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「ポケットパーク」 (松原みき) 1980年
1980年、帯広からの帰省のときだったかしら、当時の愛車サニー号のカーラジオから聞こえてきた「真夜中のドア」に衝撃を受けました。
ちょうど松原みきさんもそのラジオに出ていて、大阪出身であることや母親が元ジャズシンガーだったことなどを知って以来のファンです。
当時は貧乏だったのでこのアルバムは買えなかったけど、社会人になってから捕獲し、カセットにダビングしたものを愛車フロンテ号のカーステレオの常連として聴き込みました。
新人のデビュー・アルバムとは思えないジャジーな歌いっぷリが見事です。
「真夜中のドア」「His
Woman」などのアップテンポの曲、「そうして私が」「That's
All」のようなスローバラード、「愛はエネルギー」「Manhattan
Wind」「Mind Game」のようなミディアムだけどちょっと面白いリズミックな曲も楽々と歌いこなして新人らしからぬ巧さが光ってます。
ちょっと粘るような歌いくちの松原みきらしさも全快。 「真夜中のドア」は永遠の名作なんですが、このアルバムには作品としてはちょっとどうかな・・・と思える曲もありますけど、新人歌手のデビュー・アルバムとしては非常に聴き応えのあるアルバムですね。
松原みきさんジャズシンガーとして活躍してくれないかなぁ。 (2003.9.28)
松原みき応援のホームページ
http://cupid-inn.web.infoseek.co.jp/
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「Who
are you ?」 (松原みき)
1980年
「あいつのブラウン・シューズ」をフューチャーしたセカンド・アルバム。
今では歌手を引退して作曲活動をやっているらしいが、ジャズフレーバーの効いた松原みきの歌唱は時代を超えて今でも魅力的。
大人になった今また歌って欲しい。 「あいつのブラウン・シューズ」は島エリナの詩とちょっと粘って巻き舌になる松原みきの歌唱がよく合っていて、また杉真理の作曲、鈴木茂のホンキートンク調の編曲も見事に決まった名曲である。
続くアップテンポな「気まぐれうさぎ -
Run Rabbit Run -」もいいが、やはり松原みきは速い伴奏に軽々と乗って伸び伸びと唄う「Rainy Day Woman」「Jazzy
Night」「Howa Howa Shuwa Shuwa -
宇宙ネコの舌ざわり -」などに特質がよく出ていると思う。
特に松本隆の作詩による「Rainy Day Woman」は詩のよさとみきの巧い歌唱、松任谷正隆の編曲も都会的で良い曲に仕上がっている。
ただ松原みきが作詩/作曲した2曲は発展途上か?
しかしラストの松原みき作詩による「Twinkle Twinkle
Starlight - 三日月形の犬をもとめて -」はスローな眠れぬ夜のバラードでアルバムを締めくくるのにぴったりである。
(2001.4.18)
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「Cupid」 (松原みき) 1981年
A面にはL.A.のフュージョン・グループ
Dr.ストラットがバックを務めたノリの良いサウンド。 B面にはスマッシュヒットの「ニートな午後3時」がフューチャーされたサード・アルバム。 このアルバム、「高層ビル、ガラスの向うから Cupid
が一度だけ矢を射つ・・・ Screen
に映るのは誰の顔?」のコピーがあちこちに書かれています。 まさしくその
Cupid
の矢が当たったのでしょう、歌手としての上り坂を感じさせるアルバムです。 そして、自作曲「DREAM IN THE SCREEN」では作家としての才能も垣間見せてくれています。
A面は Dr.ストラットの演奏に乗せられてノリの良い歌唱が何より魅力的。 楽曲の良さもあるのでしょうけど、歌そのものの巧さを強く感じます。 アップテンポな「10カラット・ラブ」(作曲:亀井登志夫)、「ONE WAY STREET」(作曲:小田裕一郎)「青いボールペン」(作曲:佐藤健)とバックと競うようにぐいぐいと進める歌唱も見事なら、「私はもどれない」(作曲:佐藤健)でのスローバラードでは彼女本来のウェットな歌唱がもっと素晴らしい。 最後はリズミックな「オアシス」(作曲:小田裕一郎)がカッコ良い。 ただ、演奏主体で聴いてしまうこともあるのですけど、歌詞(全作詞:三浦徳子)は後付けのような感じで詩の深さはそんなに感じません。
それに比して、B面は曲と歌の融合というと大げさかもしれませんけど「CUPID」(作曲:伊藤銀二)、スマッシュヒットの「ニートな午後3時」(作曲:小田裕一郎)、「スーヴェニール」(作曲:佐野元春)、「ONE SUMMER NIGHT」(作曲:小田裕一郎)、「DREAM IN THE SCREEN」(作曲:松原みき)と、いずれも同じく三浦徳子さんの歌詞(「DREAM IN THE SCREEN」のみ松原みきと共作)ですけど、ぐっと迫るものを感じます。 また、松原みきさんもそんな歌詞をよくくみとって見事に歌い込んでいるみたいで、詩も息づいているように感じます。 これも歌の巧さでしょう。 ただ、歌詞にこだわるとどこか歌謡曲っぽさも感じてしまうように思えるのですけれど・・・ね。 とにかく歌の巧さは絶品。 なお編曲は両面通じて大村雅朗が担当しています。(2004.12.20)
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「Myself」 (松原みき) 1982年
L.A.のフュージョン・グループ
Dr.ストラットが編曲・演奏した4枚目のアルバム。
ノリの良い演奏を従えて松原みきの声も明るく響いています。 気持ちが上向いてくるようなアルバムですね。
一番のお気に入りは「微熱が平熱」(竜真知子:作詩,岡本一生:作曲)。 イキのいいイントロから「少し髪を切り過ぎて・・」のちょっと低い声の歌い出しからもう軽くスィングしてますね。
「あなたといれば微熱が平熱」そんな気分久しく味わってませんけど、この歌声を聴くと身体のヴォルテージもちょっと上昇します。
「三人で踊らない」(小林和子:作詩,岡本一生:作曲)もいい歌です。
スローで伸びやかな声で「馬鹿なやつだと
笑われたいの」の歌いまわしに巧さが光ってますよ。 ハイハットの響きで始まる「流星スィング」(小林和子:作詩,Dr.ストラット:作曲)はベースギターが終始リードしたジャジーなナンバー。 柔軟なヴォーカルはもうジャズ・ヴォーカルですね。
「SEE-SAW
LOVE」(小泉長一郎:作詩,佐藤健:作曲)はシングル・カットされた歌ですが、こちらもジャジーなナンバー。
「YES 愛し合う気持ちは」の「YES」の部分、英語訛りもそれっぽくて素適です。
松原みきが作曲した曲が3曲入ってますが、「5つ数える間に」(小泉長一郎:作詩)、「ハレーション」(下田逸郎:作詩)と続いてタイトル曲「Myself」は1分ちょっとのインストゥルメンタル曲。
このあと「Three
Candles」(康珍化:作詩,佐藤健:作曲)と、いずれもソローorミディアムテンポの曲で伸び伸びと歌ってます。
(2004.3.21)
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「彩」 (松原みき) 1982年
「Myself」に続いて12月にリリースされた「彩」、ちょっと煮詰まってきたかな、というと熱狂的なファンの方には叱られるでしょうか。 たしかにどの曲も伸び伸びと歌っている松原みきさんの良さは感じますけど、個人的には好き嫌いがはっきりしてしまうアルバムです。
A面1曲目「Change」(大津あきら:作曲/亀井登志夫:作詞/梅垣達志:編曲)、4:34
の長い失恋の歌ですけど、ほの明るい声でしっとり歌って素敵です。 編曲の良さも光っているのではないでしょうか。
でも、このアルバムで一番のお気に入りは何なってB面1曲目の「10cmヒール」(松原みき:作詞/作曲/編曲)。 編曲まで手がけたみきさんのこの曲、ファンキーな曲の作りも見事です。 また「いつも私のお願いは/かかとの分だけ
届かない」の歌詞もイイ、もちろんちょっと粘って歌う魅力も溢れてますね。 これはホントいい歌です。
で、このアルバムを聴くときには、この2曲のどちらかを聴いたあとに続くのが「サラダ★SALADA」(西尾尚子:作詞/松原みき:作曲/後藤次利)です。 ファンキーな自作曲ということもあるのでしょう、これまた伸び伸びと歌ってます。 それに歌詞も面白い。
とにかくこのアルバム、B面最後の「ミセス」(竜真知子:作詞/松原みき:作曲/編曲)も含め自作曲が光っているアルバムです。 それだけ彼女の魅力を引き出す作品が乏しかったのかもしれないのかな、なんていう印象を持ってしまうアルバムです。(2005.2.16)
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「レビュー」 (松原みき) 1983年
前作ではちょっと煮詰まってきたかなって感じがしたけれど、このアルバムはどの曲もタイトでファンキー。 そんな音楽に軽々とノッて歌い、時々抜いた声で泳ぐように楽しそうな感じもするのは、バック・ミュージシャンに大御所的な人が居なくなったから、というのは考えすぎかしら。 なかなか魅力あるアルバムではないでしょうか。
A面「ムーンナイトレビュー」、タイトな音楽にノッて余裕で歌う声を聴くと気持ちが明るくなって、もう虜ですね。 続く「雨のちハレルヤ」も魅力的。 抜いた声で「ハロー」と一緒に歌ってしまいます。 そして「Sweet サレンダー」のアップテンポ、完全に舞い上がってしまいます。 でもね、松原みきさんは常に余裕で軽やかに歌ってます。 巧いなぁ。 そんな高揚した気分はファンキーな「シャンデリア・ミラージュ」で落ち着かせられ「遅れて来た九月」のスローバラードがA面を締めくくります。 この歌ちょっとバタ臭い感じがしますけど、これは売野雅勇の作詞だからかしら。
B面「彼女のいちばん素敵な夜」はちょっと不思議なイントロが終わるとベースラインを強調したファンキーな歌。 松原みきさんの作編曲が光ってます。 「アラモード」は作詞作曲編曲松原みきさん(Inspired
from "BALIHAI"と書かれてます)、ちょっと難解だけど流石伸びやかにこなしてますね。 「スターダスト
レイン」もベースラインにのってファンキーに歌って「BLUE EYES」に繋がるみたいな感じ。 「風のフォトグラフ」は軽やかなコーラスを従えて清涼感ありますね。 でも前曲とも作詞が売野雅勇でしょ、中味が薄いっていうと失礼かもしれませんけど、まぁそう思ってしまうのが残念なところかも。 B面最後の歌は松原みきさんの作詞によるスローバラード「もう一度 Fall in
Love」。 これもちょっとはにかんでしまいそうな感じもする詞ですけど、ハイトーンの声で被ってくるクリスタル・キングの田中雅之さんの声と合わせて軽やかに全体を締めます。 詞の面ではまだちょっと彼女の魅力を引き出しきれてないと思いますが、曲と歌はなかなか魅力あるアルバムではないかな。 特にA面は一気に聴けますしね。(2005.2.19)
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「Cool Cut」 (松原みき) 1984年
森園勝敏をプロデューサに迎えた松原みきの7枚目のアルバム。
森園勝敏が率いる小気味の良いバンドをバックにみきの粘りのあるヴォーカルが冴える。
A面1曲目の「真夏のゲーム」は梅本洋一の作詩、松浦和義の作・編曲だが、これ以外はすべて梅本洋一の作詩、森園勝敏の作・編曲である。
松原みきのデビューは鮮烈だっただけに後半やや煮詰まったような感じもあるが、このアルバムはそんななかにあって全曲よく纏まっている。
ポップでノリの良い「真夏のゲーム」「knock,Knock,My
Heart」「Caribbean Night」もいいが、スタジオライブ風の「Cry for Me」や「Riverside
Tango」は次作「BLUE EYES」を予感させるジャズフレーバの効いたバラードで魅力的。
そして軽くうねるような「ウィークエンドは軽い病気」、「チャイナタウンの殺人鬼」での伸びのいいヴォーカルに、そしてラストの「French Cinema」での甘いヴォーカルで酔わせられる。
全編森園勝敏のバンドサウンドと松原みきの巧いヴォーカルが堪能できるアルバムとなっている。
(2001.4.30)
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「BLUE
EYES」 (松原みき) 1984年
先日の突然の訃報に驚いた。 しかも2ヶ月も前の10月7日、子宮けい癌で3年半におよぶ闘病のはて44歳の生涯を閉じられた。 最近、活動が伝えられてこなかったけれど、いつかまた歌ってくれることを待ち望んでいただけに、素晴らしい才能が消えてしまったことに無念の想いを禁じえない。 謹んでここに追悼の意をこめて「BLUE
EYES」を聴きたい。
シュリンクラップされたジャケットには「最近FENで聴く懐かしいメロディーが気になる・・」とのコピーがあるとおり、洋楽ポップスのいわば懐メロを英語で歌っている。 これはまぎれもなくジャズ・ヴォーカルのアルバムだ。 「77年に上京しジャズ・パブに飛び入りで出演、ピアニストの故世良譲さんに絶賛された(スポニチアネックス芸能記事:2004/12/4)」と書かれていたことを彷彿とさせる。 A面に「Love for sale」「Misty」「You'd
be so nice to come home to」「Wave」、B面には「Love letters」「Cheek
to cheek」「You've got a friend」「Tea
for two」「When you wish upon a
star」 いずれもコメントをつけるのに窮してしまう。 ハスキーでちょっと甘くウェットな感じのさせる声質がジャスにとてもあっているし、表情をのせた節まわしの巧さも絶品。 長く休んでしまっているようだけど、絶対にこのような路線で戻ってくると思っていたのだけれど・・・ それも叶わぬことになってしまった。 早逝した才能を惜しみながら、天国で世良さんと楽しくセッションされているのではないかと思いたい。 とにかく、素晴らしい歌声をありがとう。 (2004.12.18)
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「レディ・バウンズ」 (松原みき) 1985年
ここで採り上げる最後のアルバム。 向谷実がサウンドプロデュース、彼のシンセが効果的に使われてます。 帯には「エレガントなメロディ、うきうきするサウンドに、今みきが華麗に躍動する。」とのコピーがあるように軽やなフュージョン・サウンド。 初期からのファンとしては、もうちょっとファンキーに、とか、パンチが欲しい気がしないでもありませんけどね、相変わらず歌の巧さは抜群です。
さて、いきなりB面「恋するセゾン〜色恋来い〜」。 「好きよ 深い意味はないの」印象的な歌い出しですね。 Key,g,b,dr
の4人編成で軽やかに康珍化:作詞の歌を唄っててちょっとお気に入り。 彼女の作詞ではもう1曲、A面3曲目「恋にお招ばれ」。 こちらはブラスも加えた編成の軽いフュージョン。 このアルバム、この2つの編成で構成されていますけど、どちらにしても余計な力を入れない唄いまわし。 耳馴染みのいい歌が続きます。 ブラスセクション付きは、A面最後の「Bon Voyage」B面3曲目「サングラスはもういらない」。 4人編成はあとA面の「12月のパリ」「魔法じゃないの」「モダンに殺気」、B面「逃避行」「終わりゆく夏」「恋はふたたび旅立つ」。 印象に残るのは・・・う〜んん・・・それぞれに巧さを感じますけど、こうやって最後のアルバムを耳にしていると、松原みきさんって器用貧乏なところがあったのかな、なんて思わずにいられません。
そしてもう戻って来ないところに行ってしまった・・・残念でなりません。
(2005.3.12)
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