を思う歌だけど思索的なバラード。 素直にいい曲です。 「アブナイ彼」(S.GAINSBOURG)はテクノポック調、「SUZUKAのレースではじめて見かけたの」の歌詞が印象的。 これをやや平板に歌うところもまた魅惑的です。 そして曲が終わったあと、ハァハァ・・と無言電話の向こうから聞こえる息遣いが聴こえるスパイスも効かせます。 「BIG FAT MAMMA」(M.BERGER)、ブルース調に息を抜いた可愛らしい声で不思議な世界。 「戯れの6月」(V.SANSON)はしめっぽい歌。 歌の2番ではボソボソとフランス語(?)で誰か囁いてます。 「謎のボーイフレンド」(R.GALL-A.GORAGUER)は軽快なんだけど不可解な歌詞。 ミステリアスさ満点。
B面「ハロウィーン怪事件」(H.DIERKS-J.ALANSKI)は、ドラムから始まってベースがランニングする上に可愛い声で淡々と怪しく歌います。 これもいい曲です。 「約束は2000年」の歌詞、そう西暦2000年はちょっと異次元に思えた未来でした。 「ADDIOと言って」(ZACAR-DAMMICCO)、息を抜いたデュエット曲。 SEXY
VOICE:HIROSHI HAMADA
とクレジットされています。 「砂に捨てた恋」(F.HARDY-M.BERNHOLIC)、モノローグっぽく喋るように歌います。 そして「憂うつな午前5時」(S.GAINSBOURG)も「Di dou di dou da」と軽いスキャットの合間に誘惑的な妖しい声で歌います。 憂うつ、アンニュイで魅惑的とはこんな感じだろうなぁ。 藤真利子さんのような歌手、なかなかいないように思います。 とにかく参ってます。
(2004.11.27)
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